レアル・ソシエダの久保建英はラ・リーガ第29節カディス戦で先発復帰したものの、フィジカル面に問題を抱えたまま今季も残りわ…

レアル・ソシエダの久保建英はラ・リーガ第29節カディス戦で先発復帰したものの、フィジカル面に問題を抱えたまま今季も残りわずかとなるラ・リーガ最後の戦いに臨んでいる。今回はクラブの地元紙『エル・ディアリオ・バスコ』で、レアル・ソシエダの番記者を務めるイケル・カスターニョ・カベージョ氏に、久保の苦しい現状を指摘してもらった。

【調子を落としているのは誰が見ても明らか】

 日本代表の一員として参加したアジアカップから戻ってきてからというもの、久保建英は期待されているようなパフォーマンスを発揮できておらず、チームにもその影響が出ているのを感じ取れる。



久保建英は期待されているようなパフォーマンスを発揮できていないとスペイン人記者は指摘する photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 久保が精彩を欠けば、たとえここ2試合は勝ち星を挙げられているとしても、ラ・レアル(※レアル・ソシエダの愛称)にとって勝利することはより困難となるのだ。

 大事なシーズン中盤の折り返し時点にチームを1カ月間離れたことで、上昇傾向にあったラ・レアルでの歩みは明らかにストップした。サン・セバスティアンに戻ってきてから久保が調子を落としているのは、誰が見ても明らかだ。

 リーグ戦、国王杯、チャンピオンズリーグ(CL)、加えて代表戦と、過密日程による疲労が蓄積され、体への負担がピークに達し、ここ何試合か欠場せざるを得ない状況が生まれている。

 今季最も重要視していたCLラウンド16第2戦パリ・サンジェルマン戦(1-2)で敗退した後、ハムストリングと背中に違和感を覚え、4日後のラ・リーガ第28節グラナダ戦(3-2)は出番なし。その影響は翌節のカディス戦(2-0)にまで及ぶこととなった。

 チーム練習にわずか2日しか参加できなかったため、カディス戦はベンチスタートという選択肢もあっただろう。にもかかわらず先発起用されたため、当然本調子ではない。彼にとってこの日、先制点のシーンでミケル・オヤルサバルを見つけ、素早くCKをニアポストに入れたのが最もポジティブなプレーとなったが、全体的に適切な判断を下せず、相手DFを突破することもできなかった。

 しかしこれは今に始まったことではない。ここのところずっとコンディションは万全ではなく、同じことが繰り返され、自信を失っているようだ。そんな状態にあるにもかかわらず、今月下旬のワールドカップ予選・北朝鮮戦のメンバーに招集されている......。

【開幕時の目標は得点+アシストで20ゴール】

 久保は開幕時、「得点とアシストで合計20」という目標を掲げていた。しかし、ラ・リーガ閉幕まで残り9試合に迫るなか、現時点の成績が7得点3アシスト(※すべてラ・リーガで記録)ということを踏まえると、目標達成はほど遠いものに感じられる。

 それは数字が大きく物語っている。なぜなら7ゴールのうち5ゴールは昨年8月から9月にかけて、1ゴールは12月に決めたもの。アジアカップ後は2月の古巣マジョルカ戦での1ゴールのみ。さらにアシストも前半戦に記録しただけだ。

 しかし、久保がダメージを受けているのはフィジカル面だけではない。国王杯準決勝第2戦のマジョルカ戦前、「代表でタイトルを獲れなかったから、国王杯で優勝したい」と意気込みを語っていたが、PK戦の末の敗退はチームやサポーター同様、彼にとっても予想外の出来事となり、メンタル面でも大きな痛手を負っている。

 彼のパフォーマンス低下の理由は、連戦による肉体的な疲労に加え、短期間でアジアカップ、CL、国王杯に敗退したことによる精神的な疲労が重なったためと説明できる。

 久保が目標に掲げた数字に近づくためには、何よりもシーズン序盤にアタッキングサードでキープレーヤーとなっていた時の自信を取り戻さなければならない。私たちはいつもサッカーにおける心の状態の重要性について話しているが、久保はまさにそれを回復させる必要があるのだ。

