10月3~9日、タイ・バンコクで開催された車いすバスケットボールの女子U25世界選手権。日本は8位という結果だったものの、共同キャプテンの江口侑里(2.5)がオールスター5を受賞するなど、大会を通して躍進を遂げた選手は少なくなかった。今回は…

10月3~9日、タイ・バンコクで開催された車いすバスケットボールの女子U25世界選手権。日本は8位という結果だったものの、共同キャプテンの江口侑里(2.5)がオールスター5を受賞するなど、大会を通して躍進を遂げた選手は少なくなかった。今回は、そのうちの6人を紹介したい。

それぞれの実力を発揮したU25女子日本代表

存在感を示したキャプテン&ハイポインター

まずは共同キャプテンを務め、プレーでもチームをけん引した江口と畠山萌(4.0)だ。江口は7試合中4試合、畠山も3試合で2ケタ得点をマーク。7試合の総合得点でも、江口がチームトップの82得点、畠山も同3位の51得点。さらにリバウンドでは3試合で2ケタ、ブロック部門でもランキング2位タイを誇った江口は、オールスター5に輝いた。5位ドイツ、6位カナダ、7位タイと日本よりも上位だったチームから個人賞がなかったことを考えれば、それだけ江口の実力が認められたという証でもある。

世界にひけを取らない高さが武器の江口侑里

すでに江口は昨年から女子ハイパフォーマンス強化指定選手入りし、今年の世界選手権にも出場とA代表でも経験を積んでいる。海外とも十分に勝負できる高さを武器に、今後さらなる活躍が期待される。一方、今大会後の去就については「終わった時の気持ちで考えたい」としていた畠山も「この大会での経験を糧に活躍できる選手になって、いつか侑里と一緒にパラリンピックに出場したい」と意欲的だ。

主力として活躍し、得点源の一人となった畠山萌

畠山とただ2人のハイポインターとして多くのプレータイムを誇った郡司渚名(4.0)は、唯一3試合で40分フル出場するなど、代えが効かない選手の一人として活躍。特にスピードに関しては十分に世界に通用することを示した。そのスピードを生かしてディフェンスでは味方がプレスブレイクされた相手に追いつき、何度もシュートを阻止した。さらにスチールは7試合で28を数え、出場10カ国の中でランキングトップを誇った。競技歴1年半というから、脅威的な成長スピードだ。


初の国際試合で存在感を示した郡司渚名

エースの風格を漂わせたチーム最年少の小島瑠莉

そして4年後の次回大会にも出場のチャンスがあるのが、中学3年の小島瑠莉(2.5)、高校2年の西村葵(1.5)、そして現役大学生の増田汐里(2.5)だ。この3人の活躍も目覚ましかった。

まず得点力を発揮したのが、チーム最年少の小島だ。7試合中2試合でチーム最多得点を挙げ、なかでもグループリーグ第2戦のカナダ戦では、21得点、フィールドゴール成功率も62.5%を誇った。さらに3ポイントシュート部門ランキングでは堂々のトップタイ(5本)、アシスト部門でもチームトップ、ランキングでも3位とポイントガードとしての潜在能力の高さをうかがわせた。


15歳にしてチームの中心だった小島瑠莉

また最も闘争心をむき出しにしていたのが、小島だろう。例えばカナダ戦は大敗を喫した初戦から2時間後という難しい一戦だった。だが「ゲームが始まる時に“この試合は勝つぞ!”と一番に飛び出していったのが瑠莉」と添田智恵HCも頼もしさを感じていたというから、チーム最年少ながら気持ちの面でもチームをけん引した一人だったに違いない。

そのほかの試合でも、率先してスローガンである“とびきりスマイル”をチームメイトに呼びかけていた小島。「ふだんのチームだと先輩たちが引っ張っていってくれるけど、U25では一人ひとりがリーダーシップをとらないといけなかったことが一番大きかったのかな」と、自身でもいつもとの意識の違いを感じていた。

献身的なプレーでチームを支え続けた西村と増田

一方、西村と増田はスタッツ上では目立たないが、2人の献身的なプレーがチームに大きな力をもたらしたことは間違いない。小島とともに今年度に新加入した西村は、グループリーグの全4試合でスタメンに抜擢。クラスが上がった準々決勝からは同じラインナップを組むことができずにベンチスタートとなったものの、そのプレーには波がなく、とても国際大会デビューとは思えないほど安定感があった。カナダ戦では37分以上出場するなど、グループリーグ4試合ではプレータイムも多かったなか、7試合の平均ターンオーバーが1.0とチームの中で最少タイを誇ったことからも、その安定感がわかる。指揮官からの信頼も厚かったに違いない。


プレーに波がなく、安定感が光った西村葵

そして増田に関して印象的だったのは、スピードだ。他国とのスピード勝負にも決して競り負けていなかった。例えばハイポインター不在での戦いを余儀なくされたカナダ戦で最後まで競り合うことができた要因には、増田の存在を欠かすことはできなかっただろう。パワーこそまだないが、ハイポインターに対しても粘り強く相手が嫌がるディフェンスをしていたのだ。


スピードを武器に体格の大きい選手にくらいついた増田汐里

増田自身も「体が大きくてパワーのある選手も止めることができたので、すごく自信になった」と手応えを口にした。周囲からの評価も高く、添田HCは「決して器用ではないしパワーもないけれど、言われたことをしっかりと遂行する選手」と語り、女子ハイパフォーマンスディレクターの橘香織氏も「今大会で最も驚かせてくれた選手」とその成長ぶりに目を見張った。

その3人に4年後について聞くと、まずは西村が「みんなでまた出場して、今度こそメダルを取ろう!」と口火を切った。すると「当たり前!」という小島の強気の姿勢に「金メダルだね!」と西村。さらに「今回の課題をクリアした姿を、この舞台で見せて、全員で金メダルを取ります!」という小島の宣言に、増田も「4年後また3人全員が代表に選ばれて、金メダルを目指して頑張ります!」と力強く語った。3人が4年後はどんな成長した姿を見せてくれるのか、楽しみだ。