昨季優勝の慶大は28日、東京六大学野球春季リーグの法大2回戦に5-4で競り勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ。薄氷を踏む…

 昨季優勝の慶大は28日、東京六大学野球春季リーグの法大2回戦に5-4で競り勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ。薄氷を踏むような接戦にも、ナインの間に笑顔が途絶えることはなかった。

 1点リードで迎えた9回の守り。4番手の小暮瞬哉投手(4年)が先頭打者に死球を与えると、堀井哲也監督は苦渋の表情を浮かべながら、投手交代を球審に告げた。マウンドに上がったのは、エースの外丸東眞投手(3年)。前日27日の1回戦に先発するも、6回途中89球3失点で降板し、チームは敗れていた。

 延長12回まで想定しなければならない展開だけに、外丸の連投は避けたいところだったが、堀井監督は「今日勝たないと、明日はないですから。しかもランナーの出し方が死球という形だったので、これはもう外丸しかいないと思いました」と決断した。

 外丸は「展開によって(登板が)あるかもしれないと想定し、試合前から準備していました」と涼しい顔だった。1死後に四球を与え、一打同点のピンチに追い込まれたが、相手の4番・武川廉内野手(4年)を真ん中低めのストレートで押し込み、遊ゴロ併殺に仕留めて試合を終わらせた。

1勝1敗として3回戦に繋げた慶大ナイン【写真:加治屋友輝】

「抑えよう、抑えようと思うと、力が入って逆にいいボールが行かないので、打たせようというくらいの気持ちで投げました」という達観した心境が、辛くも勝利を引き寄せた。

 昨季6勝0敗、防御率1.54をマークし、ベストナインにも初選出された外丸への信頼は絶大だ。こうなれば、勝ち点がかかる3回戦の先発も間違いないところ。堀井監督は「もう私が何も言わなくても、本人がスタメンに名前を書くと思います」と苦笑まじりにうなずいた。

 試合の中盤から終盤にかけては、代打策が的中していた。1-2とリードされて迎えた5回、先頭打者の代打に二宮慎太朗内野手(3年)を起用すると、プロ注目の法大先発左腕・吉鶴翔瑛投手(4年)から左翼席へ同点ソロ。二宮はリーグ戦初安打が起死回生の1発となった。

リーグ戦初安打が本塁打となった慶大・二宮【写真:加治屋友輝】

■1年生丸田が初先発、同学年の林は代打で殊勲の2点二塁打

 一方、昨夏の甲子園大会で慶応(神奈川)を107年ぶりの全国制覇に導いた主力の丸田湊斗外野手(1年)を「1番・中堅」でリーグ戦初先発させていたが、3打数無安打1四球に終わると、8回2死満塁の好機では、左打者の丸田の代打に、同じ1年生で右打者の林純司内野手を起用した。林は左翼線2点二塁打を放ち、期待に応えた。

 堀井監督は「丸田も林も1年生ですが、状態が本当にいい。競争の中で全体のバランス、調子を見ながら起用しています」と説明。いい意味で学年の上下をあまり感じさせないチームの雰囲気が、1年生の活躍を後押ししているように見える。

1番センターでスタメン出場した慶大・丸田【写真:加冶屋友輝】

 実際のところ、慶大のベンチのムードは常に明るい。5-2とリードして迎えた8回の守り。1死一、三塁のピンチで、三塁手の主将・本間颯太朗内野手(4年)がゴロをファンブルするエラー。するとベンチに、笑顔の絵文字が大きく描かれた段ボール製のボードが掲げられた。

 もともとは昨年春の早慶戦で、ベンチからの声が大歓声に紛れグラウンド上の選手たちに届きにくいため、守備位置を示す1〜9の数字を描いたボードを作り、身振り手振りをまじえて指示を送ることした。同年秋には、冗談半分で笑顔の絵文字のボードを加えたところ、ピンチでナインを和ませ、落ち着かせる必須アイテムになった。この回、味方投手の暴投なども絡んで2点を奪われ、1点差に詰め寄られたが、ナインが下を向くことはなかった。

 副主将で5打数2安打2打点と活躍した水鳥遥貴内野手(4年)は「いい意味で、ヒリヒリはしていませんでしたし、ピンチとも感じていませんでした。ベストメンバーで一生懸命やって、それでも負けたらしょうがないというくらい、チームメートを信頼しないと勝てないと考えています」と証言した。

「王者・慶応さんは、しぶとい」とうなったのは、相手の法大・大島公一監督。勝ち点を落としそうな窮地から笑顔で蘇生してみせた慶大は、まだまだ余力を感じさせる。

(Full-Count 宮脇広久)