慶大は29日、東京六大学野球秋季リーグの早大2回戦に4-0で勝利。度胸満点の1年生右腕と、前日の雪辱に燃える4年生のリ…

 慶大は29日、東京六大学野球秋季リーグの早大2回戦に4-0で勝利。度胸満点の1年生右腕と、前日の雪辱に燃える4年生のリレーで早大打線を零封した。“勝ち点を取った方が優勝”の状況で激突した宿敵同士の対戦は、1勝1敗のタイとなり、30日の3回戦で決着をつけることになった。

 ただでさえ伝統の早慶戦は多くの観客が詰めかけ、独特の雰囲気に包まれる。しかも慶大は、前日の1回戦で早大に先勝を許し崖っぷち。それでも堀井哲也監督は、先発投手に1年生の竹内丈を敢然と指名した。「竹内はシーズン後半に先発としてしっかり試合をつくってきてくれましたから、期待を込めて送り出しました。学年は関係ない。状態がいい投手は誰なのか、何が一番ベストなのかを、(中根慎一郎)助監督と相談して決めました」と説明。「200点の出来だったと思います」と絶賛した。

 神奈川・桐蔭学園高時代には甲子園出場を果たせなかった竹内だが、慶大進学後は今年の春の早大2回戦で早々とリーグ戦デビュー。15-1の大量リードで迎えた9回の1イニングだけだったが、3者凡退で片づけた。そしてこの秋、当初はリリーフで好投を続け、1勝1敗1分で4回戦にもつれ込んだ法大戦の先発を任されると、4回途中1失点(自責点0)で勝利に貢献。今月15日の明大2回戦にも先発し、打線の援護がなく敗戦投手になったものの、4回2安打1失点に抑え評価を上げていた。

伝統の一戦で試合を作った慶大・竹内【写真:中戸川知世】

 今季リーグ戦最多の2万8000人の観衆を前にしても、竹内は「4年生と1日でも長く野球をしたいという思いだけで投げました。負けたら終わりだとか、ネガティブな感情はなかったです」と言い切る。前日の1回戦に先発し7回1失点に抑えた外丸東眞投手(2年)から「大歓声はどういう感じで響いてくるかや、早稲田さんの打者の印象、メンタルの保ち方などを、昨日の夜も今日の朝も共有していただきました」と明かした。

 ストレートのスピードは速い方ではないが、変化球をまじえ、さらに投球フォームにもクイックモーションを挟んで緩急をつける。2点リードの4回、相手の4番・印出太一捕手(4年)を迎えると、初球に98キロのカーブでストライクを取り、2球目にはもっと遅いスローカーブが外れてボール。3球目に一転、クイックモーションでストレートを投じ、タイミングを外して二ゴロに仕留めた。「いい打者なので、同じ球を2球続けると持っていかれると思い、(2球目には)リーグ戦で投げるのは初めての、もうひと回り遅いカーブを投げました」と、してやったりの表情を浮かべた。

 初々しい1年生はリーグ戦自己最多の89球を投げ、6回3安打無失点で降板。堀井監督は「竹内に実績があれば、もうひと山越えさせるのですが、1年生ですから4年生に託すことにしました」と、2点リードの7回から谷村然投手(4年)にスイッチした。

前日の悔しさを晴らした慶大・谷村【写真:中戸川知世】

 谷村自身、竹内が台頭するまでは2回戦の先発を担っていた投手である。しかし前日の1回戦では、1点リードの9回に登板し、4安打1四球で1死も取れないまま、痛恨の2失点で逆転サヨナラ負けを喫していた。その試合後、堀井監督はナインの前で「ここまで何試合も谷村で勝ってきた」とかばい、「あの異様な雰囲気の中で1点を守り切るのは酷だった。谷村の本来の力はこんなものではない。2回戦もチャンスがあれば投げさせる」と心に決めていたと言う。

 谷村はリードが4点に広がった8回、2死二、三塁のピンチがあったが、代打・岡西佑弥内野手(1年)をカウント1-2から、外角低めのカーブで空振り三振に斬って取った。その瞬間、谷村は思わず歓喜の雄たけびを上げ、ボールをミットに収めた宮崎恭輔捕手(4年)もガッツポーズを繰り出していた。結局、2人のリレーで早大に最後までホームを踏ませなかった。

 天皇杯の行方は、30日の3回戦次第となったが、追いついた側の慶大のムードは最高潮。堀井監督は「そういう舞台でやれることに、選手と一緒に感謝して挑みたい。結果よりも、自分たちの力をしっかり出し切りたいと思います」とうなずいた。今夏の甲子園で107年ぶりの全国制覇を果たした神奈川・慶応高に続き、“慶応の年”として締めくくれるだろうか。

(Full-Count 宮脇広久)