この季節を彩るレースの一つに高知競馬で行われる黒船賞がある。数々の熱戦を繰り広げてきた一戦だが、ちょうど20年前の黒船賞当日、最終レースで「負けられない戦い」があった。連敗記録で話題となっていたハルウララにJRAの武豊騎手が騎乗。その模…

 この季節を彩るレースの一つに高知競馬で行われる黒船賞がある。数々の熱戦を繰り広げてきた一戦だが、ちょうど20年前の黒船賞当日、最終レースで「負けられない戦い」があった。連敗記録で話題となっていたハルウララにJRAの武豊騎手が騎乗。その模様は地上波テレビで生中継されるなど、世界を知るエースとの“夢のタッグ”は大きな話題になった。

 ブームのきっかけを作ったのは、当地で場内実況を務めるアナウンサーだった。売上減に苦しんでいた高知競馬が少しでも盛り上がればと、100連敗が近づいていたハルウララのことを発信。地元紙での記事掲載を皮切りに、徐々に県外メディアで取り上げられることも増え、いつしかその存在は全国へと知れ渡っていった。

 ハルウララはその間も走り続けたが、連敗は100を超え、年が明けた04年もそれは続いた。武豊騎手とのタッグが決まったのは、そんな折のこと。黒船賞のため高知に来るタイミングで、騎乗することになったのだ。

 04年3月22日、レース当日は朝からあいにくの空模様ながら、競馬場には1万人をはるかに超えるファンが集結した。関連グッズはとぶように売れ、専用馬券窓口には長蛇の列。今度こそ、初勝利を。圧倒的1番人気を集めたハルウララに、全国から熱い視線が注がれた。

 16時35分、ついにゲートが開く。枠内で落ちつかない様子だったハルウララは1、2馬身ほど出負け。武豊騎手が押して位置を取りにいったが、中団後ろ寄りの追走となった。道中も鞍上が必死にうながすが8、9番手あたりを付いていくので精一杯。4コーナーを前にして先行集団からは離され、結果は11頭立ての10着という結果に終わった。

 後方でゴールを通過すると、場内から寂し気な吐息。だが、武豊騎手が場内を一周し再びスタンドの前を通ると、ファンからは歓声があがった。全国が注目した夢のレース。通算106戦目での勝利とはならなかったが、高知は盛り上がった。

 ハルウララの連敗記録は113まで伸び、同年8月のレースが現役ラストとなった。その後も紆余曲折はあったが、現在は千葉県の牧場で余生を過ごしている。彼女も今年で28歳。高齢の域とはなってきたが、これからも元気に過ごしてほしいものだ。