JFA公認S級ライセンス取得を目指している中村俊輔。彼が講習会の場で監督役として指導実践を行うのは今回が初めてではない…

 JFA公認S級ライセンス取得を目指している中村俊輔。彼が講習会の場で監督役として指導実践を行うのは今回が初めてではないという。

「(これまで取りに行っていた)A級でもやっているし、S級に入ってからも第1週目にやったからね」と本人は話していたが、自分なりのやり方でアプローチしながら、課題が見つかったら、それを修正し、新たなエッセンスを組み込む作業を続けている。そういった取り組みはある意味、選手時代と全く同じと言ってもいいかもしれない。

「今回は『浦和に対する高い位置からの守備』ってことだったけど、ここは学びの場だから、自分の原則でトライすればいい。

 例えば、前からマンツーマンでガンガン行くのも1つの考え。それで挑戦して、うまく行かなかったとしても全く問題ない。『試合2日前にボロボロと課題が出てきてよかった』という見方もできるからね。

 逆にうまくハマったとしたら、実際の試合で瞬時にそれをやれるかどうかが大事。講習会はそういう『気づきの場』なんだと思いますね」と本人は言う。今はとにかく試行錯誤を繰り返しながら、自分なりの最適解を見出そうとしているのだろう。

■「監督目線でパッと先を読んだアクションが起こせない」

 選手時代はピッチ上でゴールに直結するプレーを瞬時に見せることができた中村俊輔。とはいえ、指揮官としてチーム全体を動かすことは別物。やはりハードルが高いようだ。

「準備と予測というのは選手時代と似てるけど、自分に指導者としての引き出しがないから、なかなか修正しきれない。横浜FCの試合中にも、ヨモさん(四方田修平監督)から『俊輔、どう思う?』って答えを要求された時にパッと出てこないからね(苦笑)。

 もちろん選手としての経験はあるから、選手側の気持ちとか練習の内容・雰囲気とかは分かるけど、監督目線でパッと先を読んだアクションが起こせない。指導者を初めてまだ1年ちょっとだから仕方ないけど、今は引き出しを作りながら、選手の経験をマッチさせる作業をしていきたい。そう思いながら、S級で勉強してますよ」

 世界でも名を馳せたハイレベルな選手経験を踏まえつつ、それを指導に生かし、最適解を見出すことができれば理想的。とはいえ、それを具現化することの難しさを多くの元選手が痛感している。

■自分なりのトライ&エラーを繰り返し

 中村俊輔と同じ時代に日の丸を背負ったSC相模原の戸田和幸監督も「選手は自分のことだけ考えていればいいけど、監督は全体を見なくちゃいけない。そこが簡単じゃない」としみじみと語っていた。それでも誰かが正解を与えてくれるわけではない。自分なりにトライ&エラーを繰り返し、瞬時にベストなシステムや選手起用、対戦相手攻略法を見出せるように経験を積み重ねていくしかないのだ。

 それがある程度、見えてきた時、中村俊輔もプロフェッショナルの舞台で指揮官として活躍できるようになるはず。今はまだまだ一歩を踏み出したばかりだが、とにかく彼は「学びたい」という強い意欲がある。サッカーへの探求心や向上心、積極性は本当に突出している。そこが最大のストロングと言えるのではないか。

 座学から指導実践までタイトなスケジュールのS級講習会・モジュール1は今週で一区切りとなるが、この1年間で中村俊輔はどのような変化を遂げていくのか。阿部勇樹、永井雄一郎ら仲間たちと前向きな意見交換を行い、切磋琢磨しながら、オリジナルの指導者像の確立を目指してほしいものである。

(取材・文/元川悦子)

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