大分市で開催される自転車の総合イベント「OITAサイクルフェス!!!2023」の2日目は、大分スポーツ公園とその周辺へと会場を移し、ロードレース「おおいたアーバンクラシック」が開催された。UCI(世界自転車競技連合)公認のレースで1-2とい…

大分市で開催される自転車の総合イベント「OITAサイクルフェス!!!2023」の2日目は、大分スポーツ公園とその周辺へと会場を移し、ロードレース「おおいたアーバンクラシック」が開催された。UCI(世界自転車競技連合)公認のレースで1-2というカテゴリーに分類されるワンディレースだ。住宅街の公道を使うレースだが、開催回数を重ね、大分市民の間にもすっかり定着した感がある。

※おおいた いこいのみちクリテリウムのレポートはこちら

スタート・ゴールは大分スポーツ公園内に立地する「レゾナックドーム大分(本年より名称変更)」前に設定された。ここから大分スポーツ公園周辺の公道に設定された1周11.6kmのコースを使用して行われる。
コースは、丘陵地帯に広がる閑静な住宅街を駆け抜ける。激坂などはないが、地形に応じた短いアップダウンの繰り返し。コース幅が急激に変化したり、コーナーが連続したりと、減速と加速を強いられるポイントが点在するため、選手たちはその度に減速と加速とを繰り返し、周回を重ねるごとにじわじわと脚力を奪われていく。コースマップから受ける印象よりも、タフなコースである。このコースを13周する150.8kmの設定で競われる。



コース内には、複数のコーナー、アップダウン、道幅の変化があり、選手を苦しめる

前日の雨の影響で、一部はまだ路面が濡れていたようだが、選手がスタートする頃には青空が広がり、暦の上では10月でありながら、夏を思わせる陽気となった。そして、スパークルおおいたレーシングチームを先頭に、レースがスタート。



晴天の下、レースが始まった

スタートからアタックの応酬が続くが、5周を経た頃、ついに動きが生まれ、21名の集団が形成された。



レースはアタックが続く不安定な状態のまま推移した



先頭集団が形成された

メンバーには、力のある選手が揃っていた。特に、ゴール勝負にも強いライアン・カバナ、2019年度の勝者ドリュー・モレ、全日本タイトルも保有する山本元喜の3名を送り込んだキナンレーシングチームと、ツール・ド・フランスで総合4位の経験も持つベテランのフランシスコ・マンセボ、Jプロツアーで何回も総合優勝をしてきたホセ・ビセンテ・トリビオ、スプリント力にも優れるゲオルギス・バグラスの3名を送り込んだマトリックスパワータグにとって、非常に有利な展開となった。



アップダウンの多いコースが次第に選手たちを消耗させていく

世界最高峰のチームの育成チームであるEFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチームやトレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム、シマノレーシング、宇都宮ブリッツェンからも複数名が入っている。
人数が多く、思惑も多々であるが、後続集団との差は40秒前後まで広がった。6周目に入るころ、危機感を感じたチームを中心に構成された11名の追走集団が形成され、この中の5名が先頭集団に合流を遂げた。



好ペースを刻む先頭集団

さらに脱落者が出て、先頭集団は24名となった。メイン集団は先頭に多くの有力選手を送り込んだ後であり、牽引するモチベーションと、牽引力とを有するチームが少なく、ペースアップが叶わない。集団との差は4分以上まで広がり、先頭集団の逃げ切りは決定的となった。

この大きすぎる先頭集団から、ライアン・カバナがアタック。ケイン・リチャード(ARAスキップ・キャピタル)が追い、カバナとリチャードの2名が先行する。明らかに危険な動きであるが、残された集団からはペースアップも、追走集団の形成の動きもまとまらず、11周目には1分まで差が開いてしまった。
ラスト2周となり、しびれを切らせたマンセボ、一昨年までワールドチームに所属していたベンジャミン・ダイボール、カーター・ベトルス、(以上ヴィクトワール広島)と、先行するチームメイトのために、この動きを放置できないドリュー・モレが追走集団を形成。ペースアップを試みながら、先頭2名を追った。



先行する2名に向け追走の動きが生まれる



フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)らが先行する2名を追ったが、届くことはなかった

しかし、先行する2名は好ペースを刻み、差が縮まらない。追走は届かない見込みとなり、優勝は2名の間で決されることとなった。先行する2名の間でも、ついに駆け引きが始まった。カバナがアタックし、リチャードを振り払おうとするが、リチャードもカバナに食らいつく。
最終周回に入っても2人の体制は崩れず、この二人のスプリント勝負となることが予想された。前に立つリチャードが後ろにつくカバナの様子を伺いながら、牽制状態が続く。ラスト1kmを通過。最初に仕掛けたのは、カバナだった。ラスト500mの登りで仕掛け、ぐんぐんと加速。リチャードはこの加速に応じることができず、カバナは差を引き離しながら、勝利を確信、自信に満ちた表情でフィニッシュエリアへと突入した。
カバナは、喜びを爆発させるように、何度も何度もガッツポーズをしながら、フィニッシュラインを越えた。



ガッツポーズでフィニッシュするライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)

モレは追走組の先頭でフィニッシュし、3位の座を確保した。



優勝したカバナ、2位のケイン・リチャード(ARAスキップ・キャピタル)、3位のドリュー・モレ(キナンレーシングチーム)、アジア最優秀選手賞の石原悠希(シマノレーシング)とU23最優秀選手賞の留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)

ライアンは「コースは正直、タフで疲れたけれど、優勝できて嬉しい」と笑顔で語った。「序盤が非常に速く、厳しかったが、前方にいるように心がけ、打ってきた手が、功を奏した」と振り返る。終盤はリチャードと協力しながらフィニッシュを目指し、うまく勝利することができたという。応援してくれたファンへの感謝を語り、インタビューを締めくくった。

多くの観衆が足を運び、非常に華やかなイベントとなった今年の「OITAサイクルフェス!!!2023」。この後には、今年初開催となるUCI認定のステージレース「ツール・ド・九州」が控えており、最終ステージは大分県内に設定されていた。九州、そして大分の盛り上がりを感じられる大会となった。

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【結果】
おおいたアーバンクラシック(150.8km)

1位/ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)3時間21分39秒
2位/ケイン・リチャード(ARAスキップ・キャピタル)+2秒
3位/ドリュー・モレ(キナンレーシングチーム)+41秒
4位/フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)+42秒
5位/ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)

【アジア最優秀選手賞】
石原悠希(シマノレーシング、日本)

【U23最優秀選手賞】
留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム、日本)

画像提供:OITAサイクルフェス実行委員会