今年のドラフト戦線は「大学生豊作年」と言われている。佐々木朗希(ロッテ)や宮城大弥(オリックス)と同年齢の好素材たちが、大学のステージで雨後の筍のごとく台頭している。 6月5日に開幕した全日本大学野球選手権に出場している27校のなかから、…

 今年のドラフト戦線は「大学生豊作年」と言われている。佐々木朗希(ロッテ)や宮城大弥(オリックス)と同年齢の好素材たちが、大学のステージで雨後の筍のごとく台頭している。

 6月5日に開幕した全日本大学野球選手権に出場している27校のなかから、大学4年生のドラフト候補を中心に注目選手をピックアップしていこう。



今春のリーグ戦で3本塁打を放った明治大の主砲・上田希由翔

【逸材ひしめく大本命・明治大】

 まず、優勝候補の大本命に挙がるのは明治大だ。東京六大学リーグで3連覇、しかも今春は勝ち点5の完全優勝を飾ったように死角はない。

 野手の目玉になりそうなのが、主砲の上田希由翔(きゅうと)だ。身長183センチ、体重93キロとたくましい体躯の左打者だが、パワーだけでなく確実性も併せ持つ。今春はリーグ戦12試合で打率.372、3本塁打、12打点と安定した成績を残した。上のレベルでは「打率を残せる中距離打者」としての青写真が描ける。盗塁可能な俊足という、意外な武器も隠し持つ。

 3年生ながら早くも来年のドラフトで争奪戦が繰り広げられると予想されているのが、宗山塁だ。打席で構えるだけで絵になる打撃に、遊撃手としての華麗なフィールディング。そのスター性は一見の価値がある。3番・宗山、4番・上田の中軸に加え、大学球界きってのスピードスター・飯森大慈(3年)が上位でかき回す。選手層の厚さも大学屈指だろう。

 投手陣は村田賢一、蒔田稔、石原勇輝のドラフト候補トリオが君臨する。村田は一見凄みはないものの、総合力は天下一品。大学生相手に打ち込まれるイメージが湧いてこない。石原は最終学年にかけて台頭した本格派左腕で、そのスケール感はドラフト上位戦線を脅かすものがある。

 明治大は大会3日目に東農大北海道と日本体育大の勝者と対戦する。

 明治大の対抗馬に挙げたいのは青山学院大だ。群雄割拠の東都大学リーグを17年ぶりに制した強豪は、常廣羽也斗、下村海翔(かいと)という右投手の両雄を擁する。

 常廣は長身痩躯の体型から右腕をしなやかに振って、打者に向かって加速するような好球質のストレートを投げ込む。将来性も高く、今年のドラフト戦線の顔になり得るポテンシャルの持ち主だ。

 一方、現時点での状態のよさなら下村だろう。今春は発熱で登板回避した常廣の穴を埋めるなど、3勝0敗、防御率0.85と安定感が際立った。身長174センチと上背はないものの、快速球と高精度のスライダーを操りゲームメイク力が高い。

 野手も多士済々で、俊足好打の中堅手・中島大輔には今年に入って力強さが増してきた。3年生スラッガーの佐々木泰のフルスイングは、ひと目見ただけで笑いがこみ上げるほど迫力満点だ。

 青山学院大は大会2日目に国際武道大と広島経済大の勝者と対戦。明治大とは決勝戦まで対決しない組み合わせだ。

【無名の実力派が大集結】

 優勝争いに割って入るだけの役者が揃うのは、大阪商業大だ。上田大河、高太一、野中太陽のドラフト候補三本柱が全国舞台で実力を発揮できるか。とくに上田は剛速球だけでなく、変化球のバリエーションが多彩で全国大会の経験も豊富だ。ただし、今春のリーグ戦では3投手ともインパクトのある結果は残せなかっただけに、大舞台で存在感を見せたい。

 また、野手では広角に力強い打球を弾き返す3年生外野手の渡部聖弥が看板選手。渡部は広陵高の同期である明治大・宗山とともに、今後2年間は大学日本代表の核になっていくだろう。

 その大阪商業大と大会初日に対戦する星槎道都大には、滝田一希というドラフト候補左腕がいる。

 無名の寿都高では支部予選すら突破できなかったが、大学進学後に最速153キロをマークして一躍ドラフト候補に。独特なリズム感のモーションから放たれる快速球と空振りを奪えるチェンジアップが光る。

 大阪商業大と星槎道都大が激突する初日の第4試合には、東京ドームのバックネット裏にプロスカウトが集結するだろう。

 ほかにも左投手なら古謝樹(桐蔭横浜大)、右投手なら楠本宏武(九州産業大)、大山凌(東日本国際大)といった好投手もチェックしておきたい。

 とくに古謝は力感ないフォームから生きた球質のストレートが投げられる隠れた実力派。今大会でブレークし、一躍ドラフト上位戦線に浮上しても不思議ではない。大会2日目に仙台大との好カードが組まれているだけに、見逃せない。

 野手では機敏な動きを売りにする選手が目立つ。遊撃手なら辻本倫太郎(仙台大)、松浦佑星(日本体育大)、外野手なら福島圭音(白鷗大)が挙がる。

 辻本は小柄ながら1歩目のスピードと身のこなしのキレが際立ち、松浦は奔放かつ本能的な走攻守が目を引く。ただし、松浦はリーグ戦で負った故障が心配される。

 福島は今春の関甲新学生リーグ9試合で驚異の20盗塁を記録したスピードスター。勝利への執念をむき出しにしたハングリーなプレースタイルは、チームに勢いをもたらす。リーグ戦打率.526とバットコントロールもいいだけに、鮮烈な印象を残すだろう。白鷗大は大会2日目に環太平洋大と大阪公立大の勝者と対戦する。

 激戦区・関西学生リーグを制した近畿大には、智辯学園高時代から名を馳せた坂下翔馬がいる。簡単にはアウトにならない粘りは驚異的で、今春は出塁率.590をマーク。主力選手の多くが抜け、前評判の高くなかったチームをリーグ優勝に導いたリーダーシップも魅力だ。近畿大は大会初日に福井工業大と対戦する。

 最後に紹介したいのは3年生の怪腕。環太平洋大の徳山一翔だ。昨秋の明治神宮大会で突如出現した左腕で、球速以上に速く見えるストレートは大学トップクラスだろう。今後どこまで進化するのか、追い続けたい存在だ。

 ほかにも新たなニュースターが誕生する可能性は十分にある。大学最高峰の戦いから目が離せない。