法大は21日、東京六大学野球春季リーグの立大2回戦に2-1で競り勝ち、1勝1敗とした。かつてプロの近鉄、オリックスで活…
法大は21日、東京六大学野球春季リーグの立大2回戦に2-1で競り勝ち、1勝1敗とした。かつてプロの近鉄、オリックスで活躍した就任1年目の大島公一監督が2戦目で初勝利を挙げた。
「自分の気持ちがよくわからないです。うれしいのでしょうけれど……」。試合後の会見でウイニングボールを手にした感想を聞かれた大島監督は、どんな顔をして喜んだらいいのかわからない、とでも言いたげに苦笑いを浮かべた。2021年から助監督を3年間務め、満を持して昇格したが、指揮官としての白星は初めてとあって、なんとも初々しい。
松下歩叶内野手(3年)の1番起用が的中した。今季の法大は、右の篠木健太郎投手(4年)と左の吉鶴翔瑛投手(4年)というプロ注目の2枚看板を擁するが、対照的に攻撃力が課題。篠木を先発に立てた20日の立大1回戦では、0-1の零封負けを喫していた。
そこで吉鶴が先発したこの日、これまで主に5、6番を打ってきた松下をリーグ戦で初めて1番に抜擢した。「マッチ(松下)には積極性がある。最初から勝負してくれる人を1番に置きたかった」と説明する。

「とにかく1打席目の初球を打ち、それがヒットでも凡打でも、チームに勢いをつけたいと思っていました」と応じた松下は、初回先頭で初球を打ち三塁強襲安打。
そして1-1の同点で迎えた7回には、2死二塁で立大3番手・沖政宗投手(4年)に対し、カウント1-0からファーストストライクをとらえた。三遊間を破る左前適時打として勝利を引き寄せた。松下は「どんな形でも点を取りたかった。いい当たりではなかったですが、抜けてくれてよかったです」とうなずいた。
野手陣でもう1人、勝利の立役者となったのが、8番に置いた鈴木大照外野手(4年)だ。1点ビハインドの5回、先頭で左打席に立ち右中間を破る三塁打。続く9番・吉鶴の左前適時打で同点のホームを踏んだ。そして7回の勝ち越しの場面でも、1死から死球で出塁し、送りバントで二進後、松下の左前打で三塁を蹴った。微妙なタイミングだったが、ヘッドスライディングで決勝のホームをもぎ取った。

鈴木は大学入学後、当時助監督だった大島監督の指導で、右打ちから両打ちに転向した。「器用ですし、センスもいい。(両打ちが)少しずつものになってきている。まだまだ伸びると思います」と目を細める大島監督自身もかつて、法大2年の冬に右打ちから両打ちになり、プロでの活躍へと続く野球人生の岐路となった経緯がある。
守っては1点リードの7回、吉鶴が2死一、三塁のピンチを招くと、前日に遅咲きのリーグ戦デビューを飾ったばかりの左腕・安達壮汰投手(4年)にスイッチした。安達は死球を与えて2死満塁と追い込まれるも、続く田中祥都内野手(4年)を空振り三振に仕留めて脱出。8、9回も虎の子の1点を守り切った。
大島監督は「吉鶴を続投させても、抑えてくれたとは思います。しかし、まだ先がありますし、球数(104球)も踏まえて代えました。吉鶴に負けをつけさせたくないという気持ちがありました」と明かす。
さらに大島監督は、前日に7回102球1失点の奮闘実らず敗れた篠木を、ベンチから外しスタンドでの応援に回していた。篠木が2回に打球を左膝に受けて治療を施していた事情もあるが、「(ベンチに)入れちゃうと、使いたくなってしまうので」。改めて「足の状態を確認した上で」、勝ち点がかかる3回戦を篠木に託す考えだ。目先の1勝にこだわり過ぎることなく、冷静に状況を読んでいる。
プロ現役時代には二塁手としてベストナインに2回、ゴールデン・グラブ賞に3回輝いた大島監督。オリックス時代の1996年には、1番のイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)の後の2番打者として、いぶし銀の働きでチームを日本一に導いている。
今年は母校に2020年春以来8季ぶりの優勝をもたらすべく、あくまで選手たちを立てながら、したたかにタクトを振る。
(Full-Count 宮脇広久)