登山YouTuber・安涼奈(アリョーナ) インタビュー後編(全2回)登山を始めて約2年半ながら、日本各地の山を歩き回っ…
登山YouTuber・安涼奈(アリョーナ) インタビュー後編(全2回)
登山を始めて約2年半ながら、日本各地の山を歩き回っているロシア出身の登山YouTuber・安涼奈(アリョーナ)さん。今まで登ってきて一番好きな山は?と聞かれることも多いようだが「山に順位なんてつけられないです!」と即答。どの山にもそれぞれ魅力があり、さまざまなエピソードがあるという。今回は、そのなかでも思い出深い「忘れられない山」を5つ紹介してもらった。

登山YouTuberとして活動する安涼奈さん
<丹沢・大山>初めての本格登山、雪景色に感動
安涼奈(以下、同) 2021年1月、本格的に登った初めての山です。ケーブルカーを使わずに、男坂と女坂があるうち女坂のほうを登ったんですよね。この時は珍しく雪が積もっていて、雪景色とか霧氷とか、なかなか見る機会のないすばらしい景色を見ることができました。天気がとてもよくて、眺めもすばらしかったです。
それから何度も登っているけれど、大山ってアクセスがしやすくて登山道も整備されて登りやすいのに、標高はそこそこあるし、自然が豊かで観光地化されすぎてなくて、しっかり「山」なんですよね。

大山にて
写真提供/安涼奈(以下、登山の写真すべて)
初めて登山をする人......しっかり山を登ってみたいと思う初心者の人におすすめできる山です。私も友達に相談されたら「まずは大山を登ってみれば?」っておすすめします。
山頂からの景色は、日中もいいですが、夕日や夜景もきれいですよ。登山道が整備されているので、登山の経験がある人ならヘッドライトをつけて暗い時間に登ってみるのもいいと思います。
●大山(標高1252m、神奈川県)
【解説】神奈川県西部、丹沢山塊の左端に位置する山で、きれいな三角形の山容はわかりやすい。霊山として信仰を集めてきた山で、山の中腹には大山寺、阿夫利神社が建つ。山頂からの景色もよく、相模湾から江ノ島、三浦半島、房総半島まで見渡せる。
【参考コースタイム】約3時間30分(大山ケーブルバス停〜女坂〜阿夫利神社下社〜大山〜イタツミ尾根〜ヤビツ峠)
<北アルプス・裏銀座縦走>絶景満喫、出会いも楽しんだ3泊4日
高瀬ダムから入って槍ヶ岳に向かう縦走で、4日間かけて歩きました。4日間も山の中の道を歩けるなんて、すごくぜいたくなことですよね。ルートの途中に山小屋が数時間おきにあるので、いざという時にも心強いです。
水晶岳に立った時、小さく槍ヶ岳が見えて、明後日に私は本当にあそこに立てているのかしら?と思いました。実際に槍ヶ岳の山頂に立てた時に、本当に登れたんだって実感もすごくて。感動が大きいルートですよね。

槍ヶ岳にて
大変だったけど景色はすばらしかったし、たくさんの登山者との出会いも楽しかったです。いまだに仲良くしている人も何人かいますよ。
この時は1日目の行程が一番大変で、高瀬ダムから水晶小屋まで10時間ぐらい歩きました。野口五郎小屋に泊まりたかったけど、満室で予約ができなかったんです。このルートを歩く人には、早めの予約で野口五郎小屋泊まりをおすすめしたいですね。
●裏銀座縦走(標高3180m=槍ヶ岳、富山県・長野県・岐阜県)
【解説】高瀬ダムから槍ヶ岳に至る、北アルプスを代表する縦走ルートのひとつ。徐々に近づいてくる槍ヶ岳の景観や、稜線からの山々の展望がすばらしく、道中には水晶岳、鷲羽岳、槍ヶ岳と3つの日本百名山がある。
【参考コースタイム】約34時間(3泊4日/高瀬ダム〜烏帽子岳〜水晶岳〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳〜槍ヶ岳〜上高地)

<北アルプス・笠ヶ岳>激しい登りの先に絶景、予想外のトラブルも
笠新道から登って、笠ヶ岳山荘に1泊しました。登山道は急で大変だったけど、登ってきて稜線から見える槍ヶ岳や穂高連峰の景色は本当にきれいでした。登ってきた1日目は天気がすごくよかったんですよ。
実は、この山行で初めて夜行の登山バスを使って登山口に入ったんです。私は夜行バスで眠れないタイプですし、体力が必要な山なのに大丈夫かなって不安に思っていましたが、意外と歩けたし大丈夫でした。

