ボストン・セルティックスのマーカス・スマートはワシントン・ウィザーズ、メンフィス・グリズリーズが関与した3チームによるトレー…

 ボストン・セルティックスのマーカス・スマートはワシントン・ウィザーズ、メンフィス・グリズリーズが関与した3チームによるトレードの末、グリズリーズへの移籍が決定した。

 トレードが実現する1週間前、スマートはバスケットボール運営部代表兼ゼネラルマネージャーのブラッド・スティーブンス氏から「安全だ」と告げられていた。しかし、トレード候補だった2022-23シーズンのシックスマン賞、マルコム・ブログトンのコンディション懸念により、事態は急変。セルティックスには急遽代案が求められ、結果としてスマートを差し出すという苦渋の決断を下した。

 スマートはこの急展開を受けて、正直にショックを受けたことを明かした。

「確かに、このような形で移籍を知るのは衝撃だった。僕らは残留を望んでいたからね。でも、ビジネス的な側面があるのは理解している。僕は『個人的な感情をビジネスに持ち込んではいけない』と何度も言ってきた。それがうまくいくはずもないからね。もし私情を持ち込んだら、自分を傷つけてしまう。僕はこれがビジネスだとわかっているよ」

「僕にとっては、ただの礼儀の欠如の問題だ。彼らはすでに、僕をトレードしようと考えたのかもしれない。何かに備えて、このトレードをあらかじめ準備していた可能性もある。『君のトレードを考えている。おそらくトレードすることになるだろう。それを知らせたかった』と言ってもらえていたらね。1週間前には安全だと言われていた自宅が浸水したような気持ちだよ。一度に多くのことが起きすぎた」

 決断を下したスティーブンス氏にとっても、スマートのトレードは簡単なものではなかった。2人の関係は、スティーブンス氏がセルティックスのヘッドコーチ2年目にあたる2014-15シーズンに始まった。ルーキー時代から苦楽をともにしてきた選手との別れは、言葉にできないほどの辛さがあったに違いない。彼は愛弟子のトレードについて、以下のように説明した。

「本当に難しい決断でした。夏のはじめに言ったように、ロスターのバランスを取る必要があり、最善の方法を模索する必要がありました。すなわち、これは非常に優れた選手を失うことを意味します。マーカスに関しては、彼が入団した直前のシーズンは25勝57敗という成績でした。残すべき彼のレガシーは、彼のおかげで球団が発展したことです。我々全員がそう感じています。彼はいつまでもボストンから感謝され、心から思い出される存在でしょう」

「人々は彼のプレースタイルと闘志を愛していますが、彼のコミュニティへの貢献も評価しています。彼が去ることは悲しいですが、彼がメンフィスに大きな影響を与えると確信しています。本当に、本当に、とても難しい決断でした」

 また、スマートは退団にあたり、ファンの間でささやかれているジェイレン・ブラウンとの確執についても明確に否定。立つ鳥は跡を濁さない。

「ジェイソン(・テイタム)とジェイレンは僕の兄弟で、みんなが見ている以上に、僕らの関係は素晴らしいものだった。僕らはたくさんの困難を乗り越えてきた。僕の母が亡くなった時、JB(ブラウンの愛称)は同じ飛行機にいて、ダラスでの葬儀に来てくれた。だから、僕はジェイレンとの確執の噂を否定する。セルティックスの誰とも確執は存在しない。僕は仲間を愛していて、彼らも僕を愛している。僕とJBの関係は素晴らしいものだよ。実際は、彼は僕にテキストを送ってきて、僕と同じように悲しんでくれたんだ」

 スマートは、セルティックスの時間に感謝しており、彼の心からボストンの誇りが失われることはない。しかし、この素晴らしい9年間にも後悔はあるという。

「唯一の後悔は、ボストンに所属している間にチャンピオンシップを獲得できなかったことだ。でも、それを除けば、僕はこの旅路を楽しんだ」

 スマートは新天地で、ジャ・モラントをはじめとするヤングコアのメンターとなり、大学以来のメンフィス帰還を果たすデリック・ローズとロッカールームのリーダーシップを任されることが予想される。別れが両者をより強くし、いつか成長した姿でNBAのリングを争う日が来るかもしれない。

文=Meiji

【動画】マーカス・スマート セルティックスの“魂”として活躍