卓球Tリーグの2023-2024シーズンが開幕した。7月29日の男子・木下マイスター東京 対 琉球アスティーダを皮切りに各地で開幕戦がスタート。今季4チームから6チームに増えた男子では、新規参入の静岡ジェードと金沢ポートも待望のデビューを果…

卓球Tリーグの2023-2024シーズンが開幕した。

7月29日の男子・木下マイスター東京 対 琉球アスティーダを皮切りに各地で開幕戦がスタート。今季4チームから6チームに増えた男子では、新規参入の静岡ジェードと金沢ポートも待望のデビューを果たした。

両チームが初対戦した8月6日の夜、自身のSNSに「僕の夢の一つが実現できました」と綴ったのはリーグ初の選手兼監督として開幕準備に奔走してきた森薗政崇(BOBSON)だ。

松平健太 写真提供:金沢ポート

注目が集まる新チーム同士の初顔合わせ。結果はマッチカウント2-3で金沢ポートに軍配が上がった。

静岡ジェードも最初のダブルスと2番のシングルスに出場した森薗が2点を先制。しかし、その後2点を奪われ勝負は最終のビクトリーマッチにもつれ込んだ。

わずか1ゲームで決着するビクトリーマッチでは松下大星(クローバー歯科カスピッズ)が5-0で優位に立ったが、そこから相手チームのエース・松平健太(ファースト)の怒とうの巻き返しに遭い逆転を許した。

前日には男子日本のエース・張本智和(智和企画)擁する琉球アスティーダにもマッチカウント1-3で敗戦した静岡ジェード。

ホームマッチ2連戦を白星で飾ることはできなかったが、「卓球で静岡を活性化する」をスローガンに掲げ、選手のスカウティングやスポンサー集め、地域でのイベント活動などに汗をかいてきた森薗はチームが地元サポーターの前で第一歩を踏み出せた喜びを噛み締めた。

「試合の結果は悔しいです。その一方で、たくさんの方に会場に足を運んでもらい声をかけてもらって、静岡ジェードというチームがだんだんと認められてきた手応えも感じました」

気がかりだった観客動員も初日の入場者数は966人、2日目は503人を数えた。

「もちろんベストではないですけど、2日間の平均が700人超というのは上々の立ち上がりじゃないか」と森薗。

入場者数1,000人に迫った初日は張本人気による集客効果もあっただろう。だが、会場最寄りのJR静岡駅にチームの大きなビジュアル広告が掲出され、初日に観戦をした観客が翌日も当日券を買い求めるなど、地域の巻き込みが順調なことを印象付けた。

そうした中で森薗は「(駅の広告は)みんな写真を撮って(SNSなどでも)見てくれて好評だった。ああいったPRはいろんな方々の協力を経て実現しているので、選手は自分達がどれだけ恵まれた環境でプレーできているかを理解しなきゃいけない」と監督の顔を見せる。

監督の立場としては反省もあった。その一つがヨーロッパのプロリーグで腕を磨いた大ベテラン・小西海偉のユニフォームを1枚しか用意できなかったこと。それがプレーに少なからず影響を及ぼしたという。

通常、選手には2枚以上のユニフォームが支給され、1枚は汗をかいた時などの着替え用に使う。

「Tリーグ参入初年度で選手(との契約)が決まる前にユニフォームを発注しなきゃいけないとか、細かい事情があって準備できませんでした。かなり汗をかく状況の中でラバーや踏み込みに影響があり、海偉さんに気持ち良くプレーをさせてあげられなかった。その点ですごく反省しています」

新チームの船出にはアクシデントが付き物だ。それでも地域密着を謳う静岡ジェードの開幕戦は横断幕を掲げるサポーターや地元高校のチアリーダーによる盛大な応援、地元アーティストによる応援歌の披露、試合後に選手たちが観客との写真撮影やサインに気軽に応じるファンサービスなどが充実していた。

欧州最高峰の卓球プロリーグであるドイツ・ブンデスリーガでかつてプレーしていた森薗にはチームと地元ファンの距離が近く、一体となって試合を盛り上げるブンデスリーガのチームづくりが理想にあるが、それを目指していることがよく分かる。

また、「スポーツ観戦は楽しくするもの」との考えからドイツのように会場でビールの提供も取り入れた。

だが、求めるのはあくまでもチームの勝利。「プロチームとして結果にこだわりたい。Tリーグの過密日程の中でもちろん苦しい瞬間はたくさん来るけど、選手たちには一つ一つ乗り越えてもらいたい。次の試合は今回よりもいいパフォーマンスをして勝ちに繋げたいです」と森薗は言う。

静岡ジェードは12日、T.T彩たまのホームマッチで3戦目を迎える。また、翌13日には金沢ポートのホームマッチで4戦目。敵地でリベンジを誓う。

(文=高樹ミナ)

●静岡ジェード 2-3 金沢ポート(8月6日/静岡市中央体育館)
龍崎東寅/森薗政崇 2-0 三浦裕大/山本勝也
森薗政崇 3-0 山本勝也
松下大星 2-3 松平健太
小西海偉 1-3 五十嵐史弥
松下大星 0-1 松平健太