チーム事情から見るドラフト戦略2023〜オリックス編 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団ど…

チーム事情から見るドラフト戦略2023〜オリックス編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。今年は2位に15.5ゲーム差をつける圧勝でリーグ3連覇を達成したオリックス。"常勝・オリックス"がさらなる強化を求めて獲得すべき選手は?



最速155キロを誇る青山学院大の下村海翔

【超強力投手陣にさらなる上積み】

 磐石の投手陣というのは、こういうことか。おもな先発陣の成績を見てみたい。

山本由伸=16勝6敗/防御率1.21
山崎福也=11勝5敗/防御率3.25
宮城大弥=10勝4敗/防御率2.27
山下舜平大=9勝3敗/防御率1.61
田嶋大樹=6勝4敗/防御率3.09
東晃平=6勝0敗/防御率2.06

 中継ぎ陣には、阿部翔太、宇田川優希、小木田敦也、山崎颯一郎といった速球派が揃い、守護神の平野佳寿が締める。さらにシーズン途中から山岡泰輔もリリーフに回り、さらなる厚みを増した。

 今季のオリックス投手陣を振り返ると、昨シーズン5勝の山崎が11勝したことも大きかったが、夏場あたりからグングン頭角を現し、先発で6勝を挙げた東の存在も、独走Vの立役者になったことは間違いない。

 それにしても、東を若手だと思っていたら、今季6年目の23歳。本人もあきらめずによく頑張ったが、チームもここまでよく辛抱したと思う。東の台頭の兆しをチームがしっかり把握していたことが、オリックスのすごさであり、強さなのだろう。

 開幕前、昨年までオリックス打線の絶対的存在であった吉田正尚がメジャーに移籍し、リーグ3連覇を不安視する声があった。それでもFA加入の森友哉(打率.294、18本塁打、64打点)をはじめ、それぞれがカバーして、ファンに喪失感を抱かせなかったのは立派というしかない。

 そんなオリックスのドラフトだが、磐石の投手陣にさらに新たな頼もしい血を注入したい。リーグ優勝して、ウェーバーとなる2位指名の順序は最後。それだけに1位はなんとか単独指名でいきたいところだ。

 下村海翔(青山学院大/174センチ・75キロ/右投右打)は、12球団のスカウトすべてがその実力を認めているが、いきなり1位に持っていくにはちょっと小粒か......。そんな理由で他球団が躊躇してくれたらしめたもの。これだけ大型投手が居並ぶ年は、どうしてもサイズのある選手になびく。しかし、来季の頭からすぐ戦力になれるとしたら、欠点がなく、技術とパワー、そして気迫があるこの「桑田真澄2世」ではないか。

 今や育成に絶対の自信を持つオリックスなら、前田悠伍(大阪桐蔭高/180センチ・77キロ/左投左打)の1位も指名もありかと思うが、阪神と競合する可能性があるので、下村の一本釣りを狙いたい。

【見逃せない社会人の実力派たち】

 オリックスの戦力に不足している部分があるとすれば、盗塁できる快足の二塁手か外野手だ。チーム盗塁数52はリーグ最少で、より攻撃の幅を広げるためにも足が使える選手を獲得しておきたい。

 今年のドラフト候補のなかで、快足の二塁手は見当たらないが、外野手ならいる。

 宮崎一樹(山梨学院大/184センチ・84キロ/右投右打)を2位で指名したい。学生ジャパンの選考合宿でメンバー最速のタイムをマーク。走れる右打ちの強肩外野手は、宮崎以外に見当たらず、上位指名でなければ社会人チームに入るという話も聞こえており、ここは2位で獲っておきたい。

 戦力に余裕がある時に、将来性豊かな高校生を獲得する。3位、4位は将来のオリックスの中心選手になる逸材だ。

 投手なら、東松快征(享栄高/177センチ・90キロ/左投左打)、日當直喜(東海大菅生高/190センチ・95キロ/右投右打)、坂井陽翔(滝川二高/186センチ・83キロ/右投右打)の3人が候補に挙がる。

 東松は木製バットなら粉砕能力抜群の重いストレート、日當はフォークのバリエーション、坂井は140キロ代後半のストレートとスライダー、フォークのコンビネーションがある。順調に育てば、ローテーション入りはもちろん、2ケタも狙える逸材たちだ。

 オリックスと言えば、阿部、小木田、西野真弘、小田裕也、そして杉本裕太郎......と社会人野球の実力者を下位で指名し、貴重な戦力にしてきたのが"誇るべき伝統"であろう。

 今年のドラフトも大学生ばかりに目を奪われていると、プロに最も近いレベルで腕を磨いていた実力派社会人を見逃すことになる。

 一級品のコントロールと軌道が見極められないチェンジアップを軸にした緩急で凡打の山を築く藤村哲之(東芝/180センチ・88キロ/左投左打)。内野手では鉄壁のディフェンス力を誇る相羽寛太(ヤマハ/178センチ・77キロ/右投右打)が、遊撃手・紅林弘太郎のバックアップ、いや強力なライバルになるのではないか。

 ちょっと待った! 走れて、守れて、元気いっぱい......常勝・オリックスにピッタリの強力ピースを忘れていた。

 藤井健平(NTT西日本/外野手/176センチ・76キロ/左投左打)のベースランニングのスピードと、猛烈な球際捕球の迫力と、プレーのバイタリティーは「人間ばなれ」している。この選手には、こういう表現しか当てはまらない。