世界水泳短期集中連載・「キャプテン」松田丈志の目線(2)「東京五輪で、これを見たい」そう思うレースだった。 世界水泳1日目、日本勢は女子100mバタフライの池江璃花子が準決勝を4位、日本記録まで0.03秒という好タイムで決勝へ進んだ。 …

世界水泳短期集中連載・「キャプテン」松田丈志の目線(2)

「東京五輪で、これを見たい」そう思うレースだった。

 世界水泳1日目、日本勢は女子100mバタフライの池江璃花子が準決勝を4位、日本記録まで0.03秒という好タイムで決勝へ進んだ。

 男子100m平泳ぎの小関也朱篤(こせき やすひろ)は6位で決勝進出。この2人はともに0.2~0.3秒タイムを縮められれば、メダルの可能性もあると思う。24日の決勝に期待したい。ぜひとも自分の力を出し切ったレースをしてほしい。

 女子200m個人メドレーの今井月(るな)と大橋悠依はそれぞれ7位と8位で決勝進出を決めた。ともに世界水泳は初出場だが、自分の持ち味を生かしたレースができており、決勝でもその泳ぎをしつつ、できるだけタイムを上げてほしいところだ。

 海外勢では男女400m自由形では中国の孫楊(ソン・ヨウ)とアメリカのケイティー・レデッキーがそれぞれ大会3連覇し、盤石の強さを示した。

 女子4×100mフリーリレーでは、スウェーデンの第一泳者、サラ・ショーストロムが世界記録を更新。24日の100mバタフライ決勝でも大爆発の予感だ。

 競泳初日から満員となった会場。地元のファンで埋め尽くされたスタンドからは、ハンガリーの選手が入場してきただけで大歓声が送られる。母国の英雄カティンカ・ホッスーが女子200m個人メドレーに出場した時もすごい歓声だった。

 しかし、今日一番の大歓声は男子4×100mフリーリレーでハンガリーチームが銅メダルを獲得した瞬間だった。それはもう会場が揺れるような大歓声だった。

 ――これを東京五輪で見せて欲しい。

 正直、ハンガリーがこの種目でメダルを獲るとは思ってなかった。何せ2000年シドニーオリンピック以降の世界水泳と五輪で一度も決勝にすら残っていないチームだからだ。母国開催がここまで選手を強くするのかと感じたレースだった。



日本記録を更新、大健闘した男子4×100mに出場した面々

 日本チームも健闘した。中村克、塩浦慎理、松元克央、古賀淳也のメンバーで挑み、リオの予選でマークした日本記録を更新しての5位入賞だ。日本は着実に伸びてきている。世界水泳ではこれで3大会連続の決勝進出。昨年のリオ五輪では48年ぶりにこの種目で決勝に進んだ。

 今回メダルを獲得したハンガリーとのタイム差は1.66秒。ひとり0.4秒縮めれば、届く計算だ。いいメンバーが揃ってきているし、まだまだ伸びていけるはずだ。

 私が昨年のリオ五輪で4×200mフリーリレーで銅メダルを獲得した時、4年後の東京五輪に向けて思ったことがふたつある。ひとつはこの銅メダルが金メダルになってほしいということ、そしてもうひとつは男子4×100mフリーリレーでメダルを獲ってほしいということだ。

 やはり自由形は競泳の花形種目だ。この種目で世界と対等に戦えるようになることが今の競泳日本が競泳大国になるために残された最後の課題だと思う。

 そこに向けてのプロジェクトも進んでいる。日本水泳連盟は自由形強化のプロジェクトを立ち上げ、強化合宿や測定合宿を行なっている。”速い”のには必ず理由がある。測定を重ねることで、その違いもわかってくる。それさえわかれば、あとは改善と実行ができるかどうかだけだ。

 またフィジカルがモノをいう種目でもあるだけに、選手には身体づくりのトレーニングや食事にも徹底的にこだわってほしい。あと3年でどこまでの成長を見せてくれるのか。成長のスピードを上げていくためには、用意された強化プロジェクトも大事だが、選手たちらが協力し合い、動き出すエネルギーも必要だと思う。

 開催国ハンガリーの躍進と日本チームの健闘を目の当たりにして、改めて夢を見たいと思った。

 リオ五輪では陸上の日本のスプリンターたちがメダルを獲った。競泳のスプリンターにも絶対できるはずだ。