フルトンとの対戦が迫る井上。日本が生んだモンスターに秘められた可能性を米記者が語った(C)Getty Images  絶対に見逃せない一戦が間近に迫っている。7月25日に東京・有明アリーナで、ボクシングの元バンタム級4…

 

フルトンとの対戦が迫る井上。日本が生んだモンスターに秘められた可能性を米記者が語った(C)Getty Images

 

 絶対に見逃せない一戦が間近に迫っている。7月25日に東京・有明アリーナで、ボクシングの元バンタム級4団体統一王者である井上尚弥(大橋)が、WBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(アメリカ)に挑む。

 2014年のプロデビュー以来21戦全勝(8KO)のフルトンは、サイズ、スキル、スピードを満遍なく備えたオールラウンダー。一階級を上げての初戦となる井上に対して、ナチュラルなサイズで上回っており、これまで24戦全勝(21KO)という快進撃を続けてきた“モンスター”にとっても「過去最高の難敵」という呼び声が高い。

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 井上のパワーか、フルトンのサイズ&適応能力か――。興味の尽きない決戦を前に、ラスベガス在住のボクシング・ジャーナリストであるショーン・ジッテル氏を直撃。厳格で知られる全米ボクシング記者協会(BWAA)からビデオグラファーとしては史上初のメンバー入りを果たし、確かな眼力を備えた新進気鋭のジャーナリストは、井上が激戦必至の一戦をいかに戦うと見ているのか。この試合に向けた展望を大いに語ってくれた。

※以下はジッテル氏の一人語り

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 勝敗を分ける鍵を探すとすれば、井上の爆発力がどんな効果を発揮するかでしょう。最高級のパワーとスピードを備えた井上は、ライト級で異彩を放つ“タンク”・デービスのような強者をも僅かに上回り、現役では最も爆発力のあるボクサーといえます。

 一時的にアウトボクシングをし、カウンターを決めることは可能ですが、井上の攻撃が一度でも波に乗ってしまえば、もう止めるのは難しい。そういった意味で彼はマニー・パッキャオ(フィリピン)と共通点があるように思える。全盛期のパッキャオのように多少遅れを取っても、相手に決定的なダメージを与えるパンチを当てれば、一気に形勢を変えられるのです。

 

このビッグマッチの秘めるポテンシャルを絶賛したジッテル氏は、勝負の行方も予想してくれた。写真:杉浦大介

 

 この対戦では、体格に勝るフルトンが効果的にアウトボクシングをするラウンドも少なからずある。それでも井上が有効打を決めれば、一気にペースを手繰り寄せることができるのではないでしょうか。彼は圧倒的なパワーアドバンテージによって、相手の膝を揺らせ、ノックダウンにつなげられる。

 一方でフルトンが勝つためには何が必要か。スピード、技術、そしてフィラデルフィアのボクサーらしいタフネスを武器に、完成されたアウトボクシングを続けなければなりません。具体的には、井上はワンツーを打つために両足を整えたとき、パンチの合間に顎がガラ空きになる瞬間があります。そこでタイミングよく左フックを合わせられれば、相手にフラストレーションを感じさせるはずだと考えます。

 私は、井上がキャリア最大級のタフファイトを制し、判定で勝利を飾ると思います。

 井上は2019年に行なわれたノニト・ドネア(フィリピン)との第1戦で彼は痛烈な左フックで致命的なダメージを受けましたが、フルトン戦ではそれ以上の苦闘を強いられるでしょう。井上にとって守備力が試され、試合を通して、相手のプレッシャーへのフラストレーションに対処できるかどうかの精神力も試される。試合後、井上の顔が苦闘を物語るものになっていると思います。

 それでも井上はいくつかの山場を演出し、最終的に地元で勝利を手繰り寄せると私は考えます。すべてにおいて、相手により大きなダメージを与えられるのは彼です。2021年11月のブランドン・フィゲロア(アメリカ)戦でのフルトンは接戦を抜け出し、際どい勝利を手にしましたが、この試合では“モンスター”の前にわずかに及ばず、ついに初黒星を喫すると私は見ています。

文:ショーン・ジッテル(FightHype.com)
翻訳・構成:杉浦大介


 

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