 そのためには筋肉面の問題を克服し、来る重要な試合に100%の状態で臨まなければならない。また特に最近、相手DFにドリブルをよく研究されているので、その状況を打開するために、新たな武器を身につけなければならないだろう。

 しかし彼には今までゴールを決めてきた実績がある。残り9試合でその大台に到達するのは容易なことではないが、一度ゴールが生まれれば、その次も自ずと入るようになるはずだ。

【ラ・レアルの目標は欧州カップ戦出場】

 2大会から敗退し、ラ・リーガに専念しているラ・レアルが次に掲げる目標は、イマノル・アルグアシル監督が言うように「再び欧州カップ戦に参加する」ことにほかならない。

 とは言え、永遠のライバルであるアスレティック・ビルバオの快進撃により、CLへの再挑戦は手の届かないところにあると思われる。そのため主な目標はヨーロッパリーグの出場権を獲得すること。もしそれができないなら、カンファレンスリーグに出場することだ。

 欧州カップ戦に出られるかどうか――。クラブの予算に大きな影響を与える出場権の有無は、来シーズンのメンバーの顔ぶれに大きく影響を及ぼすことにもなる。

 今月下旬のインターナショナルブレイクはチームのエネルギーを回復させる重要な役割を持つはずだが、12人が代表チームに招集されているレアル・ソシエダにとってはそうはならないかもしれない。

 それでも低迷が続いていたチームにとって、グラナダ戦とカディス戦の勝利は、大きな自信を持って残りのシーズンに臨むためのターニングポイントになるだろう。

 また久保にとってカディス戦はラ・レアル加入後、公式戦(2022年8月)で初めて得点を決め、サポーターの信頼を得た特別な相手。その試合に勝利を手にすることができたのは、自身の目標に向かって戦い続けるのに役立つはずだ。

【久保のポジションはベッカー、ザハリャンに脅かされる?】

 もしかしたら、調子を落としている久保がレギュラーとして起用され続けることに、疑問を持つ者がいるかもしれない。その場合、今冬の移籍市場でやって来たシェラルド・ベッカー、昨夏加入したアルセン・ザハリャンという、久保とタイプの違うふたりに注目が集まる。

 久保と同じ右サイドを本職としながらも、攻撃のあらゆるポジションでプレーできるベッカーは、カディス戦に左ウイングで先発出場。まだチームに完全にフィットしているわけではないが、類稀なスピードを武器に大きな可能性を感じさせている。

 FWというよりもMFに近いタイプであるテクニシャンタイプのザハリャンは、久保のバックアップをよく務めている選手。徐々に出場時間を増やし、カディス戦で久保との交代直後にラ・レアルでの初得点を挙げたことは、今後の自信につながるだろう。

 ふたりともシーズンが佳境に入るこの時期に存在感を高めているが、私は現時点で久保がレギュラーの座を脅かされることはないと思っている。しかし、今のようなパフォーマンスが続くようなら当然、イマノルが何らかの処置を施し、ベンチスタートになる場合もあり得るだろう。

 久保が2022年夏にラ・レアルデビューを果たした時、それまでに所属していたクラブでの実績を考えると、彼の先発起用には疑問符が付いていた。しかしそれも過去の話。今のところ、彼がレギュラーで出ることに議論の余地はない。その証拠にここまでずっと重要な試合で先発し続けている。

 またラ・レアルとの契約を2029年まで延長したのは、クラブの揺るぎない信頼を示すものだ。サポーターも彼に大きな信頼を寄せており、来シーズンもチームの柱のひとりであり続けることを歓迎するだろう。

 調子を崩している久保がこの後、代表戦に参加するのは気がかりだが、国王杯とCLに敗れて過密日程から解放されたことは不幸中の幸いと言えよう。サン・セバスティアンでは皆が、5季連続の欧州カップ戦出場権が懸かるラ・リーガの残り9試合でベストの状態に戻ってくれると信じている。
(髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)