春到来を前に、日本のサッカーシーズンが本格的に幕を開けた。男子はJリーグが開幕し、女子のWEリーグもパリ五輪予選の北朝…
春到来を前に、日本のサッカーシーズンが本格的に幕を開けた。男子はJリーグが開幕し、女子のWEリーグもパリ五輪予選の北朝鮮戦後、再開された。女子チームを持っているJリーグクラブが増えているが、浦和レッズもそのひとつ。男女の試合で浮かび上がった問題点を、サッカージャーナリスト後藤健生が徹底検証する。
■主力選手が欠けても「機能」
三菱重工浦和レッズレディースは、トップ下で安定感を増している猶本光や、久しぶりにFW起用されると、たちまち浦和の得点源となったベテランの安藤梢が皇后杯の戦いの中で負傷し、ともに長期離脱となっている。
そして、両チームとも数人の選手が日本代表に招集されて、北朝鮮戦の(そして、サウジアラビアとの長距離移動の)疲労をため込んで戻ってきたばかり。さらに、AFC女子U20アジアカップのためにチームを離れた選手もおり、なかなかやりにくい試合だったはずだ。
しかし、浦和が選手たちの判断で右サイドの攻撃を選択したことや、それに対してINAC神戸レオネッサが守りの配置を変えることでリズムを取り戻したことなど、チームの完成度が高いからこそ、ともに駆け引きをしながら試合を進めることができた。
浦和の楠瀬直木監督は、浦和レディースのトップチームの監督に就任して今年で4年目となり、チームを完全に掌握しているし、選手たちもチームの攻め方、守り方に習熟している。だからこそ、そのときの状態を見て、戦い方を切り替えることができるし、主力選手が欠けてもうまく機能させられるのだ。
一方、I神戸のジョルディ・フェロン監督は今シーズン(2023/24シーズン)から就任した監督だ。
開幕当初(WEリーグカップ)は昨シーズンまでの3バックを4バックに切り替えようとしたり、つなぐサッカーを取り入れようとしたため、チーム全体が混乱した印象もあったが、フェロン監督はたちまちのうちにチームを掌握。選手の特性を見て、今シーズンも3バックで戦うことを決定。今回の浦和戦のように、試合途中でシステムや選手の並びを変更して立て直すような見事な采配を見せている。
■クラブの温かい配慮も「大行列&満員」
ところで、この日の浦和レディース対I神戸の試合のキックオフは12時(正午)に設定されていた。
WEリーグでは、普通デイゲームでの開始時間は14時が多いから、異例の早い時間の試合だった。
実は3月3日には、16時から埼玉スタジアムでJ1リーグの浦和レッズ対東京ヴェルディの試合が行われる予定だったのだ。「皆さん、どうぞ移動して両試合を観戦してください」という、クラブの温かい配慮だった(のだろう)。
そこで、僕も両チーム監督の記者会見を終えてから、急いで埼玉スタジアムに移動することにした。駒場スタジアムから浦和美園駅行きのバスに乗れば30分弱で同駅に到着するから、余裕を持って移動できると思っていた。
ところが、浦和のサポーターも考えることは当然、同じだった。
バス停に向かうと、そこには大行列ができていて、最初に来たバスは満員になってしまい、乗車できなかった。それでも、2番目のバスに乗車した僕は、浦和対東京Vの試合開始15分前くらいには埼玉スタジアムに到着。無事に、浦和対東京Vの試合も観戦することができた。
■東京Vのハイプレスに「パスが回せない」
しかし、J1リーグの浦和レッズは、レディースの試合とは違って、チームの完成からはほど遠いものだった。
試合の入りの時間帯は、互いにロングボールを使ってチャンスを作り、激しい主導権争いを繰り広げ、センターバックのアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンの守備が安定している分、浦和が優位に立つかと思われた。
しかし、20分を過ぎる頃に、東京Vのハイプレスが機能し始めると、浦和はパスを回すことができなくなり、42分にはCK崩れからの混戦の中で木村勇大が決めて東京Vが先制。後半に入っても東京Vが浦和の攻撃を分断し、奪ったボールを思い切りよく動かして再三決定機を迎えた。
ただ、東京Vにとっては、この時間帯に追加点を奪えなかったのが大きく響くことになった。終盤、圧力を増した浦和の攻撃力によって押し込まれ、最後はPKを取られて同点とされてしまったのだ。だが、内容的には明らかに東京Vが勝っていた試合だった。