10月26日開催のドラフト会議まで2カ月を切った。夏の甲子園も終わり、ここからプロ野球の各球団は、どの選手を指名すべきか絞り込みの作業に入ってくる。そこで、現段階でドラフト1位に食い込む逸材を予想してみよう。高校通算140本塁打の花巻東・…

 10月26日開催のドラフト会議まで2カ月を切った。夏の甲子園も終わり、ここからプロ野球の各球団は、どの選手を指名すべきか絞り込みの作業に入ってくる。そこで、現段階でドラフト1位に食い込む逸材を予想してみよう。



高校通算140本塁打の花巻東・佐々木麟太郎

【ドラフト1位確実な6人】

 まず、プロ志望届を提出するものとして仮定すると、下記の6選手はドラフト1位指名が堅いと言えるだろう。

前田悠伍(大阪桐蔭高/投手)
佐々木麟太郎(花巻東高/一塁手)
真鍋慧(広陵高/一塁手)
常廣羽也斗(青山学院大/投手)
細野晴希(東洋大/投手)
度会隆輝(ENEOS/外野手)

 前田は順当なら今永昇太(DeNA)のような先発左腕に成長する未来予想図が描ける。下級生時から活躍してきただけに重箱の隅をつつくような指摘を受けることもあるが、前田ほどクオリティの高い高校生左腕は近年いなかった。

 一部で故障説もささやかれたが、U−18日本代表に招集された。U−18日本W杯で本領発揮できれば、重複1位指名の可能性も十分あるだろう。

 佐々木、真鍋の高校生スラッガーの両雄もスケール感を考えると1位指名が妥当だ。

 佐々木は高校通算140本塁打をマークし、今夏の甲子園では徹底したインコース攻めに遭いながら4試合で6安打を放っている。インパクトの爆発力は高校生とは思えず、金属バットを持たせるのが危険と思えたほどだった。まだ骨の成長が止まっておらず、故障がちな肉体面や一塁に限定される守備面をどう評価されるか気になるところだ。

 真鍋は今夏の公式戦で不振に苦しんだものの、肉体的にも技術的にも大きな伸びしろを残している。日常的に木製バットを振りこなしており、広角に飛ばすツボを持っている点も評価ポイント。スローイングが強く、三塁や左翼をこなせる素養も持っている。

 好投手揃いの大学生では、細野と常廣の左右両腕が突出している。

 ともにストレートの質が抜群で、スピードガンの数字以上に破壊力を感じるボールを投げる。細野は下級生時から圧巻のポテンシャルを見せつけてきており、常廣は大学選手権決勝の明治大戦で完封勝利を挙げるなど株を上げている。

 ただし、ともに精神的にムラッ気があり、完成度が高いとは言えない。それを短所ととるか、伸びしろととるかで評価が変わりそうだ。

 度会はアマ最高峰で揉まれた打撃力を評価されるだろう。指名漏れに終わった横浜高時代から攻守にレベルアップした野球へ取り組む姿勢、21歳という若さも魅力。チームに陽のオーラを吹き込む天真爛漫なキャラクターも得がたい魅力だ。

【サプライズ1位候補】

 前出の6選手以外は、1位指名を予想するのが難しい。なぜなら、ドラフト会議はいい選手が上から順番に呼ばれるわけではない。各球団の補強ポイントを埋める「求められた選手」から呼ばれていくのだ。

 たとえば昨年のドラフト会議では、完全に素材型の遊撃手であるイヒネ・イツア(誉高)をソフトバンクが、将来性の高い本格派右腕の斉藤優汰(苫小牧中央高)を広島が1位指名するサプライズもあった。

 現在のプロ球界は全体的に「投高打低」の傾向にある。どのチームも若くてイキのいい投手が続々と育っているのに対し、野手陣はハイレベルな投手への対応に苦慮している。両リーグの規定打席に到達したなかで、打率3割を超える打者はわずか6人(8月25日現在)しかいない。

