10月12日~16日にわたり、鹿児島県で開催された「燃ゆる感動かごしま国体」バスケットボール競技。本来、鹿児島での国体は20…

 10月12日~16日にわたり、鹿児島県で開催された「燃ゆる感動かごしま国体」バスケットボール競技。本来、鹿児島での国体は2020年に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響によって延期され、2023年に「特別国民体育大会」として開催する運びとなった。

 成年男子は、JR東日本秋田のメンバーが出場した秋田県が史上初の5連覇を達成。成年女子は東京都が優勝。2019年大会からU16世代が参加資格となっている少年の部では、女子は京都府が初優勝。そして、ここで紹介する少年男子は茨城が2大会連続6回目の優勝を飾った。

【国体参加資格】

※成年の部=大会開催年の4月1日現在、18歳以上の者が対象(高校3年生以上が対象)

※少年の部=大会開催年の4月1日現在、15歳以上18歳未満の者が対象(中3~高2の早生まれまでが対象)

バランスのいいメンバー構成とベンチワークが光った茨城が2連覇達成


 2連覇を達成した茨城・佐藤豊文監督(土浦日本大学高校)は「今年の優勝は本当にうれしい。去年はセンターが2年生だったので優勝できる手応えがあったのですが、今年はインサイドが若く、また全体的に混戦の大会だったので、その中でチャンスをつかんで勝ち切ったことが本当にうれしいです」と実感のこもった感想を述べた。その言葉どおり、今年は各チームに即戦力の高校1年生が多いため熱戦が多かった。

 決勝に進出した茨城と新潟県は、ともに2年生に主軸を持つチームの対戦となり、レベルの高い見応えある一戦となった。

 先に主導権を握ったのは新潟。U16日本代表の千保銀河と司令塔の北村優太(ともに開志国際高校)を軸に、積極的な攻めで第2クォーターの中盤には42−22と20点のリードを奪う。ここまでの茨城は「やられてはいけないことを全部やられて、ディフェンスがチグハグ」(佐藤監督)で後手に回っていたが、徐々に修正して前半を40−47まで詰めて折り返すと、後半はディフェンスを強めて、速攻を繰り出す展開に持ち込む。

 特に巧さが光ったのはベンチワークだ。昨年の優勝を経験している司令塔の平岡皇太朗(土浦日本大高)とシューターの木村魁斗(下妻第一高校)ら2年生ガード陣を軸に、センターの渡邊脩希とフォワードの夏目悠良(ともに193センチ)ら高さあるメンバーを投入する時間帯と、機動力を生かしてガードの渡部駆流(3人ともに土浦日本大高)を入れる時間帯を分けて勝負。さらにスタメンの渡部開(つくば秀英高校)も得点力があり、どこからも攻められるだけに的が絞りにくく、そのメンバーチェンジの巧妙さに新潟は惑わされていく。第4クォーター中盤にシューターの木村が3ポイントを決めて逆転に成功すると、そこからは新潟に粘られながらも突き放しにかかる。最終スコアは96−84。バランスのいいメンバー構成とベンチワークが光った茨城が国体2連覇を達成した。

 茨城の佐藤豊文監督は、コーチングスタッフの団結とサポートに感謝し、『チーム茨城』としての優勝であることを強調。また、「成熟度の高さ」が優勝の要因だと明かした。「選抜されたメンバーは高校が近いので、平日も土浦日本大に集合して、うちの2、3年生と何度も何度もゲームをしたので、他のチームよりも成熟度が高かったと思います」と勝因を語った。

上位回戦は見応えあるゲームが続出


 今年は全国的に1年生に即戦力が多い。特にガード陣に有望選手が多いことで、ベスト4に進出したチームは、U16世代でありながらも安定したゲーム運びを展開した。準優勝の新潟は神田智嗣監督(長岡高校)のもと、開志国際高校のメンバーを中心に、強豪の福岡県と宮城県を下して決勝に進出。各自が仕事をこなすチームに仕上げてきた。U16日本代表の千保の得点力に加え、布水中学校で全中準優勝の経験がある北村のクイックネスとフィニッシュ力が目を引いた。

 ベスト4の静岡県と宮城県も個性的なチームだった。静岡は「ディフェンスで頑張れるメンバーを選びました」と石谷優二監督(浜松湖北高校)が話すように、ポイントガードの高松悠季、オールラウンダーの野津洸創(ともに藤枝明誠高校)が主体となって、最後まで戦い抜くチームを作ってきた。

 2019年に準優勝を遂げた以来となる4強入りを果たした宮城は、ガードの選手が半数を占めるチーム。190センチ台が不在でサイズこそなかったが「今年は12人全員のエネルギーをコートにぶつけて、ハードにディフェンスをしてリバウンドに跳び込むチーム」と岡崎涼監督(仙台城南高校)が話すように、主体となった仙台大学附属明成高校だけでなく、東北学院高校、利府高校、仙台89ERS U18から選抜された選手たちが、走力を生かした展開を披露。静岡も宮城も決勝進出は逃したが、簡単にはあきらめない粘りを発揮した。

「U16世代の育成」の意味を持つ国体少年の部


 国体少年の部の参加資格がU16世代に移行したのが2019年で、今年で3大会目迎える(2020、2021年は中止)。3大会すべてにベスト4以上の成績を収めた茨城・佐藤豊文監督に、U16世代に移行した国体の強化について質問すると、このような回答が返ってきた。

「2019年に地元の茨城で国体があると聞いたのが2014~2015年ころ。2019年から高校1年生がメインの大会になるということで、当時から地元国体を目指して小学校6年生から中1の選手に意識づけをしていき、2019年の国体ではベスト4に進出しました。国体が高校1年生メインになると聞いたときは、『1年生だと試合経験も体力もないので、未熟な選手たちでゲームが成り立つのだろうか』と不安でした。また、『インターハイ、国体、ウインターカップの3冠を目指すことがなくなることで、国体の意義としてはどうなのか』と思ったのが正直なところです。

 ですが、夏合宿や関東ブロック予選を終えたころには飛躍的に伸びていくことがわかり、『公式戦をこなすと、こんなにもうまくなるんだ』と実感しているところです。1年生は自チームでも試合に出る機会がとても少ない。それを考えれば、U16世代や高校1年生の育成として今の国体の形は、ものすごい成長に結びつく大会になっています」

 茨城の連覇は、2019年に開催された地元国体からの継続的な強化に加え、U16世代の育成において、県をあげて選手層の底上げと意識改革を図った成果だった。国体が「国民体育大会」の名称で開催するのは今年が最後。来年の佐賀大会からは「国民スポーツ大会」の名称のもとで開催される。

文・写真=小永吉陽子