東大は6日、東京六大学春季リーグの立大1回戦に6-6で引き分けた。1-6とリードされた8回、1点を返した後、2死満塁で…
東大は6日、東京六大学春季リーグの立大1回戦に6-6で引き分けた。1-6とリードされた8回、1点を返した後、2死満塁で8番打者の山口真之介内野手(3年)が起死回生の同点アーチを放った。東大選手の満塁本塁打はリーグ戦史上、1984年春の法大2回戦での朝木秀樹以来、39年ぶり2本目。歴史的な1発が、チームを崖っぷちからよみがえらせた。
奇跡の満塁弾の直前、虫が知らせたのか、相手の立大・溝口智成監督はタイムを取り、マウンドへ駆け寄った。4番手の右腕・小畠一心投手(2年)に「満塁ホームランだけはダメだぞ。それ以外ならいい。ヒットを打たれたとしても、まだ2点差だから」と注意を与えたという。そのインターバルの間、山口真は盛り上がる東大応援席の風景を眺めながら、「かっこいいな、うれしいな」と考えていた。
こうして左打席に入った山口真が、いきなり初球をとらえる。外角を狙った小畠のストレートが真ん中へ吸い寄せられたところを、フルスイング。「狙っていた球でした。感触が良くて、右翼手は超えたと思ったので必死に走りました。スタンドに入ってくれて、めちゃくちゃうれしいです」と声を弾ませた。大学入学後は練習試合を含めても初本塁打とあって、興奮を隠せなかったのも無理はない。
山口真は今季、3年生にしてリーグ戦デビューを果たしたばかり。堅実な二塁守備を買われレギュラーの座を獲得したが、打順はもっぱら8番。試合前の時点では、打率.100(10打数1安打)、本塁打と打点は0だった。それでも、井手峻監督の病気療養を受けて指揮を執っている大久保裕監督代行(助監督)は「山口真はもともと打撃も悪くない。シーズンの出足はバットが振れていなかったが、最近はヘッドが走るようになり、試合前のフリー打撃でも状態が良かった」と見ていた。この日、2回2死二塁のチャンスにリーグ戦2本目のヒット(右前打)を放ったが、二塁走者が本塁で右翼手の好返球に刺され、初打点を逃していた。

山口真は都立小山台高の出身。チームが東東京大会決勝まで進出した3年夏、自身は背番号19でベンチを温めていた。高校通算本塁打は2本だそうで、「こんなにちゃんとしたスタンドのある球場で打ったのは初めて。満塁ホームランはおそらく人生初です」と笑う。
一方、打たれた小畠は奈良・智弁学園高で甲子園に4度も出場し(コロナ禍の中で行われた2020年の交流試合を含む)、3年夏には全国準優勝を果たしている。東大だからこそ、こんな“下剋上”が起こる可能性がある。また、山口真は薬学部に在籍しており、「人の体、内臓に興味があります。卒業後は大学院に進み、研究者になれたらいいなと思っています」と将来の目標も描いている。
振り返ってみれば、東大は0-4とリードされた4回に、得意の“足攻”で1点をもぎ取っていた。結果的に、この1点もモノを言ったことになる。2死一、三塁で、打席には投手の鈴木健(4年)。初球、まず一塁走者の山口真がスタートを切り、相手の捕手が二塁へ送球した瞬間、三塁走者の大井温登外野手(4年)もスタート。山口真が一、二塁間に挟まれる間に、大井が本塁を陥れたのだった。大久保代行は「あの場面は打者がピッチャーですし、うまくいけば1点取りたいなと思ってやったら、うまくいきました」と笑みを浮かべた。
東大は今季、これまでは6戦全敗だった。昨年は春に早大戦で2つの引き分け、秋には慶大戦で1勝、明大戦でも引き分けを記録したが、今季の目標はあくまで、2017年秋以来11季ぶりの勝ち点と、1998年春から昨秋まで続く「50季連続最下位」からの脱出である。「ほぼ負けゲームだったのを拾えたので、次につなげたい」と大久保代行。勢いは我にあり——と、その目が語っていた。
(Full-Count 宮脇広久)