ビキニフィットネス・ダンシーあずさ インタビュー中編(全3回)フィットネスに励む女性たちから支持を集めるビキニフィットネス界の女王、ダンシーあずささん。国内最高峰のボディコンテスト「オールジャパン フィットネス チャンピオンシップス」(JB…
ビキニフィットネス・ダンシーあずさ インタビュー中編(全3回)
フィットネスに励む女性たちから支持を集めるビキニフィットネス界の女王、ダンシーあずささん。国内最高峰のボディコンテスト「オールジャパン フィットネス チャンピオンシップス」(JBBF主催)のビキニフィットネス163センチ以下級で5連覇を達成し、シーンをけん引する彼女にトレーニングとの出会いを聞いた。
インタビューに応じるビキニフィットネス階級5連覇中のダンシーあずささん
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【ぽっちゃり女子を見かねたホストマザー】
ーー小さい頃はクラシックバレエ、中学で新体操、高校でチアリーディングをしていたとのこと。もともと運動にはなじみがあった?
ダンシーあずさ(以下同) めちゃくちゃ体育会系でした。家族は父がアメフト、兄がラグビーをやっていてスポーツ一家。私自身も中学・高校6年間は部活しかやっていないような日々でした。
ーーでは、トレーニングと出会うのも自然な流れですね。
全然そんなことないですよ。チア部の頃は、「ベース」と呼ばれる下で上に乗る子の体重を支えるポジションだったからもともと体重はありましたし、体をカッコよくすることに憧れはあったけど実際には継続できなくて、ぽっちゃり体形でした。
大学卒業後はアパレル会社で2年間働いたあと、大学でも授業をとっていたスペイン語を習得しようとスペインに1年ほど留学したのですが、その時の生活がめちゃくちゃで......。
ーーどのような生活だったんですか?
スペインで海に近いところに住んでいたので、友達と毎日ビーチへ行ってワインを飲みながらポテチも食べてゴロゴロ。週末は「フィエスタ」という現地のクラブで8時間飲み続けるみたいな(笑)。当時が一番太ってたかな。
見かねたホストマザーに「こいつ、やばい」と思われたのか、「とりあえず1回ジムに行こう」と誘ってくれて。面倒くさいと思ったんですけど、行ってみたら同年代から母親世代まで頑張って運動して汗を流しているのを見て、私ってマジで怠けてるなと思って、考えをあらためました。
留学中にホストマザーのテレサさん(右)からジムに誘われたことがきっかけだった 写真/本人提供
留学中の仲間とダンシーあずささん(中央)
ーー恩人ですね。
もしあの時、ジムに誘われなかったらすごい体形になってしまっていたかも。今では夜遊びなんてまったく興味ないですもん。ホストマザーとは今も連絡をとり合っていますが、ここまでトレーニングにハマると思ってなかったみたいで、超驚いてましたよ。
留学中はビーチでよくスナック菓子を食べていたという
【モデルよりストリートファイター体型】
ーー帰国後も引き続きトレーニングを?
スペイン語を活かして語学学校で働こうと就職活動をしてたんですけど、もうトレーニングのことしか考えられなくなっちゃっていました(笑)。結局、パーソナルトレーニングジムのトレーナーをやりながら自分もジムで鍛える日々を送ってましたね。
ーー当時はどのような体を目指していたんですか?
もともと体育会系だし、当初は筋肉をつけたらカッコいいって気持ちだったので、「ビッグ3」(ベンチプレス・スクワット・デッドリフト)の重量を上げていく楽しさにハマってました。
それがある日、通っていた「ゴールドジム」のトレーナーさんに「カッコいい体を目指したいなら一度、ビキニフィットネスの大会に出てみたら?」と紹介されたんです。
ーー初めてビキニフィットネスを知った、と。
当時はコンテストの選択肢がそんなになかった。「ベストボディ・ジャパン」や当時流行り始めていた「サマー・スタイル・アワード」の出場者の体は薄くて、個人的にですが、あまりカッコよく思えなかった。モデル体形よりも格闘ゲームの「ストリートファイター」の春麗(チュン・リー)みたいな筋肉がほしかったので、JBBFの大会に挑戦することにしました。
ーービキニフィットネスのどんなところに魅力を感じましたか?
