「世界卓球2023南アフリカ(個人戦)」<5月20~28日/ダーバン>を来週に控えた日本代表選手団が12日、大会直前合宿中の味の素ナショナルトレーニングセンターで公開練習と記者会見に臨んだ。

 前日の11日には篠塚大登(愛知工業大学)が腰痛のため出場を辞退。大会直前のこのタイミングに棄権というショッキングな発表があったばかりだ。

また今日の午前中、伊藤美誠(スターツ)が公開練習を不参加。先週末の全農CUP平塚大会(6~7日)で明かした臀部の痛みについて、その後の状態を説明した。

「今は治療に専念しているので練習はしていない。動いていなければ大丈夫なんですけど、動いたときに痛みが出てしまうので悪化しないようにしています」

 痛みがあるのは左臀部。「少しずつ良くなってきてはいる」と話すが、合宿にも参加せずケアに努めているという。

まさに満身創痍。十分な練習ができないまま世界卓球の大舞台に立つ伊藤の不安は計り知れない。

 その中でも女子シングルスでは自身初の世界卓球メダル獲得を目指し、早田ひな(日本生命)とペアを組む女子ダブルスは2019年のブダペスト大会、2021年のヒューストン大会で孫穎莎/王曼昱(中国)ペアに敗れ銀メダルに甘んじたリベンジに懸ける。

伊藤は「(3月の)WTTシンガポールスマッシュから1回も組んでいないんですけど、自分の状態が良ければ大丈夫。それくらい早田選手とのダブルスには自信がある」と雪辱を誓った。

 午後の記者会見には男子代表の張本智和(智和企画)、戸上隼輔(明治大学)、及川瑞基(木下グループ)、吉村真晴(TEAM MAHARU)、宇田幸矢(明治大学)。女子代表の伊藤、早田ひな(日本生命)、木原美悠、平野美宇、長﨑美柚(いずれも木下グループ)、そして男子代表の田㔟邦史監督、女子代表の渡辺武弘監督が登壇した。

 男子ダブルスでペアを組むはずだった篠塚を欠き、吉村真晴とペアを組むことになったエースの張本は「篠塚選手の思いも背負って頑張りたい」と言い、「今回の目標は3種目全てでメダルを獲得すること。そして何より日本の最大の目標であるシングルスでのメダルを念頭に置いている」と明言。

 田㔟監督も男子は今大会で3つの目標を掲げていると言い、「出場する全ての種目で金メダルを目指すこと」「WBC日本代表のようにチーム一丸の姿勢で戦うこと」「篠塚の分もみんなで頑張ること」と話した。

張本は会見前の公開練習時に、世界卓球2021ヒューストンで銀メダルだった早田との混合ダブルスにも言及しており、「僕たちのペアはメダルはマスト。金メダルを期待されていることは自分でも分かっている。まずは決勝まで行って(ヒューストン大会で金メダルの)王楚欽選手と孫穎莎選手のペアに勝てるように100%以上のプレーを2人でやっていきたい」とリベンジを誓った。

張本と早田が金メダルに届けば、世界卓球2017ドイツで日本勢48年ぶりの世界卓球金メダルに輝いた吉村真晴(TEAM MAHARU)と、今月1日に現役引退を発表した石川佳純(全農)さんペアに次ぐ快挙となる。

 早田は直前合宿で解消できた課題があると報告した。

「ピッチが速くなってきたときに自分のプレーしている位置が想像以上にバラバラになってしまっていたが、位置感覚を捉えることができた。特にラリーで追い込まれたとき展開を変えていくためにも位置感覚は大事」

 早田も3種目に出場するためハードなスケジュールになるが、「女子ダブルスと混合ダブルスは金メダルを目標に。女子シングルスはベスト4決定戦で中国人選手と当たる組み合わせになると思うので、最低でもメダル獲得、そして金メダルを目標に最後まで怪我なく笑顔で終わりたい」と語った。

 そして、この男。マイクパフォーマンスが定番になりつつある戸上隼輔(明治大学)は「元気ですかー!」と開口一番。会見場を和ませた。
「シングルスでもダブルスでも金メダルを目指して頑張りたい」と戸上。

篠塚の代替選手として、男子ダブルスに加えシングルスと混合ダブルスにも出場することとなった明治大学の盟友・宇田幸矢も「全種目メダルを目指し、(特に男子ダブルスでは)金メダルを持って帰ってきたい」と前回、銅メダルだったヒューストン大会を上回る意気込みを見せた。

 状態が良く表情も明るいのは、世界卓球2017ドイツで当時、48年ぶりとなる女子シングルスのメダル(銅)を日本にもたらした平野だ。

「試合感覚はいいと思うので、あとは選考会で足りなかったところ、例えばサーブ・レシーブやコースの精度を高める練習をしている」と言う平野。

さらに「昔に比べると速さだけじゃなく、緻密なプレーをしているので注目してほしい」「戦い方も一つじゃなくて戦術の幅が広がり、いろんなことができるようになったかなと思う。1試合でも多く試合ができるように、楽しんで1試合ずつ頑張っていきたい」と再びの活躍を誓った。

 卓球日本代表選手団は15日に日本を発ちダーバンへ向かう。