早大は22日、東京六大学春季リーグの立大1回戦で1試合4本塁打という一発攻勢をかけ、8-2で大勝した。山梨学院高時代に、甲子園での3発を含めて通算53本塁打を放ち“山梨のデスパイネ”の異名を取った野村健太内野手(4年)が、3回に左中間へ念願…

早大は22日、東京六大学春季リーグの立大1回戦で1試合4本塁打という一発攻勢をかけ、8-2で大勝した。山梨学院高時代に、甲子園での3発を含めて通算53本塁打を放ち“山梨のデスパイネ”の異名を取った野村健太内野手(4年)が、3回に左中間へ念願の大学1号ソロ、7回にも左翼席へ2号ソロを放った。未完の大器が4年生にして覚醒の予感を漂わせている。

 初回から打線が爆発した早大。熊田任洋内野手(4年)の左前適時打、吉納翼外野手(3年)の3ランで一挙4点を先制すると、2回にも尾瀬雄大外野手(2年)のソロで加点した。

 そして3回、先頭の野村が立大2番手の右腕・吉野蓮投手(2年)の真ん中高めへのストレートをとらえ、打球は左中間フェンスを越える。野村は握った右拳を何度も振り下ろし、歓喜を露わにした。7回には先頭で、立大3番手の左腕・野口裕斗投手(4年)の真ん中低めのストレートを左翼席へ放り込み、今度は淡々とダイヤモンドを回った。「リーグ戦で1本打てて気持ちが楽になり、その後も内容のいい打席を送ることができました」と感慨深げにため息をついた。

 高校時代にプロから熱い視線を浴びた右の長距離砲は早大進学後、早々と1年生の秋に外野手としてレギュラーの座をつかみ、リーグ10位の打率.286(35打数10安打)をマーク。ところが2年生の夏、練習中にダイビングキャッチを試みた際に肩を脱臼。同年秋を棒に振った。

 3年生となり戦列に戻った昨年も、打撃は低迷した。小宮山悟監督は「彼にはかわいそうなことをした。脱臼の影響が残っていて、本来はもう少しスイングをして、打ち込んでからラインナップに入れるべきだったが、チーム事情で打線に厚みがほしかったので、オープン戦で結果が出ていたこともあって、むりやりスタメンで使ってしまった」と悔やむ。昨年までの3年間は六大学通算32試合出場、打率.189(99打数18安打)、0本塁打4打点にすぎなかった。

7回にも2号となるソロホームランを放ち笑顔でホームイン【写真:中戸川知世】

 しかし、故障が癒えて春季キャンプから順調に練習を積み、万全の状態で迎えた今季は一味違う。オープン戦などでは大学入学後10本前後の本塁打を放っていたが、リーグ戦1号と2号が一気に出たのは、本領発揮のきっかけになるはずだ。

 小宮山監督も「4年生になって最後というタイミングで、目覚めてくれてよかった」と目を細め、「(練習拠点の)東京・東伏見の安部球場ではしっかりとした打撃をしていたので、いつか出るだろうと思っていたが、本人はどうしても大きいのがほしかったと思う。1本出たことによって、かなりリラックスして打席に立てるはず。これからドバドバ出るでしょう」と残り2シーズンへ期待を新たにした。

 また、今季から早大には、NPBで現役時代に通算583安打を放ち、名コーチとしても鳴らした金森栄治氏が助監督に就任。野村は「金森さんからは『無駄な動きをなくし、ねちっこくやれ』と言われています」と明かす。初回の第1打席でカウント0-2と追い込まれながらファウルで粘り、8球目を選んで四球で出塁したことを振り返り、「しっかり(ねちっこさを)出せたかなと思います」とうなずいた。念願の本塁打が出ただけではない。打撃自体が着実に進歩を遂げているようだ。

 今年の春の選抜では、母校の山梨学院高が春夏通じて山梨県勢初の甲子園優勝を成し遂げた。「僕もしっかりやならければ」と刺激を受けている。“本家”の前ソフトバンクのアルフレド・デスパイネ外野手は昨年限りで自由契約となり日本球界を去ったが、野村は自身の卒業後の進路について「この春の結果しだいで考えたいと思っています」と含みを持たせる。一時は遠くに見えたプロの世界も、実力を発揮し続ければ再び近づいてくるはずだ。

(Full-Count 宮脇広久)