ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」──今年最初のGIレース、フェブラリーS(東京・ダート1600m)が2月18日に行なわれます。近年の傾向として、同時期に行なわれるサウジカップデー(今年は2月24日に開催)に多くの有力馬が出…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

──今年最初のGIレース、フェブラリーS(東京・ダート1600m)が2月18日に行なわれます。近年の傾向として、同時期に行なわれるサウジカップデー(今年は2月24日に開催)に多くの有力馬が出走し、同レースはメンバーが手薄になるケースがしばしば見受けられます。そして今年も、同様の状況となっている感じがします。

大西直宏(以下、大西)優勝賞金の規模を考えると、実績ある馬たちがサウジカップデー(に行なわれるレース)を優先するのは自然な流れですね。その結果、フェブラリーSは"ダート最強馬決定戦"というより、次なる海外遠征馬を決めるための"選考レース"のような位置づけになってきています。

 これは、フェブラリーSに限った話ではなく、国内の多くのGIレースでも同様の傾向が見られます。競馬ファンの間では、強い馬には世界での活躍を期待する一方で、それによって、国内のGI競走が盛り下がることに懸念を示す声もありますね。

 馬券的な視点からすると、混戦になるほど配当的な妙味がアップするので、僕としてはそれほど悪いことではないと考えていますが。

――今年は各路線から多彩な顔ぶれが集結しましたが、そのメンバー構成を見ての印象を聞かせてください。

大西 芝路線からの参戦馬や、フェブラリーSと地方交流重賞の両方を視野に入れている馬の動向もあって、1週前の時点で出走メンバーは確定していませんでした。(出走への)賞金がボーダー上の陣営は、「出走できるかどうか......」とだいぶやきもきしていたようですね。

 とりわけ、出走すれば上位人気が予想されるオメガギネス(牡4歳)の陣営は、もどかしい思いを抱えていたことでしょう。それでも、週明けの火曜日に賞金上位馬が回避したことで、同馬の出走は何とか確定。この馬が出走できるかどうかで、予想の方向性は大きく変わっていたでしょうね。

 ともあれ、昨年の覇者で、GIチャンピオンズC(12月3日/中京・ダート1800m)も制したレモンポップや、JRA賞の特別賞を受賞したウシュバテソーロらが不在。出走メンバーを見る限り、全体的には小粒な印象が拭えません。

――今年は、初のダート戦に挑む芝の実績馬に、有力な地方所属馬が何頭か出走します。そうなると、出走各馬の能力比較は難しくなってくると思うのですが、予想において注意すべきポイントなどはありますか。

大西 今回が初のダート戦となる芝の実績馬に関しては、未知の魅力から一発の期待は膨らみますが、過去のデータからして、その成功例は決して多くない、ということは頭に入れておくべきでしょう。フェブラリーSがGIに昇格して以降、ここが初ダートで馬券圏内に入った馬は、2001年に3着となったトゥザヴィクトリーの例があるだけ。それ以外は、芝で相当な実績を残してきた馬でも案外な結果に終わっています。

 今年も、ガイアフォース(牡5歳)、シャンパンカラー(牡4歳)といった芝で実績のある魅力的な2頭が出走しますが、過去の結果を踏まえると、初ダートで勝ち負けを演じるのはどうでしょうか。そのハードルはかなり高いと思います。

 また、地方所属馬についても同様のことが言えます。地方競馬では砂厚が深く設定されているため、スピードよりもパワーに重点が置かれています。しかも、東京・ダート1600mという舞台は、中央競馬の全コースのなかでも最もスピード勝負になりやすい条件設定。交流重賞で結果を出している実力馬でも、地方所属馬は全般的に苦戦してきた傾向があります。

――今回のメンバー構成からして、展開面はどう予想されますか。

大西 短距離の逃げ馬であるドンフランキー(牡5歳)が出走することで、スローにはならないと思います。同じく1200m戦を経由して出走するイグナイター(牡6歳)も前々で運びたいでしょうし、ドゥラエレーデ(牡4歳)もこれらを見ながら早めに仕掛けてくることが予想されます。

 加えて、オメガギネスやウィルソンテソーロ(牡5歳)などの上位人気馬も、前走では前目で運んで好成績を収めていることから、今回も早めに先行勢に圧力をかけていくでしょう。となると、差しタイプの穴馬には注意が必要になるかもしれませんね。

――そんな差しタイプの穴馬で、大西さんが気になる存在はいますか。

大西 レッドルゼル(牡8歳)が一発の可能性を秘めた存在だと考えています。今年で8歳になり、4年連続の出走となりますが、過去3年間(2021年=4着、2022年=6着、2023年=2着)のレース内容はいずれも悪くありませんでした。

 昨年も7歳にして2着と好走。レースを厳選して使っているため、能力の衰えは微塵も感じられません。差し脚は安定しており、レースの流れ次第では大きく浮上しても不思議はないでしょう。



フェブラリーSでの一発が期待されるレッドルゼル。photo by Yasuo Ito/AFLO

 また、同馬を管理する安田隆行調教師は3月5日に定年を迎え、これが最後のJRAのGI出走。このレースに向けて、悔いのない仕上げを施してくるはずです。

 過去3年のフェブラリーSでも鞍上を務めてきた川田将雅騎手がカタールへ遠征したため、今回は北村友一騎手に乗り替わりますが、北村騎手はデビュー戦から同馬の手綱を取ってきたかつての主戦ジョッキー。マイナス要因はないと見ています。乗り替わりによって少しでも人気が落ちるようなら、配当的な妙味が増して、かえって好都合と言えます。

 ということで、フェブラリーSの「ヒモ穴馬」にはレッドルゼルを指名したいと思います。