ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<03>竹内柊平(浦安D-Rocks)後編体重115kgの「シンデレラ」No.8に「まさかの急展開!」 今年9月にフランスで開催されるラグビーワールドカップに挑む日本代表メンバー…

ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<03>
竹内柊平(浦安D-Rocks)後編

体重115kgの「シンデレラ」No.8に「まさかの急展開!」

 今年9月にフランスで開催されるラグビーワールドカップに挑む日本代表メンバーのなかで、竹内柊平は異色な存在だ。

 出身校の宮崎工高や九州共立大は強豪とは言いがたく、現在在籍する浦安D-Rocksもリーグワンのディビジョン2所属。決してエリート街道を歩んできた経歴ではない。

 夢のワールドカップメンバーまで、あと一歩。竹内がPR(プロップ)として成功した理由とは──。

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竹内柊平●1997年12月9日生まれ・宮崎県宮崎市出身

── 昨年6月に日本代表の初キャップを得て、心境の変化はどうですか?

「同じポジションの招集メンバーにケガがあったから、日本代表に初めて呼ばれました。練習生として追加招集されたのでメディアにも発表されなかったですが、すごくうれしかったです。

 ただ、当時はまだあまり評価されていなかったとも思っています。スクラム練習するのにメンバーが足らないから呼ばれた、という感じでした」

── しかしながら、昨年10月のオールブラックス戦でピッチに立ち、ヨーロッパ遠征最後のフランス代表戦にも控えから出場する機会を得ました。

「僕のラグビー人生において満員の会場でプレーしたことがなかったので、国立競技場でオールブラックスと対戦できたことはすごくうれしかったですね。ただ、出場時間が10分だったこと、そしてまったくスクラムで歯が立たなかったことは悔しかった思い出です。

 僕は世代別代表に入ったことがありません。だから昨秋、ラグビーで初めて海外・ヨーロッパに行きました。ワールドカップが行なわれるフランスに行けたのも、経験としてものすごく大きかったです。

 プレー面ではスクラムが一番成長したと思います。代表ではガッキーさん(稲垣啓太/PR/埼玉ワイルドナイツ)やクレイグ・ミラー(PR/埼玉ワイルドナイツ)や三浦昌悟さん(PR/トヨタヴェルブリッツ)とスクラムを組んでいたので、強い相手との組み方、自分より重い相手やうまい選手との組み方もすごく勉強になりました。

 ただ、当たり前ですが『まだ(日本代表のコーチ陣から)信頼されていないな』とも感じています。だからワールドカップまでに、彼らから信頼を勝ち取るしかない。7月〜8月の代表戦では絶対にスタメンで出て、世界相手に通用することをジェイミー(・ジョセフHC)と(スクラムコーチの長谷川)慎さんにわかってもらうしかないと思っています」

── 昨秋のヨーロッパ遠征を経て、ジェイミー・ジョセフHCと長谷川慎スクラムコーチから何か言われましたか?

「日本代表のコーチ陣とは定期的にzoomでミーティングを行なっています。自分のプレーやスクラムの映像を見ながら、話していく感じですね。どうしてもPRとしての経験が少ないので、一番の課題はスクラムだと思っています。

 一方、フィールドプレーは評価していただいています。ジェイミーとミーティングをした時も『目の前のプレーじゃなく、次のプレーで何が起きるかを予測して次の動きに入れ』とアドバイスをいただきました」

── 長谷川コーチからは、スクラムのどのあたりを指導されているのですか?

「言われているのは『心地のいいところでしか組めないPRはダメ』だと。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、ヨーロッパの強豪国と戦う時、日本代表は常に体重の重い相手選手と対峙することになります。だから、自分がきつい姿勢でもすごくいい(スクラムを組む前の基本姿勢である)セットアップができるようにしなければならない。

 慎さんのスクラムは、すごくディティールが細かい。どれかひとつでもできなかったら、慎さんのスクラムはできない。バインド(相手を掴むこと)ができなかった時にバインド前のセットアップやクラウチ(腰をかがめること)の姿勢はどうだったかなど、そうやって立ち返って組めるのが慎さんのスクラムだと思うので、自分で課題をすぐ解決することはできます」

── 日本代表予備軍「NDS」でスクラムを指導していた斉藤展士コーチが浦安D-Rocksでスクラムコーチをしていることも大きいのでは?

