「すごい規模が大きくて、熱いサポーターがいて、温かさもあって、サポーターのためにもタイトルを取らないといけないっていうこ…

「すごい規模が大きくて、熱いサポーターがいて、温かさもあって、サポーターのためにもタイトルを取らないといけないっていうことが分かりました」

 1月22日、新体制発表会において川崎フロンターレのサポーターの前に姿を見せた大南拓磨が、観客席に誰もいなくなった会場でまず話したのが、タイトルへの気持ちだった。タイトルを取るために移籍を決断したと後日、何度も言葉にしているが、このとき、サポーターの盛大な歓迎を受けて、「本当に規模がすごい大きくて、裏でも動いてる人たちがたくさんいて、フロンターレの目指しているものを感じました」と改めてその責務を感じたという。

 時は過ぎ、それからリーグ戦34試合を終えると、25歳のDFの出場試合数は29を数えた。ジュビロ磐田で4年、柏レイソルで3年を過ごした大南にとって、今季のリーグ戦の試合数は2021年に並んで自己最多となっている。

 そうしたシーズンの締めくくりとも言える試合が12月9日に行われる天皇杯決勝だ。対戦相手は柏レイソル。そう、古巣クラブである。巡り合わせという言葉を思い浮かべずにはいられないが、大南はこの試合に、「本当に楽しみです」と笑顔を見せた。

■井原監督への感謝

 大南が柏に在籍したのは2020年から2022年までで、この間にリーグ戦77試合に出ている。これは、現時点でのJ1出場数の6割近くで、ここで実績を残したからこそ、E-1サッカー選手権2022でサッカー日本代表メンバーにも選出。カシマスタジアムでの香港戦で日の丸のユニフォームに袖を通しての初出場を果たした。

 そんな古巣クラブを相手にすることについて、「絶対に負けたくない」と語気を強める大南は、「知ってる人や一緒にやってきた人が多いので、自分の特徴をみんな知ってるけど、こっちとしても相手の特徴をよく知ってるので、そういうところでも楽しみ」と心情を説明する。そして、「でも、割と楽しみながらやれるタイプなので、だから古巣は楽しみです」と頼もしさをも見せた。

 柏を率いる井原正巳監督は、柏在籍時代にコーチだった。「すごい優しいし、でもやっぱ守備の人なので、教えてきてもらったものが多い。本当、要所要所でいろんなことを的確に教えてくれるのですごいありがたかったですし、実績ある選手だったから説得力もあった。本当に楽しみ」と振り返る。そして、“アジアの壁”の異名を持つ指揮官に「成長した姿を見せたい」とも加えた。

■家長&遠野との現地観戦で得た刺激

 タイトルを取りたいという言葉を何度も口にしていることはすでに書いたが、その気持ちを強めたのが11月4日に行われたルヴァンカップ決勝の現地観戦だった。国立競技場で行われたアビスパ福岡浦和レッズのタイトルマッチに、家長昭博遠野大弥と3人で駆け付けた。福岡DF奈良竜樹のユニフォームを着用した家長と並んで座ると、PKの場面などで気持ちを高揚させるなど、サポーター目線で観た。遠野は、試合後に3人で食べた韓国料理店でもさまざまな話で盛り上がったと話していたから、大きな刺激になったことは間違いない。

 大南自身、福岡の初戴冠を「現地で見て、タイトルを獲りたいっていう気持ちがより強くなって、そういうチャンスってなかなかない中でそこに自分がいるので、そのチャンスを掴みたい」と話す。

 現時点で、大南は天皇杯決勝において最終ラインでスターティングメンバーに名を連ねる有力候補である。しかし、今季開幕戦のキックオフはベンチで迎えた。シーズン当初、大南にとっての目の前の目標はポジション争いで勝つことだった。谷口彰悟が抜けたとはいえ、ジェジエウ車屋紳太郎が控えるCBの壁は高く、右SBでは絶対的存在と言っていい山根視来もいた。

 そんなポジション争いについて、最終節を残した時点で大南本人に聞くと、「本当のポジション争いっていうのはしてない」という意外な言葉が返ってきた――。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)

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