好打を支えたのは同じ左打ちの広島・秋山伝授の“流し打ち” 野球日本代表「侍ジャパン」女子代表は、13~17日に開催された…
好打を支えたのは同じ左打ちの広島・秋山伝授の“流し打ち”
野球日本代表「侍ジャパン」女子代表は、13~17日に開催されたカーネクストpresents「第9回WBSC女子野球ワールドカップ・グループB」(広島・三次きんさいスタジアム)に挑み、全戦全勝でファイナルステージ(カナダ・サンダーベイ、2024年開幕)への切符を手にした。星川あかり内野手(淡路BRAVE OCEANS)は試合すべてに出場し、打率.500(12打数6安打)をマーク。広島の秋山翔吾外野手や虎のリードオフマン・近本光司外野手から体得した技術を発揮した。
全試合で安打を放ったバッティングは、同じ左打ちの秋山からの助言が生きた。5年前から秋山が行っている自主トレに参加し、「私は引っ張るバッティングが得意なんですが、秋山選手は逆方向に打つのが上手なので、流し方を重点的に聞いています」と、NPB最多安打記録保持者であり、メジャーリーグに2年間在籍したヒットメーカーから技術を学んでいる。
毎年、複数人の女子選手を自主トレに招いている秋山からは、「無理に流しにいこうとすると女子の選手はどうしても力が弱くなってしまうので、反対方向に強く振り切るのが一番と教わりました」と、女子選手でも最大限のパフォーマンスを引き出せるように指導を受けた。アウトコースを打つために、ティー打撃では「どれだけ強く踏み込めるか」を大事にするようアドバイスをもらった。
秋山直伝の広角に打ち分ける打撃に加え、女子プロ野球リーグシーズン最多四球を2019年に記録している選球眼の良さも光り、出塁率と長打率を足したOPSは川端友紀内野手(九州ハニーズ)の1.566に次ぐ、1.334を記録。「秋山選手に教えてもらった次の年から、反対方向に打てる率が上がったんです。苦手だった左投手に対する考え方も教わったり、自主トレに参加することで引き出しが増えています」と、右肩上がりの成長を実感している。
阪神・近本の「動物的な動きを取り入れたトレーニング」で体幹強化
4年を過ごしたプロ生活から、2021年に現在のクラブチームへ移籍し淡路島へ移住。「身体が丈夫」と自負するフィジカルの強さも、さらにパワーアップした。きっかけは同島出身の阪神・近本の自主トレだ。参加したのは初日だけだが、それでも学びは多かった。目の当たりにしたのは「全然同じ動きができなかった」と言う初見のトレーニングだった。
「器械体操的な動きや、動物的な動きを取り入れたアップや、体幹トレーニングをしていて。四足歩行でめちゃくちゃ地面を這うようにして動くとか、逆立ちだったり、前転とか後転とか……。普段野球では使わない筋肉を使った、本当に知らない動きをやっていました。近本選手は野球を始める前に、まずは自分の身体を知ることを大事にされているんだなと感じました」
星川が所属するチームは、近本が自主トレで使っている室内練習場を普段から使用している。自主トレ初日に学んだイメージを大事にしながら、「バランスボールを天井に当てるくらいポンッと投げる練習」を冬のトレーニングに取り入れ、体幹強化に役立てた。
だが、すんなりと強くなれたわけではない。「淡路島に来てすぐの頃はミシンで商品を縫う仕事をしていました」という星川は、深刻な肩凝りに悩まされ、その後、故障した。「プロのときは“半日仕事・半日練習”の生活でしたが、8時間通して仕事をして、そのあと2時間練習する生活になって……。そんなことで身体が壊れると思っていなかった」と、“座り仕事”の大変さを知った。これを機に1日通して身体を動かせるホテル業界へ転職し、プロのとき以上に身体への配慮を欠かさない。
予想外の故障を乗り越えて日本代表入りを果たし、チームをファイナルステージへ導く活躍をみせた星川。ファイナルステージでも日本の7連覇阻止を狙う世界の強豪チームを打ち破る覚悟だ。(喜岡桜 / Sakura Kioka)