【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】 ◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬 【ガリレオ】  現役時代は英ダービー、愛ダービーなど通算8戦6勝。管理したエイダン・オブライエン調教師は「ギアが入ってからのトップスピ…

【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【ガリレオ】

 現役時代は英ダービー、愛ダービーなど通算8戦6勝。管理したエイダン・オブライエン調教師は「ギアが入ってからのトップスピードが驚異的」と評しました。その父サドラーズウェルズは英愛チャンピオンサイアー14回の大種牡馬、母は凱旋門賞馬アーバンシーという超良血で、8歳下の半弟シーザスターズは英ダービー、凱旋門賞などビッグレースを総なめにしました。

 種牡馬としても大成功。今世紀最強といわれるフランケルを筆頭に多くの名馬を送り出し、英愛チャンピオンサイアーの座に12回就きました。これはサドラーズウェルズ(14回)、ハイフライヤー(13回)に次ぐ歴代3位の記録です。スピードの持続力を武器とし、欧州向きのパワーに秀でています。それゆえに日本向きの素軽さに欠け、JRAでデビューした37頭の産駒から、重賞勝ち馬はおろか馬券に絡んだ馬すら出ていません。息子のフランケル(ソウルスターリング、モズアスコット、グレナディアガーズなどの父)とは対照的であり、両者は親子であっても別物と考えるべきでしょう。

◆血統に関する疑問にズバリ回答!

「日本で種牡馬入り! ウエストオーバーをどう見る?」

 かなりの素材だと思います。父フランケルは、直系先祖のサドラーズウェルズ-ガリレオの親仔とは違い、日本の高速馬場に適応する素軽さを秘めています。スピードと切れ味を武器に無敗で凱旋門賞を制したエースインパクトのような馬が出てくるのも、フランケルのラインがそうした重要な要素を伝えているから、という気がします。

 ヨーロッパの芝は日本のそれに比べて力を要するため、スピード検定の舞台として適切とはいえず、スピードの有無は距離適性で判断されがちです。すなわち、短距離向きの馬はスピードがあり、長距離向きの馬はスピードがない、と。12ハロン向きの馬は種牡馬として冷遇されがちです。

 しかし、日本で成功する欧州血統の種牡馬を見分けるときに、最も重要なのは距離適性ではなく、血の質であると考えます。優秀なマイラーであっても血の質が重ければ日本向きとはいえません。逆に、12ハロン向きでも日本向きの血の軽さがあれば注目すべきであり、その上で高速馬場で実績を残していれば期待できるでしょう。

 自身は硬い芝を得意とし、サンクルー大賞(仏G1・芝2400m)の勝ちタイムは2分25秒46のレースレコード。エースインパクトが2分25秒50で差し切った凱旋門賞(仏G1・芝2400m)、イクイノックスが2分25秒65で逃げ切ったドバイシーマクラシック(首G1・芝2410m)でそれぞれ2着となっています。なおかつ、母、2代母はいずれもアメリカの軽い芝で8ハロンの重賞を勝ちました。

 ファミリーに代々交配している血は、ヘイルトゥリーズン、ラウンドテーブル、ニジンスキー、ライシアス、リアファン、フランケルと、いずれも日本適性があります。

 新冠町の優駿スタリオンステーションに繋養され、初年度の種付け料は250万円。個人的には大きな可能性を感じています。