元ソフトボール日本代表・長崎望未インタビュー 後編10月21日から開催される『第1回WBSC 女子U15ソフトボールワー…

元ソフトボール日本代表・長崎望未インタビュー 後編

10月21日から開催される『第1回WBSC 女子U15ソフトボールワールドカップ2023』。
初開催となるU15女子ワールドカップの開催地は、東京。2011年に新人ながらソフトボール日本リーグ(現・ニトリJDリーグ)で本塁打王や新人賞を含む四冠を獲得し、長らく日本代表でも主力として活躍した長崎望未さんが、今大会のオフィシャル・サポーターを務める。インタビュー後編では、大会の見どころや注目選手などについて聞いた。

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元ソフトボール女子日本代表・長崎望未さん

【U15日本代表の注目選手は】

――それでは、10月21日から開催される『第1回WBSC 女子U15ソフトボールワールドカップ2023』の見どころを教えてください。

「第1回目の大会だということ、そして主催がWBSC(世界野球ソフトボール連盟)ということも含め、ソフトボール界にとって非常に意義のある大会です。出場選手は中学生が中心ですが、その年代から国際大会を経験できることは、選手たちにも本当にいい影響を与えてくれると思います」

――彼女たちを見て何か感じることはありますか?

「私たちの時代と比べて、背が高い選手が増えたな、と感じています。私ぐらいの体格(身長160㎝)の選手もいますが、平均的に見ると背が高い。そこは世界と戦う上で重要な部分だと思います。技術はこれからまだまだ伸びていきますし、身体的にもポテンシャルは高いと思います」

――注目している選手はいますか?

「ルーウィス梨々亜選手(福岡レッドドリームズ)ですね。中学生離れしたパワーが非常に魅力的だと聞いています。これからの日本ソフトボール界を代表するパワーヒッターになるのではと期待されている選手とのことで、実際にプレーを見るのを楽しみにしています。
また、今回のU15のフィールドは、センターまでの距離は実業団とほぼ一緒なんですけど、ホームから両翼の距離が短く、その分、ホームランや長打が得点に繋がりやすい大会になるのではないか、と考えています。打撃戦が魅力的な、観戦している人も楽しめるプレーがたくさん見られると思います」

――それは楽しみですね。

「そして、先ほどU15日本代表には長身の選手が多いと話しましたが、日本の背の高いピッチャーがどんなボールを投げるのかにも注目しています。中学生は普段、練習や試合でゴムボールを使っているのですが、国際試合では皮張りの硬球になります。重さや縫い目に違いがあるので、そこにいかにアジャストできるかが重要になりますね」

【JDリーグのアンバサダーとしても】

――長崎さんも経験があると思いますが、ゴムから硬球への対応はやはり難しいものですか。

「覚えているのは、最初は指が痛かったことですね。私は野手でしたけど、ピッチャーは爪が割れることもあるでしょうし、そのあたりでどう対応できるか。短期間の大会ですけど、関係者は将来性も含め、対応力も見ているかもしれませんね」

――なるほど。バッティング面においてはどうですか。

「ゴムよりも硬球のほうがはるかに飛びますね。私は実業団に入ってから硬球を使ってプレーしたのですが、最初は『こんなに飛ぶんだ!』と驚きました。ゴムだったらボールが潰れてファウルになっていた打球が、硬球だとヒットになる。打者は気持ちよくバッティングができると思いますね」

――そのあたりの変化をどう感じ取ってプレーしてくれるかも楽しみですね。

「国際大会は選手たちにとって成長するチャンスです。私が初めて出た国際大会は、南アフリカで開催されたU19の世界大会でしたが、外国人選手の力強いプレーを目の当たりにして、とても新鮮な驚きがありました。世界には、こんなプレースタイルがあるんだって。どこか狭く見えていた世界が広がったし、自分の目標がそれまで以上に高くなっていく感覚もありました。
15歳というタイミングで12カ国の選手たちとプレーすると、自分が頭の中で考えていた限界を超えてくる選手が必ず出てくるので、その子たちにとってはソフトボール人生の分岐点になると思っています。すべての選手にとって成長の場になって欲しいし、観客の皆さんには、成長していく彼女たちの姿を見てもらいたいですね」

