チーム事情から見るドラフト戦略2023〜ヤクルト編 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どの…

チーム事情から見るドラフト戦略2023〜ヤクルト編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。まずはヤクルトから見ていきたい。



タイミングのとりづらさに定評がある国学院大の長身左腕・武内夏暉

【先発を任せられる即戦力投手】

 2年連続でセ・リーグを制覇したヤクルトが、今年はまさかの低迷が続き、最終戦でなんとか5位になったものの、波乱の1年を過ごした。しかも優勝した阪神とは29ゲーム、4位の巨人にも13.5ゲーム差をつけられての"完敗"に終わった。

 昨年まで守護神を務めたスコット・マクガフが抜けたとはいえ、それ以外は大きな変化がなかったにもかかわらず、この結果になるのだから野球はわからないものだ。

 村上宗隆、山田哲人のWBC組が、本調子を取り戻せないうちにシーズン終盤を迎えてしまったことも"敗因"のひとつに違いないが、遅かれ早かれ彼らの後釜は必要だろう。

 とくに、2025年に3年契約の満了を迎え、早期のメジャーリーグ挑戦も希望している村上の後継者については、それにふさわしいスラッガー候補がいる時に何がなんでも獲得しなければならない。

 ただ、今シーズンの戦いを振り返れば、やはり投手だ。軸を担える先発投手が圧倒的に不足しており、しかもケガで戦線を離脱している奥川恭伸の状態もはっきりしない。ファームにもめぼしい人材がいればよいが、それも見当たらない。

 補強ポイントを挙げたらキリがないが、まずは現状を受け止め、チーム再建に努めたいところだ。

 10月1日、ヤクルトは12球団のトップをきって戦力外選手を発表した。投手6人、野手1人の計7人の名前があがっていたが、おそらくこれに近い人数がドラフトで指名されることになるだろう。

 昨年のドラフトでは、2位で西村瑠伊斗(京都外大西高)、3位で澤井廉(中京大)、5位で北村恵吾(中央大)と3人の野手を獲得。そのことを踏まえると、今年は上位3人をすべて投手でもおかしくない。

 今年のドラフト候補にはローテーションを期待できそうな投手が何人もいるし、チーム成績が悪かったことで、ウェーバーになる2位指名の順番も早め(3番目)になるので、1位は重複覚悟で強気にいきたい。

 左の先発が高橋奎二しかいない現状を踏まえれば、細野晴希(東洋大/180センチ・85キロ/左投左打)、武内夏暉(国学院大/185センチ・90キロ/左投左打)が候補に挙がる。それとも快速右腕がほしければ、西舘勇陽(中央大/183センチ・79キロ/右投右打)になるだろうか。

【あの逸材がプロ志望届を出せば...】

 ならば2位は、どんな投手が候補になるのか。

 ちょっと待った! ここでひとつの"仮説"が生まれる。どの球団も投手の逸材獲得を優先することで、もし"あの逸材"がまだ指名されずにいたら......。

 あの逸材とは、佐々木麟太郎(花巻東高/184センチ・113キロ/右投左打)である。

 チームの現状からすれば、即戦力に近い投手は何枚でもほしい。その一方で、村上の後釜として人気、実力ともにフィットしそうな大砲候補を今のうちから育てておきたいのも事実である。

 佐々木については、現時点(10月9日現在)で進路については明言しておらず、アメリカの大学に進学するという報道もあるが、もしプロ志望届を出せば1位で消える可能性は大いにある。そうなった時にどういう判断をするのか。ヤクルトにとっては悩ましい。

 そして4位以下だが、先述したようにイキのいい若手投手が少ないことから、高校生投手を続けて獲得してもいいのではないだろうか。

 左腕なら黒木陽琉(神村学園高/183センチ・76キロ/左投右打)、杉山遥希(横浜高/180センチ・78キロ/左投左打)、右腕ならハッブス大起(東北高/188センチ・85キロ/右投右打)、藤原大翔(飯塚高/177センチ・70キロ/右投右打)あたりが面白い。このなかから3人というのは、ちょっと贅沢すぎか。

 さらに、来季34歳を迎える中村悠平の後継者を内山壮真とするならば、強力な競争相手が必要だろう。ただ、今年は捕手の人材が心細く、志望届を出している数も少ない。そんななか、屈強そうな体躯と強肩がウリの後藤聖基(東洋大/183センチ・83キロ/右投右打)が浮上する。年齢的にも近く、内山のライバルになるにはもってこいの逸材だ。

 今年はシーズン序盤から苦しんだが、ヤクルトというチームは決してこんなものではない。10月26日がチーム立て直しの第一歩になることを、切に願ってやまない。