「展士さんと慎さんのスクラムは似ているというか、上のレベルになると形はどうしても一緒になると思います。ふたりとも現役時代はトップでプレーしてきた方たちなので、『8人でまとまって8人で組む』という日本人にあったスクラムをすごく重視しています。

 D-Rocksでやっているスクラムができればジャパンのスクラムもできますし、ジャパンのスクラムができればD-Rocksのスクラムもできる。自分としてはすごくやりやすいですね。僕はまだまだケツの青いガキですけど、どんどん勉強して進化しています」

── とはいっても、竹内選手のラグビー歴も短くはないですよね。

「ラグビーは宮崎ラグビースクールで小学校6年から始めました。日本代表にも選ばれたメイン平(WTB・FB/ブラックラムズ東京)の姉のメイン桜とは、小・中・高・大......スクールでも一緒の幼なじみ。平も小さい頃から知っています。

 僕は中学生になるまで身長が160cmもなくて、体重も60kgくらい。小さくて体型もまんまるで、身長順に並んだらクラスで一番前でした。ラグビースクールでも、どのポジションもできない感じでしたね」

── 当時は日本代表にも興味はなかった?

「地元の宮崎でよくエディージャパンは練習していましたが、僕は高校生まで自分でプレーすることしか興味がなくて......。日本代表もほとんど見にいったことはありませんでした。2015年ワールドカップで日本代表が南アフリカ代表を倒したのも、サッカー部の友だちから聞いたくらいでしたから(笑)。

 身長が低かったので、フィジカルも強くありませんでした。中学時代を知る高校のチームメイトからは「反則後はお前のところを全員狙っていたよ」と言われているくらい。でも、高校生から急に身長が伸びて180cmになると、タックルも激しくいけるようになりました。今は体重117~118kgなので、当時の2倍くらいになりましたね!」

── 高校時代の花園予選は3年間すべて初戦敗退でしたが、当時日本代表監督だったエディー・ジョーンズさんから指導を受けたそうですね。

「日本代表チームが高校生相手にクリニックをするというので、一度だけ参加したことがあります。当時、宮崎県の高校選抜に入っただけで喜んでいたレベルだったので、日本代表はまさに雲の上の存在でした。

 そのクリニックで、通訳をつけた小さなおっちゃんが僕のところにやってきて、何度も『いいね! 日本代表になれるよ!』と言ってきて、僕は「何を言っているんだ?」と思っていました。そして最後の挨拶の時、そのおっちゃんがエディー・ジョーンズ監督だと知ったんです(笑)」

── 現在25歳。日本代表のなかでは若手の部類となります。

「齋藤直人(SH/東京サンゴリアス)と中野将伍(CTB/東京サンゴリアス)は同じ歳だし、ディラン・ライリー(CTB/埼玉ワイルドナイツ)やサウマキ アマナキ(LO・FL/神戸スティーラーズ)も同期。若手から強い世代を作っていけば、日本代表にとってもめちゃくちゃプラスになると思います!」

── もしワールドカップに出場したら楽しみなことは?

「イングランド代表PRのエリス・ゲンジ選手と対戦したいですね。ゲンジはフィールドプレーが一番いいフロントローだと思っているんで、その選手と対戦してどれだけやれるのか挑戦したい。日本代表のいる予選プールDで一番強いのがイングランド代表なので、その試合に出て強い選手にチャレンジするのがすごく楽しみです!」

── 改めてワールドカップへの意気込みをお願いします。

「ワールドカップに出ることは、自分ひとりのためではないと思っています。無名高校、無名大学......そういう出身者たちの夢も背負っています。僕は弱小大学出身なので、今までお世話になった人の数はほかの選手より何十倍もいると思う。そういう人たちへ恩返しも込めて、ワールドカップのメンバーに入り、いい結果を残し、彼らに自信や勇気を与えられたらと思っています」

── ラグビー選手としての今後の目標は?

「(長谷川)慎さんから『まだ25歳だろう。3回くらいワールドカップに出ろよ」と言われました。3回を目指して頑張りたい。そして、日本ラグビー界を引っ張るような選手になりたい。

 大きなことを言うと、PRらしからぬPRになって、PRの概念を壊したい。それくらいのインパクトを残したいです。胸を張って言えるように、もっともっと努力します!」

(了)

【profile】
竹内柊平(たけうち・しゅうへい)
1997年12月9日生まれ、宮崎県宮崎市出身。宮崎工高→九州共立大を経て2020年にNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安に加入し、2022年7月に浦安D-Rocksへ加入。日本代表歴は2022年6月のウルグアイ代表戦で初キャップを獲得。ポジション=PRプロップ。身長183cm、体重115kg。