2021-2022シーズンまでTリーグのT.T彩たまに在籍。

2022-2023シーズンにドイツへ渡り、ブンデスリーガの強豪ザールブリュッケンでシーズン2位と、欧州クラブナンバーワン決定戦のヨーロッパチャンピオンズリーグ(ECL)王座に君臨した神巧也(ファースト)が、今季移籍先のポーランド・スーパーリーグで9月24日にデビューを果たした。

ポーランド・スーパーリーグは2009年に発足した卓球のプロリーグで、歴史はまだ浅いが国内外からトップクラスの選手が参戦している。

特に今シーズンからは、それまでプロリーグの掛け持ちはアジアに限られていたところを、ドイツとフランスを除くヨーロッパのプロリーグも対象に。広く門戸を開くことで、より強い選手を呼び込みレベルアップを図ろうとしている。

左からレジムスキー、ボドウスキー、神巧也、ギオニス、レジムスキー監督/写真=高樹ミナ

神の新天地は昨シーズンの優勝チーム、ボゴリアだ。デビュー戦はビャウィストクとのアウエーマッチで町飛鳥(ファースト)にストレート勝ち。

続く26日のホームマッチでも小西海偉がプレーするジャウドヴォのディヤス(ポーランド)をストレートで下したが、28日のオルリッチェ戦ではシングルスに2点起用され、フローラス(ポーランド)とパク・ジョンウ(韓国)に敗れた。

そして、迎えた30日のホームマッチ。

ボゴリアは世界ランク12位のモーレゴード(スウェーデン)をエースに据えるグヴィアズダと対戦し、神は3番のシングルスで1点を挙げると、最終マッチにもつれ込んだ5番のダブルスでも大接戦を制してチームに勝利をもたらした。

ボゴリアはここまで5戦を終え4勝1敗でリーグ首位。2位には僅差でグヴィアズダがつけている。ちなみにグヴィアズダには高木和卓(ファースト)も在籍している。

神巧也/写真=高樹ミナ

「今日は僕が3番で絶対に勝たないといけないオーダーだった。重要な位置付けだったので期待に応えられて良かったです」

試合後にそう語った神は、2番で17歳のレジムスキー(ポーランド)がモーレゴードをゲームオールで撃破したのを見て奮起。自身も終始リードを奪う形でグレラ(ポーランド)にストレート勝ちを収めた。

だが、チームの大黒柱でカットマンのギオニス(ギリシャ)が、再び4番で登場したモーレゴードに敗れ決着は5番のダブルスに。

神巧也・レジムスキー/写真=高樹ミナ

神は2番で大金星を挙げたレジムスキーとペアを組み、練習なしのぶっつけ本番でウルス/グレラとゲームオールの死闘を演じ、6点先取の手に汗握る最終ゲームを6-4で勝ち切った。

「レジムスキー選手は高いポテンシャルの持ち主。まだユースのツアーばかり出ているのでシニアの世界ランクは高くない(WR142位)けど、去年はティモ・ボル選手にも勝ったし、ポーランドスーパーリーグでは最多勝も挙げている」と13歳下のパートナーを大絶賛。

特に選球眼に優れているといい、「打ちにいけるボールは攻め、難しいボールはしっかり入れる。今でも世界ランク30~40位くらいの実力はあるんじゃないかと思うし、僕はいつも練習でボコボコにされてます」と笑う。

勝利後のチームでセルフィー/写真=高樹ミナ

一方、自身のプレーについては2点を落とした前々日のオルリッチェ戦を踏まえこう評価した。

「ヨーロッパの選手独特のゆっくりなタイミングに合わせにくく、今日も少しやりづらさがあったんですけど、試合の中で修正できたので良かった。団体戦のダブルスは結構好きなので、レジムスキー選手とのペアは今日が初めてでしたけど上手くいきましたね」

ポーランド・スーパーリーグへの移籍はぎりぎりのタイミングで決まったという。

昨シーズン在籍したザールブリュッケンにはリーグ2位の個人成績を挙げた村松雄斗(La.VIES)が加入。ブンデスリーガのアジア選手枠は1枠という決まりがあるため、神はチームを離れることとなった。

「それがプロの世界ですからね。そこはドライです。ドイツの他にもフランスリーグ・プロAに興味があって実際、2チームと話を進めていたんですけど、最終的に決まる時期が遅かったので、T.T彩たま時代にチームメートだったギオニス選手に連絡を取り、ボゴリアのトーマス・レジムスキー監督に繋いでもらいました」

もちろんザールブリュッケンもチーム探しを手伝ってくれたが、最終的には自力。もともとザールブリュッケンも自ら英語のメールを送り勝ち取った契約だった。

神巧也/写真=高樹ミナ

ザールブリュッケンからブンデスリーガに参戦した2022年には、リーグ開幕の約3カ月前に腰の手術も受けていた。

「あまり公にしていなかったんですけど、腰椎椎間板症ヘルニアでずっと腰がダメで。Tリーグもダブルス1試合しか出られなくて、これはもう手術するしかないなと。5月初旬に手術を受け、そこから1カ月間リハビリをして6月に練習に復帰し、8月下旬のリーグ開幕に間に合いました」

現在、腰の状態は良く、今シーズンはポーランド・スーパーリーグを中心に日本でも「国体」こと特別国民体育大会(卓球競技は12~16日/鹿児島県)に故郷の青森県代表として出場する。

国体が終わると再びポーランド・スーパーリーグに戻り、併せてECLのステージ2を戦うハードスケジュールだ。

ECLの2次リーグにあたるステージ2では張本智和(智和企画)が登録しているノイ・ウルムと同じCグループに入った。張本の出場は未定だが、「ノイ・ウルムに勝って準決勝に行きたいですね」と神。

ステージ2は3チームずつ4グループでリーグ戦を行い、それぞれ1位の4チームが王座を競い合う。

昨シーズン、ザールブリュッケンの一員としてブンデスリーガ最強のボルシア・デュッセルドルフに逆転勝ち。欧州チャンピオンを経験した神が今度はポーランド最強のボゴリアを王座へと導くか。

闘志あふれる神のプレーはポーランドのファンも熱くさせる。ホームマッチの会場に響き渡る「TAKUYA」コールはその証だ。熱血漢の大暴れに期待したい。


(文=高樹ミナ)