2024年7月26日開幕のパリオリンピックまで、あと1年となった。卓球の日本代表争いは第5回選考会の「2023全農CUP東京大会」<7月22、23日/東洋大学赤羽キャンパスHELSPO HAB-3>が終了。男子は張本智和(智和企画)、女子は…

2024年7月26日開幕のパリオリンピックまで、あと1年となった。

卓球の日本代表争いは第5回選考会の「2023全農CUP東京大会」<7月22、23日/東洋大学赤羽キャンパスHELSPO HAB-3>が終了。

男子は張本智和(智和企画)、女子は早田ひな(日本生命)が優勝し、選考ランキング首位を独走する2人が今回も強さを見せた。

選考ポイントは張本が553.5ポイント、早田が597.5ポイントに伸ばし2位以下を突き放している。

男子2位は準優勝の戸上隼輔(明治大学)で380ポイント。女子2位には3位決定戦で勝った平野美宇(木下グループ)が392ポイントで続く。
その平野を下し準優勝した伊藤美誠(スターツ)は365.5ポイントで3位につける。

2位争いが激しくなってきた平野と伊藤の直接対決は質の高い打撃戦が観客を釘づけにした。

結果はゲームオール10本の大接戦の末、伊藤に軍配が上がったが、「ラリー戦は平野選手が上回っていた。正直、99%(自分が)負けの試合だった」と伊藤が振り返るように、全体的な流れは平野にあったと言えるだろう。

特にゲームカウント3-1リードで伊藤を追い詰めた前半戦は、バック表(ラケットのバック面に表ソフトラバーを貼っている)の伊藤の泣きどころであるバック側深くにロングサーブを徹底。そこからの3球目攻撃や両ハンドドライブの緩急で平野が圧倒した。

今月2日にクロアチアで行われたWTTコンテンダー ザグレブ女子シングルス決勝で世界ランク1位の孫穎莎(中国)を倒し優勝した勢いと自信を見せつける平野。

対する伊藤は後がない第5ゲーム5-3の場面で平野がチャンスボールをミスしたのを機に一気に得点を重ねこのゲームを奪うと、第6ゲームの競り合いも制してフルゲームに持ち込んだ。

最終ゲームはどちらが取ってもおかしくない展開だったが、プレッシャーのかかる場面で思い切った3球目攻撃やエッジとネットインを味方につけた伊藤が、先にマッチポイントを握った平野を逆転した。

「我慢をした自分と運に感謝したい。次、(平野選手と)対戦するときも明らかに挑戦者の気持ち」と話す伊藤は、「いいボールを打たせない工夫はできたと思うが、平野選手は前よりも対応力がついていてほとんど完璧だった」とコメント。

一方、平野は「内容的には悪くなかったが、最後は(10-8で)リードしていたのにもったいなかった。10オールになって相手の思い切りの良さにちょっと負けてしまった」と悔しがった。

しかし、今の平野は自信にあふれている。「最後に何かが起きることはオリンピックに出場してもあると思うので、どんな状況でも切り替えて勝ち切れるようしたい。そういう意味で3位決定戦は(第7ゲームの)9-8でリードしている場面で思い切りいけた。準決勝の反省を生かせたかなと思う」と一度の勝ち負けにとらわれず前向きだった。

2位以下に大差をつけた早田はといえば、最後の国内選考会となる第6回選考会に出場せずパリ五輪の準備に注力する可能性もあると見られているが、本人は「パリオリンピックで勝つために実力をつけているので、試合をするのはいいこと。体調や海外遠征のスケジュール次第で決める」とのこと。

早田の次戦は8月5日のTリーグ開幕戦。そこからWTTコンテンダー リオデジャネイロ(7~13日)に向かう模様だ。

この後、残り半年の選考レースでポイント対象大会はあと4つとなった。

国際大会は9月のアジア選手権(韓国・平昌)と9月から10月にかけて開かれるアジア競技大会(中国・杭州)、国内は第6回選考会と年明けの全日本選手権だ。

アジア選手権には早田、平野、伊藤に加え木原美悠(木下グループ)、佐藤瞳(ミキハウス)、長﨑美柚(木下グループ)、張本美和(木下アカデミー)が出場。

アジア競技大会には早田と平野が出場し伊藤は出られない。そのため伊藤は最後の選考会と全日本選手権に向かって猛チャージをかける。

またTリーグのポイントも最後はジャブのように利いてくるはずで1点でも多く積み上げることが必須となる。

「黄金世代」と称される早田、平野、伊藤の3人に絞られてきたパリ五輪の女子代表争い。筋書きのないドラマは待った無しで結末へと突き進んでいく。


(文=高樹ミナ)

【第5回選考会 全農CUP東京大会 結果】
1位:早田ひな(日本生命)
2位:伊藤美誠(スターツ)
3位:平野美宇(木下グループ)
4位:大藤沙月(ミキハウス)
5位:安藤みなみ(トップおとめピンポンズ名古屋)
6位:張本美和(木下アカデミー)
7位:芝田沙季(ミキハウス)
8位:横井咲桜(ミキハウス)

五輪選考ポイント 女子上位10名(2023年7月24日現在)

順位 選手名(合計ポイント)
1位 早田ひな(597.58P)
2位 平野美宇(392P)
3位 伊藤美誠(365.5P)
4位 木原美悠(248P)
5位 張本美和(220.5P)
6位 佐藤瞳(205P)
7位 長﨑美柚(200P)
8位 芝田沙季(183P)
9位 大藤沙月(160P)
10位 森さくら(148.5P)