全日本女子・宮下遥インタビュー(後編) 中田久美監督のもとで、新しい全日本女子バレーボールチームが始動した。Sportivaは監督が「チームの生命線」というセッターで、大きな期待がかかる宮下遥選手インタビュー。後編はオフのことや2020…

全日本女子・宮下遥インタビュー(後編)

 中田久美監督のもとで、新しい全日本女子バレーボールチームが始動した。Sportivaは監督が「チームの生命線」というセッターで、大きな期待がかかる宮下遥選手インタビュー。後編はオフのことや2020年東京五輪について語ってもらった。

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今後の目標について語ってくれた宮下遥
――全日本に新しいメンバーも入ってきましたが、誰と仲がいいですか?

 古賀紗理那さんがラジオで、「宮下さんとすごく仲良くしている」と話していましたが。

宮下 紗理那とはそうですね……。私、今年で全日本5年目なんですが、いまだに下っ端で(笑)。準備とか、下の年齢の人がやる仕事を紗理那とふたりでやっているので、一緒にいることが多いですね。それ以外だと、JTマーヴェラスから来た小幡真子さんが、今回が「初めまして」だったんですが、すごく気が合います。話も合って、考え方も似ていて、真子さんは私のこと大好きなんですよ(笑)。すごく向上心があるし、熱い思いを持っている方なので、一緒にがんばりたいなと思っています。「リベロとセッターって本当に大事だよね」っていう話をしたりして、入ってきたばかりなのに、そういうことを考えているあたり、すごいなと思います。

――古賀さんは、プライベートではどんな人なのでしょう。

宮下 結構先輩をいじってきますね。ジュースの自販機の前で会うと「ありがとうございまーす」みたいな(笑)。それで買ってあげるはめになるんです。

――オフにはどんなことをしていますか?

宮下 今は……とりあえず寝ます(笑)。あとは、ふだんは岡山にいますが、関東にも知り合いが結構いるので、94会(1994年生まれの会)でごはんに行ったりします。「遥はレアキャラだから」って(笑)。最近もなかなか一緒に行けないからって、5人くらい集まってくれました。その時は韓国料理を食べましたが、おいしかったです。

――すごくお肌がきれいですが、ケアにはこだわっていますか?

宮下 全然こだわってないです。この間、人生初のお肌チェックをしました。めずらしいケースだそうですが、荒れているのと乾燥肌と、もうひとつくらい問題があって、すごくやばいって言われました。そうは見えないってよく言われるんですけど、すごくかゆかったり、ヒリヒリしたりするんです。敏感肌ですね。

――リラックスの方法は、先ほど言われたように友だちとお食事することですか?

宮下 そうですね。私、人と話すことが好きなんです。ひとりでゆっくり、のんびり本を読むのも好きなんですが、私の考えを誰かと共有したいという気持ちもあります。どうしてもバレーボールの話になっちゃうところが、バレーバカだなと思いますが、誰かと思いや考えを共有するのが好きです。

 今は全日本の合宿中なので、岡山のチームメイトとはLINEしてます。向こうの状況を「今日走ってるよ」と聞いて、「こっちも走ってるよ! 負けてないし」みたいな(笑)。全日本では、それこそ紗理那だったり真子さんだったり、みんなとお話ししています。

――5年目の全日本ですが、国際試合の面白さは?

宮下 面白さ……ないですよ! ミスすれば「あぁ……」のため息の嵐ですし、重いです。

――Vリーグとは全然違いますか?

宮下 全然違うわけではないですけど、やはり期待度が違う。チームにいたらチームのためにとか、応援して下さる方のためにとなりますが、国のために!となると、背負うものが大きいです。

――リオ五輪を経験して、掴んだものを教えて下さい。

宮下 もちろんオリンピックを経験できたことはすごくよかったんですが、私の中では最終予選を乗り越えることができたのがすごく大きかった。

 あの大会に関しては、結果のみが求められる。オリンピックの出場権のみ。次につなげるなどと言っていられない大会なので、大会中ももちろんですけど、その前の合宿が始まってからずっと、苦しかった。(出場権を)獲れなかったら、どうしようと考えましたし、直前の中国遠征で、手も足も出ない状態で余計怖くなった。とにかく出場権を獲るまで、自分ができることを何でもやりきろうという気持ちでした。

 だから、タイ戦のような絶体絶命の状態からでも何とか勝ち切れたと思います。そして、その勝ちを活かして切符も獲れました。チームのみんな、スタッフみんなのがんばりもあったけど、私自身も、今までのバレー人生の中で、最終予選前の時間はとりわけ充実して過ごすことができました。

――東京オリンピックの開催が決まったときに、「私はセッターとして一番いい年齢なのでがんばりたい」と言っていました。東京オリンピックに向けてイメージは湧いていますか? 自分がセッターとして、東京オリンピックでトスを上げているところなど。

宮下 そういうのは想像したことがないです。

――では、東京オリンピックはどういう位置付けになりますか?

宮下 東京オリンピックは私の人生の最終目標ではないし、私のバレー人生の集大成とはまったく考えてない。ただ、3年後までの、その時間を本当に強い覚悟を持ってやりきること。その先に東京オリンピックがあって、その先にまた自分の人生がある。なので、東京オリンピックで、私のバレー人生が燃え尽きるとか、正直考えてないです。

――そうなると、宮下さんのバレーの集大成、最終目標は?

宮下 オリンピックで金メダルとか、チームで日本一とかもあるけど、そこが集大成ではないんです。イチロー選手みたいなすごい一流選手にはなれないかもしれないけど、自分の中で”一流”になること。それはメダルとか、順位の問題ではないんです。

――もうすぐ、この中田全日本で初めての国際大会、ワールドグランプリが始まりますね。抱負をお願いします。

宮下 まだメンバーも決まってないので、何とも言えません。(候補として)18名は発表されましたが、そこからまた絞るので、私だって落とされる可能性はあります。

 でも「メンバーに残るために」がんばるということは全然考えてない。ただひたすら、「このチームで勝つ」ことが一番。そのためにがんばって落とされても、それは気にしない。このチームが世界にどれだけ通用するのか。多分世界も、3年後に向けて世代交代してくるチームもあるでしょうけど、世代交代しても強いチームは強い。

 そこを相手に、何が通用して何が通用しなくてというのを勉強する大会。もちろん日の丸を背負っているので勝ちに行くことを忘れずに、でも自分たちが世界を相手にどれくらいの位置なのかを知る、いいきっかけになる大会だと思います。

 宮下遥は五輪予選など修羅場を経験して、確実に成長した。一方で「東京五輪は最終目標じゃない」と言ってのけるなど、リップサービスとは無縁の、我の強さは変わっていない。この先、新しい環境でどのような成長を見せてくれるか、興味は尽きない。

 バレーボールワールドグランプリは、7月7日(金)にオランダのアペルドールンで開幕する。宮下の、そして中田全日本の新たな船出を見守りたい。

(おわり)

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