ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」――年明けの中山開催が終了し、今週から舞台は東京に移ります。その開幕週にはGIフェブラリーS(2月18日/東京・ダート1600m)の前哨戦、GIII根岸S(1月28日/東京・ダート1400m…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――年明けの中山開催が終了し、今週から舞台は東京に移ります。その開幕週にはGIフェブラリーS(2月18日/東京・ダート1600m)の前哨戦、GIII根岸S(1月28日/東京・ダート1400m)が行なわれます。

大西直宏(以下、大西)本番のフェブラリーSとの関連が深い注目の一戦ですが、今年の出走メンバーを見て率直に感じたのは、「賞金の少ない馬でも出走できてしまうんだな」ということ。メンバーレベルは、かなり小粒な印象です。

 その背景には、2月、3月にサウジアラビアとドバイで行なわれる国際招待競走の影響があると思われます。現にJRAから先日、サウジカップデー(2月24日)に延べ111頭、ドバイワールドカップデー(3月30日)には138頭ものJRA所属馬が登録した、という発表がありました。

 登録馬すべてがダート戦に挑むわけではありませんし、実際に出走できる馬も限られるわけですが、これほどの数の馬が登録したことには驚かされました。

 それぞれの賞金の高さを考えると、海外へ目を向ける陣営が増えるのは理解できます。今や日本馬も海外遠征の経験を積んで、結果も出しています。出走の機会があれば、そちらを優先するのは当然の流れかもしれませんね。

――賞金上位の実績馬の出走が少なくなると、未対戦の馬たちの出走が増え、力関係を見極めるのは難しくなりそうです。

大西 そのとおりだと思います。ただその分、馬券的な面白味は増します。古馬の5歳以上の実績馬が手薄になると、まだ底を見せていない明け4歳馬への注目度が高まる傾向があって、人気の盲点となる実力馬が出てくる可能性がありますから。

 実際、今回もサンライズフレイム(牡4歳)、エンペラーワケア(牡4歳)、パライバトルマリン(牝4歳)といった明け4歳馬に人気が集まりそう。各馬のこれまでの戦績からしても、この路線での新星誕生を期待したくなるものがありますからね。

 振り返れば、昨年末のGIチャンピオンズC(12月3日/中京・ダート1800m)でもセラフィックコール、地方交流GⅠの東京大賞典(12月29日/大井・ダート2000m)でもミックファイアといった当時3歳馬の、現明け4歳馬が上位人気に支持されています。先週のGII東海S(1月21日/京都・ダート1800m)でも、明け4歳のオメガギネスが単勝2.0倍と断然の1番人気に推されました。

 しかし、これらはいずれも人気以上の結果を残せませんでした(セラフィックコールは2番人気10着、ミックファイアは3番人気8着、オメガギネスは1番人気2着)。期待先行という結果になりやすいのは明らか。今回も、同様の注意が必要だと思います。

――明け4歳馬の扱いが肝になりそうですが、今回人気になりそうな馬たちはいかがでしょうか。

大西 明け4歳馬にとっての課題は、時計面です。根岸Sは過去10年の平均タイムが1分22秒7と、1分22秒台での決着になることが多いです。つまり、そのタイムに対応できるだけのポテンシャルが必要です。

 その点、先に挙げた明け4歳馬たちのダート1400mのベストは、エンペラーワケアが1分23秒4、サンライズフレイムが1分23秒7。初の1400m戦となるパライバトルマリンは、4走前に1400m通過1分23秒7という時計をマークしています。

 ということは、それぞれ1秒ほどのタイム短縮が求められます。その余地があるかどうか。そこが、ポイントになるでしょうね。

――人気の明け4歳馬に絶対的な信頼を置けないとなると、人気の盲点となりそうな古馬の実力馬に食指が動きます。大西さんが気になる穴馬候補はいますか。

大西 時計面にも対応できて、当舞台でも結果を出しているのは、アルファマム(牝5歳)です。この馬は1200m~1300mのレースで5勝を挙げているように、"短距離の差し馬"という印象がありましたが、前走のオープン特別・霜月S(11月19日/東京・ダート1400m)で、初めて1400m戦で勝利を収めました。

 歳を重ねて、だいぶ距離に対する融通性が出てきたように感じます。しかも、上がり3ハロンでメンバー最速の34秒7という時計をマーク。そのキレ味には目を見張るものがありました。



根岸Sでの勝ち負けが期待されるアルファマム。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 これまでのキャリア15戦のち、メンバー最速(タイも含む)の上がりをマークしたのが12回と末脚特化タイプ。展開に注文はつきますが、ハマればここでも通用しそうです。

 1400m戦までしか経験のない同馬にとって、1600m戦となる本番のフェブラリーSよりも、このレースに重きを置いているのは明確。勝負度合いも高いと見ます。そこで、根岸Sの「ヒモ穴馬」には、この馬を指名したいと思います。