この第13戦ベルギーGPで、2023年のシーズン前半戦が終わり、F1は夏休みに入る。 第4戦アゼルバイジャンGP以降、ポイント獲得から遠ざかっているアルファタウリと角田裕毅としても、ここは明確な進歩を確認したうえで前半戦を締めくくりたいと…

 この第13戦ベルギーGPで、2023年のシーズン前半戦が終わり、F1は夏休みに入る。

 第4戦アゼルバイジャンGP以降、ポイント獲得から遠ざかっているアルファタウリと角田裕毅としても、ここは明確な進歩を確認したうえで前半戦を締めくくりたいところだ。



角田裕毅はフランツ・トスト代表とも話し合ったという

【あのレースから学べたこと】

 アルファタウリは第11戦イギリスGP、第12戦ハンガリーGPと立て続けにアップデートを投入し、AT04の抱える問題点を改善してきた。イギリスGPでは今ひとつ効果が感じられないと話していた角田だが、ハンガリーでは確実にその効果が出ているという手応えが感じられたようだ。

「FP1でフロントウイングを壊してしまったのでその評価はできませんでしたけど、リアウイングは間違いなく改善していましたし、マシンは着実に進歩していると思います。実際、ハンガリーではパフォーマンスはかなりよかった。ですけど、僕自身がうまくまとめ上げることができませんでした」

 ただしスパ・フランコルシャンは長いストレートのセクター1&3と同時に、高速コーナーが連続するセクター2がある。つまりダウンフォースと空気抵抗のバランスが問われるサーキットであり、空力効率が高いマシンが有利になる。その点、ハンガロリンクではわからなかったアップデートの効果も評価することができるはずだ。

 角田自身は予選でアタック直前にトラフィックに引っかかり、タイムをまとめきれずQ1敗退。決勝ではチームの戦略ミスが目立ったが、その点はレース後にしっかりと話し合って今後に向けた対策を講じてきたようだ。

「レース週末を通してマシンのポテンシャルを引き出しきることができなかったので、スタートで大きくポジションアップできた以外、あまりいいレースではありませんでした。チームとしてもあのレースから学べたことはあったと思いますし、1週間後にまたすぐにレースができるのはいいことだと思っています」

【スペインGPを最後に入賞圏外】

 一方、マシンのパフォーマンス改善もさることながら、このところレースが荒れていることも改善の必要な課題だと角田自身も理解している。

「シーズン序盤のパフォーマンスは満足のいくものでしたけど、ここ3戦は自分自身もとっ散らかったレースが続いている。ずっと改善努力をしている点ではありますが、無線交信だったりといった弱点も見えています」

 モナコGPでは入賞圏を走りながら、ブレーキ温度の問題で後退。スペインGPでは予選でのトラックリミット違反に始まり、決勝ではペナルティを科され、その対処を誤って無得点。

 カナダGPでは戦略ミス、オーストリアGPではトラフィックで予選をまとめられず、決勝では1周目に攻めすぎてマシンにダメージを負った。イギリスGPではマシンの競争力がなく、さらに決勝中にマシン挙動が不安定になる問題にも直面した。

 そしてハンガリーGPでは、雨のFP1で新型フロントウイングを壊して旧型を使用することになり、予選では最終アタックでタイムを更新できず0.013秒差でQ1敗退、それでも決勝では途中まで11位を堅守していたが、戦略がまずく後退してしまった。

 シーズン序盤5戦はほぼ完璧なレースで入賞圏を争っていたが、徐々に細かなミスが散見されるようになり、第8戦スペインGPを最後に入賞圏に絡むこともできなくなった。チームのミスも多々あったが、角田自身もミスを犯している。角田はその事実に向き合っているし、その原因も自己分析できている。

「序盤はマシンのパフォーマンスを引き出していくことに集中していて、そんなに前のめりになっていなかったんですが、最近はパフォーマンスが劣っているなかでポイント獲得を焦るあまり、ミスを犯すことが増えてきていると思います。

 去年に比べて今年の自分自身の進歩には満足しています。ですが一度、自分自身をリセットする必要がある。自分にできることに集中するべきだと思っています」

【後半戦を占うベルギーGP】

 それが最も顕著に表われたのが、前戦ハンガリーGPだった。

 角田は新加入のダニエル・リカルドより速さで上回っていたが、Q1でわずか0.013秒差で負けてQ2進出を逃した。そして決勝では、スタートで不運に見舞われたリカルドを逆転して11位に上がったものの、リカルドはそこから冷静なレース構築で完璧な戦略とタイヤマネージメントをこなし、気づけば13位まで浮上していた。一方の角田は、チームの戦略が「謎」というくらいチームと噛み合わないレースを見せてしまった。

 ベテランとはいえ新加入のリカルドがそれだけソツのないレース運びを見せただけに、角田としてもあらためて自分の優れた部分、足りない部分を見つめ直すいいキッカケになったのは間違いない。だからこそこうして、自分のミスも少なからずあることや、ポイント獲得を焦るあまり起きてしまっているミスであることを自己分析できているのだ。

 ベルギーGPはチャレンジングなスパ・フランコルシャン・サーキットで行なわれるうえに、スプリントレースが行なわれるため、たった1回のフリー走行で金曜午後には予選に臨まなければならない。さらには週末を通して雨の予報であり、チームもドライバーも完璧な仕事をこなすことが求められる環境が整っている。

 ここでミスを犯せば、取り返しのつかない低迷にもなり得る。その一方で完璧なレース週末にできれば、マシン性能以上の結果を掴み獲ることができる。それがスパ・フランコルシャンだ。

 夏休み前のシーズン折り返し地点で、角田裕毅とアルファタウリがどんな走りを見せるか。それは間違いなく、これからのシーズン後半戦を占うことになるはずだ。