大学サッカーは現在の日本サッカー界において、重要な選手育成の場だ。かつては韓国でも大卒の名手が多くいたが、最近では様相…
大学サッカーは現在の日本サッカー界において、重要な選手育成の場だ。かつては韓国でも大卒の名手が多くいたが、最近では様相が変わっている。3月21日の両国の大学選抜チームの対戦から、サッカージャーナリスト・後藤健生が現状を読み解く。
■育成について考えさせられる試合
3月21日に、さいたま市浦和駒場スタジアムで「DENSO CUP第21回大学日韓(韓日)定期戦」が開催され、全日本大学選抜が1対0で全韓国大学選抜を下した。
大学サッカー関係者以外にはほとんど関心も持たれない大会なのかもしれない。観客数は3858人と発表されたが、そのほとんどは動員された各大学のサッカー部員だったし、プレス席も閑散としていた。
新1年生を迎えて始まる大学サッカーはこれから開幕を迎える時期にある(たとえば関東大学リーグは4月1日開幕だ)。オフ明けに当たる3月下旬にコンディションが100%であるわけはない。しかも、寄せ集めの全日本選抜チームは約1週間の合宿を経ての試合だった。
そして、事情は韓国側も似たようなもの。
つまり、両チームとも準備不足だった。当然、ミスも多く、最高の試合というわけではなかったが、それだけに両チームの“素の実力”が見えるという側面もある。両国の若手育成についていろいろ考えさせられることの多い試合だった。
■ほぼ互角の対戦成績
日韓両国の大学サッカー連盟が主催するこの大会。現在の大会名となってからは21回目だったが、2020年と21年の第17回、18回大会は新型コロナウィルス感染症の拡大のために中止となっており、前身の大会を含めて今回が25回目の対戦だった。
昨年は2試合が行われており、6月25日の日本ホームの試合(会場はレモンガススタジアム平塚)では日本が5対0の大差で勝利したが、9月17日の韓国ホーム(安養総合運動場)では延長の末に韓国が2対1で勝利した。
まさに勝ったり負けたりを繰り返してきたこの大会。これまでに行われた合計25回の対戦成績は日本側から見て12勝2分11敗とほぼ互角の結果となっていた。
「大学サッカー」がその国のサッカー界で重要な役割を担っているというのは、世界を見渡しても日本と韓国だけである。4大会連続でワールドカップに出場した長友佑都やイングランド・プレミアリーグでも注目を集める三笘薫なども大学出身で、もちろん、この日韓定期戦にも出場している(三笘のように国立大学=筑波大学=を卒業している選手など、プレミアリーグには他にいないに違いない)。
大学生のスポーツの祭典「ユニバーシアード」では男子サッカー競技はこれまでに18回開催されているが、そのうち日本は7度も優勝を飾っており(決勝ではすべて勝利しており、準優勝はなし)、韓国も優勝1回・準優勝5回という好成績を残している。
■「準備不足」の中での試合
さて、浦和駒場スタジアムで行われた今年度の試合は、前半の立ち上がりはともにロングボールを蹴り合う非常に慎重な試合運びの中で始まった。この辺りは、互いに「準備不足」という意識が強かったからなのかもしれない。
そして、そんな立ち上がりの時間帯では韓国のパワフルなプレーによって全日本大学選抜は受け身に立たされてしまった。だが、時間の経過とともに日本が自陣でしっかりとボールを動かしてから両サイドに展開することでチャンスを生み出せるようになると、20分以降は日本がゲームを支配することになった。
しかし、ボール保持率は上がったものの韓国ゴール前までつなぐことができず、「拙攻」の繰り返し。公式記録によれば前半のシュート数は日本が1本で韓国は「0」だった。
しかし、後半に入ると日本がサイド攻撃の形を作れるようになって攻勢を強めていく。
51分には右サイドバックの奥田勇斗(桃山学院大学)が入れたクロスをツートップの一角の近藤慶一(名古屋学院大学)がヘディングシュート。これは韓国のGKに阻まれたものの、そこからつないで左サイドでハーフタイムに交代で出場したばかりの古長谷千博(常葉大学)がドリブルで持ち込んでシュートを放ち、CKを獲得する。そして、角昂志郎(筑波大学)のキックに走り込んだDFの高木践(阪南大学)がヘディングでたたき込んで日本が先制ゴールを決めた。
強烈なヘディングを決めた高木は身長が173センチながら、センターバックとしてフィジカルの強い韓国のFW陣に対抗。足元の技術を生かして好パスを供給し、さらにセットプレーではヘディングのターゲットにもなっていた。
その後、韓国がパワープレーを仕掛けてきたものの、日本は最後までしっかりゲームをコントロール。追加点こそ奪えなかったものの、後半はシュート数で8対2と優位に試合を進めて逃げ切った。