故障から復帰の鷹・栗原が好調、昨年首位打者も順調 今年はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催されたため、野…

故障から復帰の鷹・栗原が好調、昨年首位打者も順調

 今年はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催されたため、野球日本代表「侍ジャパン」に選出された選手がほとんど出場しない形でオープン戦が行われた。その分、将来を嘱望される若手の出場機会が多くなった。ここではパ・リーグから「オープン戦MVP」を、セイバーメトリクスの指標で選出してみる。対象試合はNPBの春季非公式試合(オープン戦)のみで、練習試合や侍JAPANとの強化試合は含まない。

 選出基準は打者の場合、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりもどれだけその選手が得点を増やしたかを示すwRAAを用いる。投手の場合は、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標RSAAを用いる。

 パ・リーグ打者のwRAAランキングは以下の通りになった。

栗原陵矢(ソフトバンク) wRAA9.05、18試合、59打席、OPS1.177、本塁打4
ギッテンス(楽天) wRAA8.59、15試合、39打席、OPS1.442、本塁打2
中川圭太(オリックス) wRAA5.66、12試合、33打席、OPS1.231、本塁打3
杉本裕太郎(オリックス) wRAA5.43、12試合、34打席、OPS1.231、本塁打3
西野真弘(オリックス) wRAA4.97、13試合、28打席、OPS1.229、本塁打0
松本剛(日本ハム) wRAA4.97、16試合、54打席、OPS.799、本塁打0
今川優馬(日本ハム) wRAA4.92、14試合、33打席、OPS1.071、本塁打1

 wRAAが最も高い指標となったのは栗原陵矢。昨年は開幕から絶好調で出場5試合でOPS1.215だったが、試合中の怪我により1年を棒に振る形となった。捲土重来を期する今季、オープン戦全試合に出場し、打率.415で首位打者を獲得。本塁打4、OPS1.177と長打でもアピールを果たした。上林誠知もOPS.787、本塁打2。柳田悠岐、近藤健介の脇を固められれば、ソフトバンクは昨年以上の得点力が期待できる強力打線になるだろう。

 3位から5位はオリックス勢が名を連ねた。吉田正尚のメジャー移籍に伴い、どのように打線を構築するかに注目が集まる今季。オープン戦では38人の野手が打席に立った。これは12球団でも群を抜いてトップ。現有戦力における打撃力向上を計った証左といえよう。6、7位には日本ハムの2人がランクイン。昨年首位打者の松本剛は今季も好調のようだ。

 ランキングに出ていないチームのwRAA1位選手は以下の通り。 両チームともOPSトップが0.7台と打線が低調だった。

西武:鈴木翔平 wRAA1.77、12試合、43打席、OPS.704、本塁打0
ロッテ:岡大海 wRAA2.39、12試合、24打席、OPS.767、本塁打0

ハムのドラ1矢澤は打撃で片鱗、西武のドラ1蛭間は苦戦した

 ルーキーで打席数を与えられた上位の選手を見てみよう。

矢澤宏太(日本ハム) 36打席、OPS.680
蛭間拓哉(西武) 33打席、OPS.345
奈良間大己(日本ハム) 25打席、OPS.492
茶野篤政(オリックス) 23打席、OPS.623

 最も打席数を与えられたのは日本ハムのドラフト1位矢澤宏太。持ち前のスイングスピードと抜群の走力で長打を稼げる打力の片鱗を見せた。左腕で150キロ超のスピードボールが投げられることから投手としての起用もあり、3試合3イニング、打者12人に対し奪三振1。被安打は0だが、四球4とコントロールに苦しんだ。現状、奪空振り率4.0%では、投手としての起用は厳しいか。

 日本ハムのドラフト5位、奈良間大己は昨年入団の上川畑大悟とショートのポジション争いをするまでの存在となりうるか。蛭間はドラフト1位入団の大卒外野手。33打席を任されたが、4安打で長打0、三振14と期待に沿う結果は残せなかった。オリックスの茶野は育成ドラフト4位で入団。オープン戦で23打席に立ち、6安打1四球、OPS.623を記録。その結果が認められ3月24日に支配下登録された。

 パ・リーグ投手のRSAAランキングは以下の通り
平良海馬(西武) RSAA4.23、登板4、イニング17、防御率0.00、WHIP0.41、奪三振率8.47、奪空振率14.0%
東浜巨(ソフトバンク) RSAA4.09、登板4。イニング17回1/3、防御率2.60、WHIP1.27、奪三振率6.75、奪空振率9.4%
松本裕樹(ソフトバンク) RSAA3.39、登板6、イニング6、防御率6.00、WHIP1.50、奪三振率9.00、奪空振率14.4%
高橋光成(西武) RSAA2.73、登板3、イニング10、防御率3.60、WHIP1.20、奪三振率13.50、奪空振率11.5%
山下舜平大(オリックス) RSAA2.69、登板4、イニング15回1/3、防御率2.35、WHIP0.59、奪三振率13.50、奪空振率18.7%

平良は防御率0.00、覚醒の予感漂うオリ山下

 最もRSAAが高かったのは西武の平良海馬。今季から先発転向ということで、登板した試合では6イニング1度、4イニング2度と、まとまったイニングを投球してきた。3月12日のソフトバンク戦では6回無失点でオープン戦ながらクオリティスタート達成第1号の投手となった。リリーフ時代と同様に安定した投球で、防御率0.00、WHIP0.41、奪空振り率14.0%と見事な数字を記録した。

 このオープン戦で最も注目を浴びたと言っても過言ではない投手が、オリックスの山下舜平大だろう。2020年ドラフト1位で入団の20歳。過去2年は1軍登板はなかった。今季はオープン戦で最速158キロ、平均球速155キロのストレートを披露し、三振奪取を繰り返す。3月24日の阪神戦では先発登板し6回2失点とクオリティスタートを達成。奪三振7、奪空振り率14.4%の快投を披露した。登板4試合で奪三振23、与四球はわずかに1と制球力も安定していた。

 ランキングに出ていないチームのRSAA1位投手は以下の通り。

楽天:則本昂大 RSAA2.42、登板4、イニング16回2/3、防御率2.16、WHIP0.78、奪三振率4.86、奪空振率9.4%
ロッテ:ペルドモ RSAA2.06、登板6、イニング6回2/3、防御率1.35、WHIP0.90、奪三振率8.10、奪空振率10.9%
日本ハム:メネズ RSAA2.03、登板7、イニング7、防御率0.00、WHIP0.71、奪三振率10.29、奪空振率11.8%

 セイバー指標で選ぶパ・リーグのオープン戦MVPとして、打者部門は栗原陵矢、投手部門は平良海馬を推薦する。ホープ賞を設けるとすれば、山下舜平大となるだろう。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせなどエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。