 もちろん、各球団ともファームを含めて若手野手を育成しようと躍起になっている。それでも、貧打に苦しむチームは屋台骨を支える野手、起爆剤になりうる野手が喉から手が出るほどほしいはずだ。

 翻って今年のドラフト戦線を見渡すと、大学生に好投手が多い。つまり、投手に関しては「供給過多」の感が強い。野手は前出の佐々木、真鍋、度会以外で「1位間違いなし」と言える選手は少ない。意外な選手の名前が「サプライズ1位」として呼ばれる可能性は十分にあるだろう。

 候補に挙げたいのは、下記の4選手だ。

武田陸玖(山形中央高/投手&外野手)
横山聖哉(上田西高/遊撃手)
進藤勇也(上武大/捕手)
廣瀬隆太(慶應義塾大/三塁手)

 武田は投打二刀流としてのプロ入りを希望しているが、野手としての才能が際立っている。天才的な対応力の打撃と高い身体能力を高く評価し、最上位で指名する球団があっても不思議ではない。

 横山は今夏にかけて急浮上した遊撃手。今夏の甲子園では5打数1安打と消化不良に終わったものの、シートノックでは超高校級の強肩を披露するなど馬力はピカイチ。遊撃手はプロ側の需要も高いだけに、サプライズ1位指名の目も出てくる。

 捕手ならアマ屈指のスローイング能力と、強力なエンジンを内蔵する進藤も面白い。ただし、大学生捕手が1位指名されるケースは少なく、最後に指名されたのは2008年日本ハム1位の大野奨太(現・中日)までさかのぼる(社会人捕手は2013年巨人1位の小林誠司が最後)。将来性が高い高校生捕手には堀柊那(報徳学園高)、鈴木叶(常葉大菊川高)と有力な素材もいる。

 プロ側の需要が高い右の強打者としては、廣瀬の名前が挙がる。東京六大学リーグ歴代7位タイとなる通算18本塁打を放つ大砲だが、一方でミート精度の低さをどう評価されるか。

【素材タイプと即戦力タイプ】

 先ほど投手に関して「供給過多」とも述べたが、一方で投手は故障が多く、戦力的に入れ替わりが激しいという事情もある。一軍戦力になるなら、投手は何人いてもいい。評価の低い野手を繰り上げて上位指名するより、好投手を確保するのも得策だろう。

 ただし、プロ側が1位の枠を割いて投手を指名するとなれば、早期に一軍戦力になりうる即戦力タイプか、大化けの可能性を秘めた素材タイプを選ぶはず。そこで、素材タイプ、即戦力タイプとしてそれぞれ3投手をピックアップした。

▼素材タイプ
坂井陽翔(滝川二高/投手)
河内康介(聖カタリナ学園高/投手)
滝田一希(星槎道都大/投手)

▼即戦力タイプ
下村海翔(青山学院大/投手)
武内夏暉(國學院大/投手)
古謝樹(桐蔭横浜大/投手)

 まずは素材タイプを見ていこう。坂井は身長186センチの大型右腕で、指にかかったストレートには夢がある。

 河内は全国的に無名ながらホップ成分の強いストレートが投げられて、藤川球児(元阪神ほか)を彷彿とさせる。

 滝田は大学生左腕ながらまだまだ発展途上で伸びしろは十分だ。捕手のミットを激しく叩く剛速球は白眉。今秋は故障で出遅れている点がどう響くか。

 大学生投手として即戦力タイプ筆頭に挙がるのは下村だろう。上背はないものの総合力が高く、今春は抜群のゲームメーク力で大学日本一に大きく貢献した。

 武内は一見凄みが乏しいように見えて、打者を詰まらせる実戦的な投球が光る。今秋にかけて状態を高めている点も好材料だ。

 古謝は和田毅(ソフトバンク)のように、力感なく打者を差し込むストレートが投げられる好左腕。変化球の進境次第でプロでも早い段階で戦力になれそうだ。

 9月に入ると大学野球の秋季リーグも本格化してくる。ドラフト1位戦線に急浮上する新星は現れるのか、これからも目が離せない。