――そして、長崎さんはニトリJDリーグ(旧・日本リーグ)のアンバサダーにも就任されました。現在の活動を含め、今後の展開など考えていることはありますか。

「私の役割は、内外にソフトボールの素晴らしさを伝え、普及していくことだと考えています。3年前に引退してから、軟式野球チームの『クーニンズ』に所属したり、野球の派生競技である『ベースボール5』などに挑戦したりしているのですが、根本にあるのはソフトボールを盛り上げたいという気持ちです」

――野球との親和性を上手く利用してソフトボールを広めていく。

「そうですね。ソフトボールのファンって基本的に野球も好きだと思うんです。逆に、ソフトボールだけのファンって少ないというか......。私が野球をプレーすることで、少しでもソフトボールの認知度を高めて、私を通じてソフトボールに触れてもらえれば嬉しいなって。そこには手応えも感じています。
それに付随して、様々なメディア活動を通して、まずは私のことを知ってもらい、その先でソフトボールも知ってもらえたらと。また、他のスポーツ同様、少子化によってソフトボールも競技人口が減ってきているので、ソフトボールや野球の教室をきっかけに、単純に子どもたちにスポーツの楽しさを知ってもらって、未来を拓くきっかけになればいいなって思います」

【野球もソフトもひっくるめて普及していきたい】

――メディア活動と言えばYouTubeチャンネルもお持ちですよね。ソフトボール関連だけでなく、元プロ野球選手の上原浩治さんや川上憲伸さんともコラボされています。

「軟式野球からのご縁で、元プロ野球選手の方々とコラボさせてもらったりと、チャンネルのコンテンツは確実に広がりました。そういった方々の力をお借りしながら、少しでもソフトボールに触れてもらう機会を増やしたいと思っています。
はっきり言ってしまうと、ソフトボールはまだまだマイナースポーツですし、まずは認知してもらうことが大事です。他にも、あまり知られていない大学ソフトボールの情報だったり、高校生たちが大学に進学してもソフトボールを続けてみようと思ってもらえるような動画も配信しています」

――なるほど。コツコツと普及に努めている状況なんですね。

「できれば今後は国内ばかりではなく、海外にも視野を広げていきたいなと考えています。特に、アジア全体の底上げが必要ではないかと。アジア全体で力をつけていけば、日本ももっとレベルを上げなければならないと、相乗効果が生まれることも期待しています」

――いろいろな方向性を模索しながら、ソフトボール全体を盛り上げようとしているのですね。

「なにかひとつに捉われる必要はないと思っています。わかりやすく言うと、子どもだったら別に野球とソフトボールを分けなくてもいいんじゃないかって。私自身、野球経験者の方からも指導を受けていましたし、バッティングの自主練習で野球の硬球を打つこともありました。子供のころは何より楽しさが大事なので、野球もソフトボールもひっくるめて普及活動をしていきたいなと思います」

――大人の方々はもちろんですけど、小さな子どもたちにもU15ワールドカップをぜひ見てもらいたいですね。

「そうですね。元日本代表の山田恵理さんや渥美万奈さんもオフィシャル・サポーターを務めていらっしゃいますし、上野由岐子さんや宇津木麗華さんも来場される予定です。
大田スタジアムなど都内3球場で試合が予定されていますが、全試合入場無料ですので、ソフトボールを知らない方も、公園遊びや散歩がてら、気軽な感じで立ち寄ってもらえたらうれしいですね。とにかく知ってもらうこと、まずは見てもらうことが大事なので。ぜひ、よろしくお願いします!」

【profile】 
長崎望未 ながさき・のぞみ
1992年6月19日生まれ。愛媛県出身。小学校3年生でソフトボールをはじめ、京都西山高等学校在学中にはインターハイで優勝。高校卒業後の2011年にトヨタ自動車女子ソフトボール部に入部。1年目のシーズンには本塁打王や新人賞など四冠を獲得し、チームのリーグ優勝に大きく貢献した。2014年からは日本代表としても活躍。2020年シーズンをもって現役を引退。引退後はソフトボールの普及活動のほか、テレビ出演、アパレル、YouTubeなど多方面で活動している。