そんな方、まずはここから。動画を見て、合わせてこの記事を読めば、パラスポーツの面白さがバッチリわかるはず。今回は車いすバスケットボール編。選手がプレーする動画のシーンを取り上げながら、車いすバスケットボールがどんなスポーツなのか、基本をご紹…

そんな方、まずはここから。動画を見て、合わせてこの記事を読めば、パラスポーツの面白さがバッチリわかるはず。

今回は車いすバスケットボール編。

選手がプレーする動画のシーンを取り上げながら、車いすバスケットボールがどんなスポーツなのか、基本をご紹介。

日本車いすバスケットボール連盟の「なかのひと」と、クラブチーム・NO EXCUSEの鈴木さんの詳しすぎる解説と共にお送りします!

まずは、動画をみてみよう!今回解説いただくのはこちらの方々です!なかのひと(なかのひと)さん

「バスケ好きはみんな見てる」

最近、推しが増えて困っている車いすバスケットボール連盟公式「X(旧:Twitter)」なかのひとです。

鈴木ゆか(すずき・ゆか)さん

約17年前、友人に誘われNO EXCUSEチームスタッフとして車いすバスケットボールに関わりはじめる。現在、チームクラシファイア、クラス分け部役員などで活動中。

1チーム5人。選手には障がいの程度に応じて持ち点が!

まずは、車いすバスケットボールの選手の「クラス分け」について。

車いすバスケットボールには選手の障がいの程度によって持ち点が設定される「クラス分け」システムがある。

持ち点は1.0点から0.5点きざみで4.5点まで。障がいが重い選手は点数が低く、障がいが軽い選手は点数が高い。主に持ち点1.0点~2.5点の選手を「ローポインター」、持ち点3.0点~4.5点の選手を「ハイポインター」と呼ぶ。

コートでプレーする1チーム5人の持ち点の合計は、14点以内と決められている。

障がいの軽い選手だけではなく、色々な障がいの程度の選手5人をいかに組み合わせるかも戦略のポイントとなる。

「車いす」バスケットボールなので、例えばパラリンピック等の国際大会に参加するには下肢に障がいがあることが前提になりますが、日本では2019年から天皇杯に障がいのない選手が参加できるようになりました。

これまでに日本から複数の選手がドイツのリーグに参戦していますが、そのリーグにも障がいのない選手が多く参加しています。

ちなみにドイツは障がいのない選手の持ち点は4.5で日本と同じだそうで、ドイツは5部まであるリーグの中にたくさんいるそうです。

クラス(持ち点)は「クラシファイア」と呼ばれる有資格者が障がいの種類や度合いを評価してからプレーを観察して競技クラスを決めます。1.5、2.5、3.5などのハーフポイントは、前後のクラスの両方の特性を持っており、クラスがつけがたいときにハーフポイントを付与します。

タイヤがハの字になった競技用車いす

車いすバスケットボールで使用する競技用車いすは、日常用の車いすと違い、タイヤがハの字になっている。このハの字になっているタイヤの傾きの角度をキャンバー角といい、この傾きがあることで、車いすの向きを変えやすくなっている。ちなみに、ブレーキはついていない!

競技用車いすにはベルトがついていて、選手の身体をがっちり座面に固定し、安定したプレーが可能に。シートの高さや厚みなどは、選手それぞれ自分にあわせてアレンジしている。

競技用車いすの前にはバンパーがついていて、車いす同士がぶつかったときに選手の身体を守る!他の選手の車いすに引っかからないようにする役割も。

また、後ろに重心がかかっても倒れないように、車いすの後ろ側には小さな車輪(リアキャスター)がついている。

車いすの座面の幅や角度、背もたれの高さ、キャンバー角は、選手一人ひとりに合わせてカスタマイズされています。世界に同じものは一つとしてない、まさにオンリーワンの車いすです!

コートの大きさ、リングの高さは一般のバスケットボールと一緒!

続いて、車いすバスケットボールの基本ルールを。

コート(28m×15m)、リングの高さ(3.05m)、使用するボールは、バスケットボールと同じ。

試合は10分のピリオドを4回、合計40分で行われる。

連携してパスをつなぎ、シュート!

ドリブル、車いすをプッシュ、パスをつなげてシュート!

3ポイントラインの内側からシュートを決めると2点が入る。

オフェンスは一度ボールを持ってから、24秒以内にシュートをしなければならない。攻撃側の障がいの重い選手が守備側の選手の動きを止める壁となって味方の攻撃チャンスをつくるスクリーンプレーなど、ボールを持っていない選手も含めたチームの連携がカギを握る。

ローポインターが相手ディフェンスとハイポインターの間に入り(スクリーン)、ハイポインターがシュートを撃ちやすいよう空間をつくる。これが「ピックアンドロール」です!健常のバスケにも同じようなプレーがあるので、聞いたことがある人もいるかもしれませんね。

「ダブルドリブル」はない!

