日本代表が10月シリーズを終えた。新潟と神戸で、昨年のワールドカップ出場国を相手に連勝を飾ったのだ。新潟から神戸へ向か…
日本代表が10月シリーズを終えた。新潟と神戸で、昨年のワールドカップ出場国を相手に連勝を飾ったのだ。新潟から神戸へ向かう旅路は、蹴球放浪家・後藤健生に半世紀前の観戦旅行を思い出させた。1972年の日本代表を追う旅を…。
■興味を引かれたJ3の2試合
10月の日本代表の連戦では、13日の金曜日にカナダ戦観戦のために新潟に行った後、東京には戻らず、翌日、すぐに関西に移動しました。「関西で何か面白そうな試合をやっていないかなぁ?」と思って調べたところ、14日の土曜日には奈良クラブ対福島ユナイテッド、15日の日曜日にはFC大阪対FC岐阜という、J3リーグ第31節の試合がありました。
奈良クラブもFC大阪も、今シーズン、JFLから昇格したばかりのクラブですが、第30節終了時点で奈良が7位、大阪は6位と健闘しています(数字上、どちらもJ2昇格の可能性は残っています)。
奈良はスペイン・バルセロナ出身のフリアン・マリン・バサロという現在34歳の若い監督を迎えて独自のチーム強化を進めていますし、大阪は東大阪市にある花園ラグビー場の指定管理者に認定され、ラグビー場をホームスタジアムとして使用しており、どちらも興味深いクラブです。
花園ラグビー場は1929年に完成した関西におけるラグビーの聖地。現在は、リーグワンの近鉄花園ライナーズの本拠地であり、年末年始の高校ラグビーの舞台でもあります。2019年のラグビー・ワールドカップで使用するために全面改装されていますから、J3リーグとしては破格の豪華なスタジアムです(ただし、芝生がラグビー用なので、サッカーで使用するにはピッチコンディションに問題があります)。
ですから、どちらの試合も「ちょっと見に行ってみたいな」と思わせる試合だったのです。
■見ごたえある試合
花園ラグビー場がある東大阪市は生駒山脈を隔てて奈良県と接しています。そこで、僕は奈良市内に宿を取って、15日には近鉄奈良線で花園まで往復することにしました。ちょうど、奈良市の北隣、京都府精華町にある国立国会図書館関西館で調べたいこともあったので、16日の月曜日には図書館通い。そして、空いた時間には興福寺などを見物し、夜は大和の酒を堪能するという、素晴らしいスケジュールが完成しました。
今シーズンはJ3リーグのレベルアップが著しく、J3でも見ごたえのある試合が多くなりました。奈良クラブの試合もFC大阪の試合も1対1の引き分けでしたが、どちらも両チームのスタイルが際立ち、さまざまな駆け引きも見られて、面白い試合でした。トップの日本代表の強化だけではなく、日本のサッカー全体のレベルが上がっていることは間違いありません。
さて、こうして「生駒山脈越え」をしながら、僕は思い出しました。
大昔、僕が20歳の時にも生駒山脈を越えてサッカー観戦に行ったことがあったのです。
■バロンドール受賞者が来日
1972年の9月、ハンガリーのフェレンツバロシュが来日して日本代表と3試合を行いました。日本は前年のミュンヘン・オリンピック予選で敗退したため、岡野俊一郎監督が退任し、長沼健監督が復帰。1973年5月の西ドイツ・ワールドカップ予選と1976年のモントリオール・オリンピック予選を目標に再出発したところでした(結局、両予選とも敗退)。
この年は、1月にはウーヴェ・ゼーラーのハンブルガーSV(西ドイツ)、6月にはペレのサントス(ブラジル)が来日。そして、9月にはアルベルト・フロリアーン(アルベルトが姓)のいるフェレンツバロシュと、かなり豪華な顔ぶれが来日しています。アルベルトは、ハンガリー人唯一のバロンドール受賞者です。