競技のことを調べてみた第一印象は、脂肪をなくしていったら女性でも筋肉はこういうふうに見えるんだ、と。知らなかった世界で純粋にカッコいいと思ったし、大会で入賞すればハクもつくし、今後のトレーナー人生を考えたうえでもメリットになるだろうと大会に出てみることにしたんです。ただ、その時点ではまだ「ビッグ3」への思いは断ち切れてなかったですね(笑)。
【ビキニフィットネスは「かなり特殊な競技」】
ーーそれがいまや"ビキニ女王"。
2017年8月の初コンテスト(第52回東京ボディビル選手権大会)で、3位くらいになれると思っていたのに12位。そこから1カ月間、自分なりに絞って臨んだ「オールジャパン」でも4位と結果が出なかった。
その時に初めて自分がすごく負けず嫌いなんだと知りました。どうせやるなら本気でやりたい。来年は絶対に勝つぞという気持ちで、ビキニフィットネスにのめりこんでいきました。
2023年の「オールジャパン フィットネス チャンピオンシップス」
写真/本人提供
ーートレーニング内容も変えましたか?
それまで前腕や上腕のトレーニングや、シックスパックにするために腹筋もめちゃくちゃ負荷をかけて厚みを出そうとしていました。でも、ビキニフィットネスに腕の筋肉はいらないし、ウエストは細いことが大前提です。
全部を大きくするんじゃなくて、粘土細工をつくるように筋肉を足したい部分はトレーニングして、削りたい部分はトレーニングをやめる、いわゆる「足し算・引き算のボディメイク」を意識するようになりました。
ーービキニフィットネスという競技の難しさはどこにあるのでしょうか?
やみくもにしぼってもげっそりしてしまう。だから、はつらつとしていて女性らしい丸みを残しながらしっかりしぼって、シェイプが強い体をつくるのがすごく難しいですね。
歴史の長いボディビルと違って、ビキニは前年に優勝した選手の体が次の年の審査基準になったり、体のトレンドが変わる。まだはっきりとした正解がないからこそ、トレンドに合わせなくちゃいけない難しさはあると思います。
ーー審査競技の難しさですね。
並んだ時の印象、ステージのライティング、審査員との距離、ステージの長さや角度でも体の見え方が変わります。
会場が明るいならより肌を黒くしたり、審査員が近いならアウトラインやシルエットよりも質感がよく見えるように絞り気味に仕上げたり、逆に距離があると細かい皮膚感が見えないから、アウトライン、メリハリ、枠組みを意識したシルエットを見せることにフォーカスして直前の炭水化物の量を調整したり。大会当日の環境によって臨機応変に対応しなくちゃいけないのが、かなり特殊な競技ですね。
【ボリュームのあるお尻が強み】
ーーそのなかでご自身の強みは?
ポージングはずっと力を入れていたので、2022年のIFBB世界フィットネス選手権でベストポーズ賞をとったのはすごくうれしかったです。ちょっとした視線の送り方、所作を意識し、ステージのどの位置に移動しても体をマッスルコントロールして正しいポーズをしっかりシンメトリーで見せていく。何にも考えなくても、そういう部分が表現できるように毎日反復練習していました。
ーー自信のある部位はありますか?
日本人選手のなかならお尻はすごくボリュームがあるタイプなんで、そこは強み。あとは背中ですね。
ーー"美腹筋"も特徴かと思います。
ビキニ競技は肩やお尻の広さとウエストの細さというメリハリが大事。でもじつは私、肋骨の幅があってウエストはもともと細くないんです。なので、究極のアウトラインにするために、横隔膜を使って肋骨と肋骨を閉じる「ドローイン」という呼吸による体幹トレーニングは欠かせないんです。
ーーところでネット上では、筋肉を鍛えている女性への「アンチコメント」も見られます。どう考えていますか?
男性、女性かかわらず、鍛える時代だと思います。多くの人が自分の体形にどこか満足しておらず、心のどこかで「変わりたい」「理想の体で生きたい」という願望はあると思うんです。それは、アンチコメントをする人も一緒のはず。筋トレをすれば、「理想の自分」に近づけるんですから、他人の文句を言う方もぜひ一歩踏み出してみたらいいのではないでしょうか。
ーー後編ではビキニフィットネスの絶対女王、安井友梨についてお聞きします。
後編<ダンシーあずさ、離婚→心身の不調→4年連続2位で涙「ステージ上の自分が楽しそうじゃなかった」>を読む
前編<ダンシーあずさ「キレ食い」時期も乗り越えビキニ階級で5連覇 「過酷なことはしてません」週5時間のみのトレーニングの秘密>を読む
【プロフィール】
ダンシーあずさ
1990年、東京都生まれ。大学卒業後、社会人生活を経て25歳のスペイン留学中にホストマザーの影響でトレーニングを始める。「オールジャパン フィットネス チャンピオンシップス」(JBBF主催)・ビキニフィットネス163センチ以下級で5年連続優勝、階級無差別の「JBBFフィットネス・グランド・チャンピオンシップス」(同)のビキニフィットネスでは4年連続2位。2022年のIFBB世界フィットネス選手権のビキニフィットネス160センチ以下級では3位に入った。