車いすバスケットボールならではのルールを紹介。

バスケットボールにある反則「ダブルドリブル」はなく、何回ドリブルをしてもOK。

ただ、ボールをもった状態で車いすをプッシュ(押す)できる回数は、一度に2回まで。2回以内でプッシュした後ドリブルをすれば、また2回まで車いすをプッシュできる。

例えば、

ドリブル⇒車いすをプッシュ⇒またドリブル⇒また車いすをプッシュ……

と繰り返してボールを運ぶこともできる。

3回以上連続でプッシュすると、「トラヴェリング」で反則となるので注意!

難しい3ポイントシュート!

3ポイントラインの外から放ったシュートは、バスケットボールと同じく3点が入る!

ジャンプせず、上半身の筋力だけでリングを射抜く、高い技術が必要な迫力あるプレーに注目!

健常者と同じ高さ・距離のゴールに、選手によっては腹筋・背筋・下半身の力が使えない状態で、上半身や腕の力だけでボールを精度高く飛ばしているのが3ポイントシュート。男子だけではなく女子にも3ポイントシュートを積極的に狙う選手はたくさんいます。決まるとチームに勢いがつきますね!

激しい競り合い!ディフェンスにも注目

ジャンプをしないため高さのある選手が有利になりやすい車いすバスケットボールでは、選手の位置取りが重要。ディフェンスは車いすを細かく操作しオフェンスの中心となる選手をゴールから遠い位置で釘付けにするなど、得点を防ぐために戦術も。

ボールをもっているオフェンスの選手は、ディフェンスを受けながらもドリブルやパス、シュートを5秒以内にしなくてはならず、なんとか次のプレーにつなげようとする。

車いすバスケットボールのディフェンスでは、ゴール下にオフェンスの選手を入れない、というのが相手に得点をとらせないための基本です。オフェンスに時間を使わせて24秒バイオレーションを狙ったり、なるべく遠く・角度のないところからシュートを撃たなくてはいけない状況にして入る確率を下げるために、ディフェンスのチーム全員が意識を合わせて自分の役割を果たすことが大切です。地味に見えるかもしれないけれど、ぜひ注目してほしいです!

倒れても自分で起き上がる!

スピード感ある全力プレーの中で、転倒してしまうことも。そんなときも、試合中は自分で起き上がる!起き上がれないときは審判の判断で試合を中断し、スタッフや選手がサポートするときもある。

激しいプレーで、タイヤがパンクしたりスポークが折れたりすることもあります。

規定の時間内にすぐに対応できればプレーが続行できますが、そうでないと一度交代をしなくてはなりません。なので、スペアタイヤを用意して素早く交換するなど、スタッフも迅速な判断と対応を求められるので気が抜けません!

車輪を使ってボールを拾う!

地面に落ちたボールを拾うとき、車いすの車輪をつたわせて拾い上げることも!初めて見ると、思わずおおっと言いたくなるはず。

車いすバスケットボールならではのプレー、「ティルティング」

障がいの軽い選手は、シュートやリバウンドのときに車いすの片輪を上げる「ティルティング」をくりだすことも!卓越したボディーバランスを活かして高さを出し、空中戦を制する高度なテクニックに注目!

ティルティングは非常に優れたバランス感覚が求められるプレーです。ハイポインターだからといって誰もができる技術ではありません。見逃さないように、ゴール下のプレーからは目を離してはいけませんよ!

車いすバスケットボールの面白さをもっともっと味わおう!

手に汗握る展開に惹き込まれること間違いなし。もっと車いすバスケットボールについて調べて、体験して、試合もみてみよう!

選手によってチーム内の役割があります。ハイポインターの選手にシュートを打たせるように、ローポインターの選手が相手選手に守備をさせないように体を張ってブロックするなど、それぞれの役割に注目して試合を見ると、とても面白いですよ。聞かれてませんが、わたしは皆さんに情報発信する役割なので、SNSをポチポチしています(笑)。

それぞれの選手の障がいの特性がわかると、より一層面白くなると思います!

持ち点やそれぞれの残存機能などによって、車いすのセッティングにも一定のセオリーがありますが、自分のやりたいプレイを踏まえて、敢えてセオリー通りにしないことも。例えば、障がいが軽い選手は高いセッティング、重い選手は低いセッティングにすることが多いのですが、あの漫画「リアル」の戸川はさして背が高くない分、早さを活かすべく、持ち点4.5のいわゆるハイポインターでありながら敢えて低めのセッティングをしているとお見受けします!

NO EXCUSE

高橋智哉、大嶋義昭、仙座北斗、森紀之、横溝俊、下村浩之、山口徹朗、八木沼辰弥、立川光樹、橘貴啓

もっと知りたい方はこちらもどうぞ!

パラサポWEB・競技紹介ページ「車いすバスケットボール」https://www.parasapo.tokyo/sports/wheelchair-basketball

日本車いすバスケットボール連盟ホームページ(外部サイト)https://jwbf.gr.jp/

text by parasapo