毎シーズン自身の成績に応じて公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンに寄付し、子どもたちの学校外教育支援を行っている東北楽天ゴールデンイーグルスの則本昂大選手。2019年から始めた活動は今年で6年目を迎え、これまで5年間の寄付総額は677万…

毎シーズン自身の成績に応じて公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンに寄付し、子どもたちの学校外教育支援を行っている東北楽天ゴールデンイーグルスの則本昂大選手。2019年から始めた活動は今年で6年目を迎え、これまで5年間の寄付総額は677万円となった。今回のインタビューでは、支援を積み重ねてきたことで自身に芽生えた変化や、社会におけるプロ野球の存在意義について話を伺った。

――2019年から支援活動を継続してきて、ご自身の中で変化は感じますか。

則本大きく価値観が変わるようなことはないですけど、物の見方は多少変わったかもしれないですね。たとえば、(太田)光が倉敷で母校の子どもたちを招待したり、黒川(史陽)が小児がんの子どもたちにニット帽を寄贈したりするのを知って、「あ、彼らはこういう活動をしているんだな。すごいな」って。そういうところに自然と目が行くようになったんです。去年チャリティートークショーに(藤井)聖を連れていったんですけど、若い選手たちにもチャリティーのことを伝えたい、知ってほしいという思いも湧いてきました。

――昨年は支援先のチャンス・フォー・チルドレンを通じて、同団体の支援対象のご家族10組20名を球場に招待しました。実際に支援対象者との対面を果たして、どんなことを感じましたか。

則本支援を始めてからすぐコロナ禍になってしまって、昨シーズンようやく実現できたのでまだ1回だけなんですけど、実際に会ってみて今後も継続的に招待していきたいと強く思いましたね。ご家族の方たちが普段あまり体験できないような機会をぜひ提供したいな、と。今シーズンからクローザーになって試合で見てもらえる機会も以前より多くなるので、ぜひ投げているところを見てもらいたいです。

――昨年、藤井選手とともに出演されたBLFチャリティーGALAでは、参加したファンの方から「則本選手がきっかけで社会貢献に興味を持つようになった」という声もありました。

則本そう言ってもらえることは嬉しいですよね。この活動を続けてきてよかったなと改めて思います。支援している対象の方々が喜んでくれることが第一ですけど、やっぱり僕だけじゃ限界があるし、賛同してくれる人が増えるのはとても心強いです。実際に寄付できるかどうかはそれぞれ事情もあると思うので、関心を持ってくれるだけでもいいんですよ。その人がまわりの人に知らせてくれれば、そのうち大きな力になって「一緒に支援しようよ」ってなるかもしれないですから。支援活動では、そういう広がりこそが大事だと思います。

昨年12月に登壇した「BLFチャリティーGALA 2023」のトークコーナーで社会貢献に対する思いを語った。「自分も何か行動を起こそうと思った」というファンからの声も。

――チャンス・フォー・チルドレンのホームページには、「世帯年収の多寡で学力テストの正答率に約20%の開きが生じた」とあります。経済力によって「教育格差」が生まれてしまうというデータが実際に出ていますね。

則本学校では基本的に全員が同じ授業を受けて、同じ宿題をして、同じテストを受けるわけですよね。だから、「自分の弱点を克服して平均値まで上げる」「自分の得意なものをもっと伸ばす」という部分については、学校でカバーするのはなかなか難しくて、学校以外のところでやらないといけない。でも、家ではなかなかできません。そう考えると、学校外教育というのは子どもの可能性を広げるために、とても重要だと思います。特に音楽やスポーツの分野ではその需要が高いんじゃないかなと。

――則本選手はチャンス・フォー・チルドレンの取り組みのどんなところに賛同したのですか。

則本子どもたちがやりたいことにチャレンジできる機会を、使い道が明確なクーポンの配布という形で提供できるところです。僕はたまたま野球が好きで、野球にチャレンジできて、プロ野球選手になった。ただ、みんながみんな野球がしたいってわけじゃないだろうし、人それぞれチャレンジしたいことは違う。自分のやりたいことにチャレンジできる権利は平等にあったほうがいい。それを実現できるところに共感を覚えました。

――今年からはクローザーに転向し支援方法も変わりますが、改めて意気込みを聞かせてください。

則本これまでは先発として1イニングにつき1万円を積み立てて寄付してきましたが、ここ数年、自分がイメージしていた通りにイニングを重ねることができなくて、実は寄付額に物足りなさを感じていたんです。設定金額を変えようかなと思っていたところにクローザー転向の話があったので、ここはもう一気に自分がトップに躍り出てやろう、なおかつ寄付額も増やしてやろう、と。自分としては、寄付額が倍増するイメージで1登板ごとに5万円と設定しました。シーズン中はあまり気にしないですけど、オフになって数字を見た時に達成感が湧いて「よし、来年も頑張ろう」ってスイッチが入るので、自分にとっても大きなモチベーションになっています。

――今年は元日に能登半島地震がありました。改めて、プロ野球やプロ野球選手にできることは何だと考えますか。

則本プロ野球では数年前に「選手会ファンド」(日本プロ野球選手会災害支援基金)ができて、平時から寄付を集めて防災や震災時の緊急支援などに役立てることができるようになりました。すごくいい取り組みですし、実際に能登半島地震でも緊急支援できたことは大きな成果だったと感じています。影響力の大きいプロ野球が先頭にたってやることが大事だと思いつつも、やはり野球の力だけではすべてをカバーすることは到底できないですよね。選手会ファンドのような取り組みをいろんな団体に派生していけば、もっと大きな力を生み出せるんじゃないかなと思っています。

(取材・文/岡田真理)