優勝カップを手にした児玉碧衣(28歳) GⅠ初代女王として歴史に名を刻んだ【3日間トップを譲らぬ完全V】 6月13~15日、ガールズケイリン史上初のGⅠ開催「第1回パールカップ」が岸和田競輪場で開催された。このレースを制し「初代女王」の称号…


優勝カップを手にした児玉碧衣(28歳)

 GⅠ初代女王として歴史に名を刻んだ

【3日間トップを譲らぬ完全V】

 6月13~15日、ガールズケイリン史上初のGⅠ開催「第1回パールカップ」が岸和田競輪場で開催された。このレースを制し「初代女王」の称号を手にしたのは、児玉碧衣。予選からの3レースを全て1着で駆け抜け、完全優勝を成し遂げた。

 パールカップは東西から14名ずつ選抜された選手によって争われる東西対抗戦方式で、東西別で行なわれた予選・準決勝を勝ち抜いた7選手が決勝へと駒を進める。決勝で勝利すればGⅠ女王の名誉と年末の「ガールズグランプリ」(GP)の出場権が得られる、これまでにない大きな価値を持った開催に位置づけられた。

 予選・準決勝では東西ともに2日連続1着と好パフォーマンスの児玉碧衣(福岡)と久米詩(静岡)が存在感を強めたが、試合前には選手が軒並み「全員が動けるレース」と評するほど実力者ぞろいのメンバー構成に。ガールズケイリン初のGⅠともあって、王座の行方には大いに注目が集まった。

 レースは「前々から攻める」との予告どおりに荒牧聖未(栃木)が先頭に立ち、鐘が鳴ると同時にスローペースながらも少しずつ動き始める。「逃げる準備もまくる準備もしていた」という児玉は5番手でレースを進めていたが、周囲の動きに素早く反応すると、ホームストレッチで猛然と先頭に躍り出た。

「ここしかないと思って思いっきり踏みました」との言葉どおりに後続を一気に突き放すと、あっという間にセーフティーリードを形成。最後までその勢いは衰えず、2番手で追いすがる久米を4車身離しての圧勝に。表彰式では「納得いくレースができた」と、笑顔で充実感を漂わせた。




ホームストレッチで一気に仕掛けた児玉(白・1番車)

【鎖骨骨折による不振から完全復活】

 パールカップでは堂々たる走りで栄冠を勝ち取った児玉だが、2023年は苦しい序盤戦を過ごした。昨年末のガールズグランプリで落車し、左鎖骨を粉砕骨折。1月末には復帰を果たしたものの本来のパフォーマンスからは程遠く、成績も振るわなかった。

 当時は「もうトップでは戦えないのかもしれない」と感じるほどの不安に襲われたが、懸命の調整によって徐々に復調。患部に入っていたワイヤーを抜く手術を経てからは「いつも通り走れている」と手応えを感じる走りで連勝を重ね、大舞台に臨んだ。

 この日は断続的に雨が降る安定しない天候で「風はかなり強く感じたし、バンクも少し重たかった」と、決して走りやすいコンディションではなかったが、鋭い勝負勘で仕掛け所を逃さず、完全復活を印象づけるレースを披露した。

 会見では「何もせずに終わるよりは何かして終わりたかった。初日、2日目と1着で(決勝に)来られたことが自信になって、迷わず踏み込めた」と、メンタル面も勝因のひとつに挙げた児玉。

 2018年からガールズグランプリを3連覇するなどガールズケイリン屈指の実力者が苦難の時期を乗り越えて掴んだ完全優勝。「今後の自分の成長にも繋がる」と、さらなる飛躍を見据えた。

【GP出場へ争奪戦激化】

 初のGⅠを「3日間気持ちいい走りができた」と総括した女王は、7選手だけがスタートラインに立てる年末のガールズグランプリの出場権も獲得。全選手で一番乗りの切符に「獲得賞金では苦しい位置にいるので、(パールカップを)獲るしかないと思っていた」と、安堵の表情を見せた。


笑顔の児玉

 圧倒的な勝利で完全復活をアピール

 これまでは11月までグランプリ出場権争いが繰り広げられてきただけに、児玉が手にした約半年の猶予が本番に向けた調整で大きな価値を持つことは想像に難くない。

 ガールズケイリンに新設されたGⅠ開催は残すところ10月のオールガールズクラシック(※)、そして11月の競輪祭女子王座戦のふたつ。グランプリ直通となるGⅠタイトルのその2枠は全選手の目標となるとともに、残り4枠になる出場権争いも必然的に激化していく。
※2024年は4月開催

 今年から大きく改革されたガールズケイリン。その象徴のひとつとなった今回のレースは、想像以上に大きな注目を集めた。GⅠという格付けと価値は、選手たちの気持ちに大小さまざまな変化をもたらしたようで、なかには、思うように調子が上がらない選手もいれば、コンディションを大きく崩した選手もいた。

 しかし出場したすべての選手が、力を振り絞ってゴール線まで踏み込み続けた。強い気持ちのぶつかり合いが見る者を熱くさせた今回の「パールカップ」。ガールズケイリンGⅠ戦線から、今後も目が離せない。

【Profile】
児玉碧衣(こだま・あおい)
1995年5月8日生まれ、福岡県出身。身長168.6cm、体重66.5kg。高校までバレーボールに励み、高校卒業後に競輪学校(現日本競輪選手養成所)に入学。成績2位で卒業し、2015年7月に競輪デビュー。翌月には初優勝を飾る。以降数々の勝利を重ね、2018年にガールズグランプリで初優勝すると、2019年、2020年も制覇。2023年6月、ガールズケイリン初のGⅠレース「パールカップ」の初代女王となった。