今週、三カ国で開催されるセントラルヨーロピアンラリーを迎え、またひとつ新たな歴史を刻む。 これまで国境を越えて開催されたWRCはあったが、セントラルヨーロピアンラリーは、拠点のドイツに加え、チェコ、オーストリアと、一イベントで3カ国にステ…

今週、三カ国で開催されるセントラルヨーロピアンラリーを迎え、またひとつ新たな歴史を刻む。

これまで国境を越えて開催されたWRCはあったが、セントラルヨーロピアンラリーは、拠点のドイツに加え、チェコ、オーストリアと、一イベントで3カ国にステージが設定される。さらに、チェコではこれまでWRCが開催されたことはなく、この点でも初の試みとなる。

この革新的なイベントは、オーストリア・モータースポーツ連盟(AMF)、チェコ共和国オートクラブ(ACCR)、ドイツ自動車クラブ(ADAC)の協力関係により実現した。このイベントには、4100人以上のボランティアが参加しており、自らの時間を捧げてモータースポーツイベントを支える人々の重要性を強調するものだ。

イベントは、この地域で長く開催されてきた3シティラリーがベースとなっており、オールターマックのルートは、多くのWRCドライバーやチームにとって新しい経験となる。天候が変わりやすくなることが予想されているセントラルヨーロピアンは、コンペティターにとっても非常にチャレンジングなラリーとなりそうだ。

前戦チリまでグラベルラリーが7戦続いてきた今季のWRCは、残り2戦はターマックラリーに挑むことになる。チリではトヨタがマニュファクチャラーズ選手権タイトルを確定させたが、ドライバーズ、コ・ドライバーズ選手権は、まだ戦いが続いている。ディフェンディングチャンピオンのカッレ・ロバンペラは、現在31ポイントのリードを築いてランキング首位に立っており、2番手にはチームメイトのエルフィン・エバンスが続いている。現在、タイトルの可能性を残しているのは、このトヨタ勢のふたりのみだ。残り2戦で獲得可能なポイントは60ポイントとなっている。また、WRC2もまだタイトルが決まっていない。

■ラリー1マシン勢エントリー状況
トヨタ・ガズーレーシングWRT: チリでマニュファクチャラーズ選手権タイトル獲得を決めたトヨタは、セントラルヨーロピアンには4台のトヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッドをエントリー。ロバンペラ、エバンスに加え、セバスチャン・オジエを起用する。勝田貴元は、4台目のGRヤリス・ラリー1ハイブリッドをドライブする。

ヒョンデ・シェル・モビスWRT: ドイツを拠点とするチームから参戦するドイツ語を話すベルギー出身のティエリー・ヌービルにとって、セントラルヨーロピアンは今季、最も母国に近いラリー。今季はここまで7回ポディウムに上がり、前戦チリでは2位に入っている。テーム・スニネンは、チリではヒョンデからの参戦で初めてポディウムに上がるまであと2ステージというところで悔しいクラッシュを喫しており、セントラルヨーロピアンでは立て直しを図りたいところ。そのチリでは、最初のステージでクラッシュを喫したエサペッカ・ラッピも、同様に流れを変えていく構えだ。

Mスポーツ・フォードWRT: オィット・タナックは、チリで今季2勝目をマークした勢いでセントラルヨーロピアンを迎える。ピエール‐ルイ・ルーベは、チリではクラッシュでラリーを終えており、気持ちを切り替えてセントラルヨーロピアンに臨む。チリで初めてラリー1マシンでの参戦を果たしたグレゴワール・ミュンステールは、プーマ・ハイブリッド・ラリー1での初めてのターマック戦に挑む。

■サポートカテゴリーエントリー状況
アドリアン・フルモー(M-スポーツ・フォードWRT、フィエスタ・ラリー2)を除くFIA WRC2選手権のランキング上位9台は、このセントラルヨーロピアンラリーを、選手権ポイント対象のイベントとしてノミネートしている。

現在選手権トップのアンドレアス・ミケルセン(トクスポーツWRT3、シュコダ・ファビアRSラリー2)は、ヨアン・ロッセル(PHスポール、シトロエンC3ラリー2)を4ポイントリード。ミケルセンのチームメイト、ガス・グリーンスミスはさらに5ポイント離れている。チェコからは、若手のエリック・カイスとアダム・ブレジックがエントリー。チェコタイトルを3回獲得しているオーストリアのサイモン・ワグナー、ヨハネス・ケッフェルボックはWRCマスターズカップにエントリーしている。ドイツからは、アーミン・クレマー、アルベルト・フォン・トルン・ウント・タクシーが登場する。今季のWRC3タイトルを決めているルーペ・コルホネンは、セントラルヨーロピアンラリーにはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoで参戦し、ラリー2マシンでの経験を積む。チェコのフィリップ・コーン、ドイツのファビオ・シュバルツは、フォード・フィエスタ・ラリー3でWRC3にエントリーする。

■ラリールート





ドイツ南部のパッサウを拠点とするルートは、10月26日木曜日は、北上してチェコの首都プラハでセレモニアルスタートと、競馬場のチュケーレ・アリーナで行われるスーパーSSを走行。その後、ドイツに戻り、日没後に8.92kmのSSS Circuit of Klatovyを走行する。

金曜日は再びチェコで3SSを2ループ。この日は日中サービスの設定がなく、ボヘミア南部のプラチャティスでのタイヤフィッティングゾーンがあるのみだ。夜、パッサウのサービスに戻るまで、121.80kmのステージを走破しなくてはならず、タフな一日となりそうだ。

土曜日は、オーストリアでSchardinger Innviertel、Muhltalの2本を走行。Muhltalは27.15kmとイベントの最長ステージだ。その後、ドイツに戻り、Knaus Tabbert Bayerischer Waldを走行して日中サービスに入る。午後はこの3本を再び走行。3本目は、日没後の走行となる。

最終日は、オーストリアのBohmerwaldと、ドイツのPassauer Landを2回ずつ走行する67.24km。Passauer Landの2回目はパワーステージに指定されている。ポディウムセレモニーは、パッサウの中心地、ドナウ川とイン川とイルツ川が合流する背景の中で行われる。

■ラリーデータ
開催日:2023年10月26日〜29日
サービスパーク設置場所:パッサウ(ドイツ)
総走行距離:1690.70km
総ステージ走行距離:310.01km(SS比率18.3%)
総SS数:18

■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3

■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
カッレ・ロバンペラ(#69)
エルフィン・エバンス(#33)
セバスチャン・オジエ(#17)

[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#11)
エサペッカ・ラッピ(#4)
テーム・スニネン(#3)

[Mスポーツ・フォードWRT]
オィット・タナック(#8)
ピエール・ルイ・ルーベ(#7)