笠ヶ岳にて
この時は、撮影に使っていた携帯電話が不具合を起こして、画面がつかなくなってしまったんです。携帯電話が使えないと電車やバスの時間も調べられないし地図アプリも使えない。
天気もよくて、こんなにいい山を歩いているのに、それを画像に残すことができない。山の表情はその時にしか出合えないものなのに......。絶望的な気持ちになりましたが、同じルートを歩いていた方が使っていない携帯電話を貸してくれたので撮影ができました。それ以来、予備のツールを持つようにしています。
●笠ヶ岳(標高2898m、岐阜県)
【解説】奥飛騨を代表する名峰のひとつで、北アルプス周辺からは名前のとおり笠を伏せたような美しい山容が眺められる。蒲田川を挟んで槍ヶ岳・穂高連峰と向き合っており、山頂や稜線からの景色もすばらしい。
【参考コースタイム】約14時間30分(1泊2日/新穂高温泉バス停〜笠新道〜笠ヶ岳山荘〜笠ヶ岳〜往路を戻る〜新穂高バス停)

<南アルプス・赤石岳>神様が味方してくれた好天
悪沢岳と赤石岳、聖岳を4日間で縦走する予定でしたが、天気予報があまりにもよくなかったんですよね。普段はこれだけ天気予報が悪かったら行かないですが、交通や宿泊のキャンセル料もだいぶかかるし、この年に引退が決まっていた赤石岳避難小屋の名物管理人の榎田善行さんに会いたくて、行くことにしました。
初日は曇りで、椹島から千枚小屋まで。2日目は天気が悪くて、悪沢岳のあたりでは展望がよいはずがガスで真っ白。雨に降られてすれ違う人もいなくてしょんぼりしながら歩いてたら、親子のライチョウが現れてくれましたよ。

赤石岳にて
赤石岳避難小屋に着いて、みんなで食事をしてたら榎田さんが「晴れたよー」って。外に出てみたら一瞬天気がよくなっていて、来た道が全部見えたんですよね。
3日目は予定を変更して、聖岳には行かずに下山しました。天気予報はすごく悪かったのに、朝起きたらいい天気! 朝焼けがきれいで、富士山も眺められて。山の神様が味方してくれたなぁって思いました。
南アルプスって登山口までが遠いし、きついから足を運ばない人も多いと思うけど、3000m級の稜線が緑に覆われて、花がたくさん咲いているのって、岩場の多い北アルプスとは全く違う景色。南アルプスならではの景色なんですよね。
●赤石岳(標高3121m、静岡県・長野県)
【解説】3000m級の山々が連なる南アルプスのなかで、盟主ともいえる存在感を持つ山。山頂からは360度の展望で、南アルプスの山々から富士山、八ケ岳、中央アルプス、北アルプスなど日本の名峰を一望。荒川岳や聖岳などと縦走をする登山者も多い。
【参考コースタイム】約19時間40分(2泊3日/椹島登山口〜千枚小屋〜悪沢岳〜赤石岳〜椹島登山口)

<三国山脈・巻機山>遅め出発が功を奏し、上越の大展望
初めて登った新潟県の山ですね。山頂から見える上越の山々の景色が感動的すぎました。標高が2000m台だけど、山頂近くは木々がなくて眺めがすごくいいんですよ。
訪れたのは2022年6月で、多少曇っていても花が楽しめると思っていましたが、湿原にミズバショウがたくさん咲いていました。

巻機山にて
前日に山麓に泊まって、日帰りで登りました。歩き始めは曇っていて霧に覆われていたけれど、歩いているうちにだんだん霧が晴れてきて、最終的にはめっちゃ晴れたんですよね。路線バスで登山口に行ったので、車で登山口まで来ている他の登山者より出発が遅かったんです。
登って行く時にすれ違う人たちはみんな「ガスで何も見えなかった」ってがっかりした顔で下りてきていました。バス利用でスタートが少し遅かったおかげで、本当にいいタイミングで霧が晴れてくれました。山頂に着いた時は私しかいなくて、絶景を貸し切りで楽しんじゃいました。
●巻機山(標高1967m、新潟県・群馬県)
【解説】上越を代表する、たおやかな山容の山。機織りが盛んな新潟県魚沼地方で、機織りの神様として信仰されていた。山麓の美しい原生林、頂上付近の地溏群などの景観がすばらしく、山頂からは谷川連峰や越後の山々が一望に見渡せる。
【参考コースタイム】約11時間(清水〜桜坂駐車場〜巻機山〜牛ヶ岳〜往路を戻る)

前編<安涼奈が日本の山の魅力を発信する理由>
【プロフィール】
安涼奈 アリョーナ
南ロシア出身。2014年に来日。東京大学法学部卒業、東大公共政策大学院修了。大学時代からモデルとしても活動し、現在は山梨県内のワイナリーに勤務。2021年から本格的に登山を始め、日本各地の山へ登っている。YouTubeチャンネル『安涼奈の山登り』で登山の魅力を発信中。