「渋谷オープンパラバドミントン2023」が6月25日、渋谷区スポーツセンターで開催された。キャリアの浅い選手から国際大会で活躍する次世代アスリート、ベテランまで25人が出場。参加人数の関係で、低身長SH6以外はクラスや男女を統合して実施。そ…

「渋谷オープンパラバドミントン2023」が6月25日、渋谷区スポーツセンターで開催された。キャリアの浅い選手から国際大会で活躍する次世代アスリート、ベテランまで25人が出場。参加人数の関係で、低身長SH6以外はクラスや男女を統合して実施。それぞれシングルスの総当たり戦を行い、頂点を争った。

東京2020パラリンピックで単複優勝を果たしたWH1の里見紗李奈、男子シングルスで優勝したWH2の梶原大暉も、かつて前身の渋谷区長杯に出場し、先輩たちと競い合い、世界の舞台へと駆け上がっていった。渋谷オープンはいわば「若手選手の登竜門」であり、今大会も多くの10代・20代の選手が活躍した。

【車いす・WH1-WH2】競技歴2年の大山廉織が制す!

車いすWH1は男子3人、女子1人、WH2は男子1人のエントリーとなり、コンバインドで実施。ともに全勝同士の戦いとなったWH1飯塚裕人とWH2大山廉織の戦いは、互いに勝負所で得点を決める接戦に。最後は大山が粘る飯塚を引き離し、21-18、21-16で優勝を果たした。大山と飯塚は、今季のスペイン国際やタイ国際といった国際大会でダブルスのペアを組む仲。それだけに「クラスは異なるが、飯塚選手は手ごわい相手だと分かっていた」と大山。「だからこそ、負けられない試合だった」とも話し、もつれる展開でも冷静にゲームメークできたことに手ごたえを感じた様子だった。


車いすクラスで優勝した大山廉織

大山はもともとバドミントンをしていたが、2019年に免疫疾患を患い車いす生活に。入院中にパラバドミントンの存在を知り、2021年から競技を始めたという。実は今大会は実弟の大山廉樹も出場。廉樹は後天的な上肢障がいを発症し、バドミントン未経験ながら兄と同じタイミングで競技に取り組み始め、今大会にはSU5で出場して3位に入った。大山は「兄弟だから、ダメなプレーをしたら言い合う。でも、褒め合うことはしないかな」と笑い、今後については「国際大会でメダルを獲れるよう、実力をつけていきたい」と話した。

なお、飯塚は大山以外にはストレートで勝利。唯一の女子選手でJPC次世代アスリート強化選手の友寄星名は、男子のなかで1勝を挙げるなど活躍した。

【下肢障がい・SL3、SL4】男子に交じり、女子選手のニューフェイスが奮闘!

SL3、SL4とも男女混合で実施。国内においてとくに競技人口が少ないとされるSL3はエントリーが4人に留まったが、待望の女子の新人選手ふたりが名を連ねる明るいニュースもあった。束原菜々香と武田佳乃は、日本パラバドミントン連盟(JPBF)が4月に開いた体験会に参加し、今大会初出場を叶えた。ともに男子選手には敗れたものの、直接対決ではフルセットにもつれる熱戦を繰り広げ、さらなる成長の可能性を示した。勝利した19歳の束原は、高校ではバドミントン部で汗を流した。女子では1位となってメダルが授与され、「初めてのメダル。嬉しいです」と笑顔を見せた。武田の存在について「たまたま体験会で一緒になって、たまたま障がいクラスも年齢も同じだった。すごく心強いし、これからライバル的な感じになると思うので、また試合をすることがあれば勝ちたいと思う」と、力強く話した。クラス全体では、両下肢義足の山口雄介が軽快なフットワークを見せ、全勝でトップに立った。


共に初出場の束原菜々香(左)と武田佳乃

SL4は、昨年の日本選手権準優勝の濱田健一が全試合で圧巻のストレート勝ちをおさめ、優勝を果たした。また、女子の澤田詩歩が男子に交じって2勝と、存在感を放った。澤田は2021年のアジアユースパラ競技大会(バーレーン)のSL4女子シングルスの金メダリスト。現在はJPC次世代アスリート強化選手に選ばれ、今季はタイ国際で3位に入るなど日の丸をつけて活躍中だ。このクラスの女子は、東京2020パラリンピック5位の藤野遼がけん引する。藤野には昨年の日本選手権で敗れており、「遼さんに勝つことが最大の目標。今季また対戦する機会があると思うので、しっかり練習して勝てるようになりたい」と、言葉に力を込めた。

【上肢障がい・SU5】ベテラン正垣源が、若手の挑戦を退ける!

SU5は男女あわせて5人がエントリー。経験豊富な正垣源が、JPC次世代アスリート強化選手の奈良時雅ら若手選手の挑戦を退け、優勝した。昨季限りで第一線を退いた元日本代表の正垣は、職場環境の変化により、練習や調整が不足していたというが、高精度のショットと経験に基づく試合運びで主導権を握り、4試合すべてでストレート勝ち。「不安はあったけれど何とか対応できた。ホッとしました」と笑顔を見せた。


上肢障がいのクラスを制したベテランの正垣源

昨年の日本選手権後から、利き足ではない左足の股関節の深部の柔軟性を鍛えることを意識してきたという正垣。今年3月でアスリート雇用の環境から離れ、生活拠点も兵庫県から東京都に移すなど新しいステージでの日々を送るが、そのトレーニングは継続しており、「動き出しの一瞬のところとか、身体の使い方はうまくなったかなと思う」と話す。来年1月の日本選手権は東京・町田で開催予定のため出場を視野に入れているといい、これから自分なりのバドミントンとの関わりを模索していくつもりだ。

なお、女子は鈴木麗美那が勝利はならなかったものの、男子を相手に奮闘した。鈴木もJPC次世代アスリート強化選手のひとりで、今後のさらなる成長が期待される。

【低身長・SH6】男子は上野、女子は杉本が優勝!

SH6は男子3人、女子3人がエントリーし、今大会で唯一、男子と女子それぞれで試合が成立した。男子は昨年2位でJPC次世代アスリート強化選手の上野智哉が全勝優勝を果たし、女子も初出場の杉本沙弥佳がすべての試合で勝利をおさめた。SH6のJPBF強化指定選手は畠山洋平のみ。男女ともこのクラスの選手発掘と育成が続くなかで、計6人が参加したことの意義は大きい。女子を制した杉本は、「低身長のクラスがあると聞いて、今回出場した。楽しみながら競技を続け、次に大会に出ることがあれば優勝を目指したい」と話し、前を向いていた。


女子の低身長クラスで優勝した杉本沙弥佳(中央)