チーム事情から見るドラフト戦略2023〜楽天編 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。各球団どのような戦略…

チーム事情から見るドラフト戦略2023〜楽天編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。各球団どのような戦略に出るのか。来季から今江敏晃新監督を迎え、新たなスタートを切る楽天がドラフトで狙いたい選手は?



最速155キロを誇る中央大・西舘勇陽 photo by Ohtomo Yoshiyuki

【上位は即戦力投手】

 70勝71敗2分で、あと1勝すれば勝率5割だったとはいえ、首位・オリックスに17ゲーム差をつけられての4位。本塁打数、盗塁数はリーグ1位でも、556失点はリーグワースト。

 いいんだか、悪いんだか......よくわからない結果に終わった楽天だが、リードオフマンで奮闘した小深田大翔が盗塁王(36盗塁)を獲得し、新外国人のマイケル・フランコ(打率.221、12本塁打)以外はほぼ日本人という "和製戦力"だったことを考えれば、健闘したシーズンだったのではないか。

 ただ、チーム防御率3.52はリーグワースト。石井一久監督に代わり来季から指揮を執る今江敏晃監督の采配に注目だが、育成もファームも指導してきただけに、そのポテンシャルをしっかり把握している若手を積極的に起用し、オリックス・中嶋聡監督ばりのチーム改革を行なうのではないかと密かに期待している。

 実際、今の楽天に人材はいる。ファームの先発ローテーション投手として6勝4敗、防御率2.59の成績を挙げた松井友飛。190センチ、87キロの雄大な体躯から豪快に投げ下ろして、制球力の安定感もピカイチ。育成5年目の清宮虎多朗もファームながら22セーブをマーク。

 野手でも、ファームで104安打、打率.307、5本塁打をマークした黒川史陽の打撃センスは入団当初から折り紙つきで、ルーキーの辰見鴻之介は盗塁成功率.772(17盗塁)を誇る快足ランナーだ。

 とはいえ、チーム防御率を立て直し、失点を防いでいかないと何点とっても追いつかない。今年のドラフト上位は即戦力の投手でいきたい。

 競合必至の常廣羽也斗(青山学院大/180センチ・76キロ/右投右打)、武内夏暉(国学院大/185センチ・90キロ/左投左打)の獲得に挑むもよし、花巻東高出身の西舘勇陽(中央大/185センチ・79キロ/右投右打)も競合の可能性はあるが、上記のふたりよりは競争率が低いのではないだろうか。

 西舘は、タテのスライダー、高速フォークなど、空振りがとれる変化球をいくつも持っているのが大きなアドバンテージで、立ち上がりから150キロをクリアするパワーもあるが、本質的には「本格派変化球投手」だ。

 来季はレギュラー捕手の期待がかかる太田光と同じ広陵高→大阪商業大という直系の後輩が、ドラフト上位候補に挙がっている。高太一(180センチ・80キロ/左投左打)のクロスファイアーは、守護神・松井裕樹のそれと軌道が重なるほどの鋭さを持つ。カーブもフォークも一級品なのに、根が真面目だから1本打たれただけでグラッときてしまうあたりは課題だが、そこは先輩から喝を! 自分を信じられるようになったら、左のエースになれる高い潜在能力を持っている。

【無名の実力派投手】

 無名でも、実力派の投手なら何人でもほしい。

 同期にも下級生にもドラフト候補が目白押しだからあまり目立たないが、蒔田稔(明治大/178センチ・85キロ/右投右打)のタフな心身と145キロの前後の強烈なストレートはプロでも十分に通用する代物だ。

 巨漢でも低めのゾーンを使えるピッチングを身上とする赤塚健利(中京学院大/195センチ・112キロ/右投右打)は、アベレージ140キロ台後半の剛球がバットを粉砕する。

 炭谷銀仁朗が退団し、やや手薄になりそうな"捕手"は社会人から獲得しておきたい。

 春に5打席連続ホームランという離れ業をやってのけた城野達哉(西濃運輸/179センチ・84キロ/右投左打)の話題は"豪打"かもしれないが、実際はスローイング能力の高い守れる捕手である。大学・社会人に実力派捕手の少ない今年のドラフト。順位を上げてでも獲っておきたい選手になるかもしれない。

 地元・仙台には、打てる遊撃手になれる可能性を秘める山田脩也(仙台育英高/177センチ・72キロ/右投右打)がいるが、ファームでじわじわと実力をつけている3年目の入江大樹が仙台育英のOBとあっては、ちょっと獲りづらいか......。ならば、九州に百崎蒼生(東海大熊本星翔高/178センチ・75キロ/右投右打)という打てる遊撃手がいるが、下位で獲れる選手ではないだろう。

 大学に人材豊富な投手が居並ぶが、その反面、例年に比べて野手がやや手薄な今年のドラフト。チームにとって本当に必要な人材は誰なのか。いつも以上に各チームの思惑が鮮明になるドラフトになりそうだ。