立大戦に先発し7回途中無失点に抑えた法大・尾崎完太【写真:小林靖】 一冬を超え、目に見えるほどの変化があった。16日、東京六大学春季リーグの立大1回戦に先発した法大・尾崎完太投手(4年)は、6回1/3を投げ、5四球と制球が乱れたものの無失点…

立大戦に先発し7回途中無失点に抑えた法大・尾崎完太【写真:小林靖】

 一冬を超え、目に見えるほどの変化があった。16日、東京六大学春季リーグの立大1回戦に先発した法大・尾崎完太投手(4年)は、6回1/3を投げ、5四球と制球が乱れたものの無失点に抑えた。さらに、延長10回から3番手で登板した吉鶴翔瑛投手(3年)も3回2安打無失点。最速150キロの直球を武器に立大打線を圧倒した。なぜこうも法大は左腕が育つのだろうか。

 近年、法大投手陣はプロでの評価が高い。2020年には鈴木昭汰投手がロッテから1位指名、高田孝一投手が楽天から2位指名を受けた。さらに、翌2021年は山下輝投手がヤクルト1位、三浦銀二投手がDeNAに4位で入団している。

 1位指名を受けたのは共に左腕。そして、この立大戦でも活躍を見せたのも左腕だった。先発した尾崎は7回3安打無失点と好投した8日の慶大1回戦と比較すると決して本調子の内容ではなかったが、6回1/3を投げ7奪三振を奪い、ソフトバンクのバッテリーコ-チを務める憲治氏を父に持つ吉鶴もサヨナラのホームを踏ませなかった。

 尾崎は昨秋のリーグ戦では、8試合に登板し、1勝5敗。防御率5.45と打ち込まれていた。それがこの春、ここまで3試合で17回と1/3を投げ、未だ無失点。尾崎の登板を2戦続けてバックネット裏から視察した広島・苑田聡彦スカウト統括部長も「抜けるボールがなくなってフォームが安定してきた。一冬越えてかなり成長しましたね」と驚きを隠せない。そして、左腕が多く育つ“好循環”ができているとみる。

「鈴木(昭汰)、山下(輝)とタイプは全く違うが、いい投手と練習することで成長することは多い。マネをして上手くなることはありますから。もちろんいい素材を見つけてきているというのもあるが、いいサイクルみたいなのができあがっているんじゃないですか」
 

3番手で3回無失点と好投した法大・吉鶴翔瑛【写真:小林靖】

 実際に、この日、取材ルームに来た吉鶴も投手陣による“好循環”は感じている。尾崎だけでなく、昨年の大学日本代表に選出され、吉鶴と千葉・木更津総合高時代からしのぎを削った最速157キロ右腕・篠木健太郎投手(3年)らもいる。「今(ベンチに)入っている6人もそうなんですが、その他にもいい投手がいっぱいいるので、その中で自分も負けないようには意識してやっている」と刺激を感じていた。

 ただ、決して“好循環”だけが好調の要因ではない。昨年秋は最初の4カードで勝ち点を奪えず、最終戦は東大との最下位争い。2020年から2年続けて2人の投手をプロへ送り込んでいたが、支配下指名は無かった。東大戦に勝利後、方針を大きく変えたという。加藤重雄監督が明かす。

「昨年は3年生以下を中心に使って勝ちきれなかった。点をやらなければ負けはしない。『もっとピッチャー頑張れ、もっとピッチャー頑張れ』と発破をかけていました」

 そこで行ったのが”投球管理”だった。「それまでは投手に任せていたが、東大戦終了後からは毎日投球数は報告しに来いと。投球した日も、今はノースロー日が多いので。それもチェックするように2月までは管理しました」。もちろん、全てこちらで管理することが正しいとは加藤監督も思っていない。ただ、怪我を防ぎつつ、投手には投げる心意気を持ってもらいたかった。「管理野球は好きではないですが、それに選手がついてきて、頑張ってくれた」と今の成長を見る。

 先発した尾崎の成長に「(ドラフト)2位以上もあり得る」と話したスカウトもいた。先輩たちが引き継いできた“好循環”に、反省を生かした新たな指導を取り入れる。法大の投手王国はこれからも続きそうだ。

(Full-Count 川村虎大)