■優勝が懸かった大一番を前に、午後9時まで室内練習場で打撃修正に取り組んだ 慶大は30日、東京六大学野球秋季リーグの早大…
■優勝が懸かった大一番を前に、午後9時まで室内練習場で打撃修正に取り組んだ
慶大は30日、東京六大学野球秋季リーグの早大3回戦に5-3で勝ち、2021年秋季以来4季ぶり通算40回目の優勝を、勝ち点5の完全優勝で飾った。“勝った方が優勝”の大一番で、ソフトバンクからドラフト3位指名された主将・廣瀬隆太内野手(4年)が値千金の先制2ラン。4年生が入学した2020年から指揮を執っている堀井哲也監督の「選手を信じ切る采配」が結実した。
廣瀬の先制弾は自身通算20本目のアーチで、リーグ歴代4位の早大・岡田彰布氏(現阪神監督)に並んだ。「偉大な方と肩を並べられて光栄です。自分も岡田監督のような活躍ができるように頑張りたいです」と唇を綻ばせたが、今季は打撃不振にあえいでいた。試合前の時点で打率.235(51打数12安打)。持ち味の本塁打も、9月23日の法大1回戦で放った1本打ったきりだった。
両チーム無得点で迎えた3回無死一塁で、その廣瀬が打席に入った。後ろには今季、史上17人目の3冠王に輝いた4番・栗林泰三外野手(4年)が控えている。普通の打者なら、送りバントのサインが出てもおかしくない。しかも廣瀬は2日前の1回戦で、1点ビハインドの6回無死一塁で二ゴロ併殺に仕留められていた。しかし、堀井監督は「バントは全く考えませんでした。走者一塁でカウント3-2の時には、エンドランをかけることもあると廣瀬本人に言ってありますが、基本的に彼にサインはありません」と言い切った。

すると、廣瀬は早大のエース・加藤孝太郎投手(4年)の初球のストレートが真ん中に来たのを見逃さず、ひと振りで左翼席中段に放り込んだ。「加藤投手はコントロールがいいので、1試合に来るか来ないかの甘い球を1発で仕留めることができてよかったです」と謙虚に振り返った。
慶大打線は今季、リーグ断トツの打率.298を誇った。この春の同.251(リーグ4位)から5分近くも上げ、優勝の要因となった。堀井監督はここでも「廣瀬の存在が大きいと思います。侍ジャパンとしても活躍していますから、チーム内の同世代にそれくらいのレベルの選手がいると、自然に周りの選手も引っ張られます」と主将の名前を挙げる。実際、廣瀬は7月に敵地アメリカで行われた日米大学野球選手権に出場し、3勝2敗での優勝に貢献していた。
だからこそ、廣瀬のバットが湿っていても、堀井監督は「いろいろ経験をしてきている選手なので、僕らがとやかく言うより、自分で乗り越えなければならない局面に来ていると思いました。たまには声をかけましたが、あまり邪魔をしないように見守っていた感じです」と、あえて“待ち”の姿勢を取った。

一方、廣瀬自身は不振の原因を「マークが厳しく甘い球がなかなか来ない中で、いろいろな球に手を出してしまっていた」と分析。「早稲田とは3戦目なので、相手投手の攻め方がわかってきていました。インコースを見せられて体が開いてしまっていたので、昨日の午後9時頃まで室内練習場で打ち込み、修正しました」と明かす。
主将の復活で勢いに乗った慶大は、1点を返された直後の7回にも3点を挙げて突き放し、4季ぶりの天皇杯に漕ぎつけたのだった。
この夏の甲子園では神奈川・慶応高が107年ぶりの全国制覇を果たした。それに続いた格好だが、廣瀬は試合後の会見で「高校は日本一ですが、僕らはまだリーグ優勝。なめられていると思うので、日本一になりたいと思います」と笑いを誘った。11月18日には、全国の強豪が揃う「明治神宮野球大会」の初戦に臨む。“慶応イヤー”はまだ終わらない。
(Full-Count 宮脇広久)