去る3月4日、日本を代表するガールズスケートボーダーの藤澤虹々可による初の主催イベント「POD Games」 がムラサキパーク東京にて開催された。今回が初の試みということもあり、終了後に彼女と運営会社を直撃。イベントに対する思いの丈を語って…

去る3月4日、日本を代表するガールズスケートボーダーの藤澤虹々可による初の主催イベント「POD Games」 がムラサキパーク東京にて開催された。今回が初の試みということもあり、終了後に彼女と運営会社を直撃。イベントに対する思いの丈を語ってもらった。

PODとの出会い


イベント主催者の藤澤虹々可。

―まずどういった経緯でこのイベントを開催することになったのでしょうか?

藤澤(以下 藤):きっかけは、2018年に同じムラサキパーク東京で開催した「SKATE EXCHANGE」というガールズイベントです。その時に運営されていた方が、現在POD Corporationで働いていて、そのイベントで知り合ったことから、私とPODさんとの関わりが始まったんです。

そんな縁から、以前私のお話を聞いてもらうディナー会を開いていただいたんですけど、その時にPODの社長さんが「またイベントをやりたいね」と言ってくださって、私もスキップ学園祭というイベントに関わらせてもらってすごく楽しかったし、やりがいも感じていたので、「やりたいです!」と話したら、後日連絡がきて開催が決まったという流れになります。そこから何月にやりましょうと具体的に話を進めたのが去年の11月なので、約4ヶ月かけて準備してきました。

―その「SKATE EXCHANGE」で藤澤選手は優勝されていましたが、今回のイベントはそういった過去の実績があったからなのでしょうか?

藤:いえ、「SKATE EXCHANGE」はマライア・デュランとかアレクシス・サブローンとか、海外からもいろいろなプロライダーをゲストとして呼んでいたので、私はその中の1人という位置付けでした。

ただ運営の方とは別でも接点があって、海外のエージェーシーとの間に入って取り持ってくれたので、そういったイベント絡みでちょくちょくお世話になっていたんです。


イベント内ではスケートボードの体験会も行われた。

スケートボードを通じた社会貢献


最後の最後でメイク。オーディエンスからは拍手がわき起こる

―POD Corporationさんとはどういったことを行なっている会社なのでしょうか? こうして社名を冠にしたスケートボードイベントを催したのは初めてかと思うので、ご説明いただけないでしょうか?

POD(以下 P):確かにスケートボーダーの方からしたら、急に出てきてよくわからないという方もいらっしゃると思います。簡単にご紹介させていただくと、当社は事業投資、資産運用など様々な事業を展開しているのですが、今回イベントを企画させていただいたのが企業価値の向上をESGの観点からサポートする「ソーシャルブランディング」というチームになります。私たちはESGのS。つまり「社会」を軸にスポーツ業界やNPOなどの多様なネットワークを活用しながら、企業様のブランディングをサポートしています。アスリートのキャスティングをしたり、様々な企業様のイベントやったりというところでスポーツと関わっています。


スケートボードを題材にした漫画作品『スケッチー』の作者、マキヒロチさんのブースも設けられた。

これからの可能性


オリンピック効果もあり、スケートボードをする子供は以前よりも確実に増えている。

―数あるスポーツの中でスケートボードを選んだのには何か理由があるのですか?

P:すでに皆さんがご存知のように東京オリンピックで急激に注目度が高まったことでスポーツ性が増しましたし、若年層の選手が多いというところから、伸びしろという面で、会社としてもこれからの可能性に非常に興味があったんです。ただスケートボードそのものにこだわってるというよりも、今回POD Gamesと名付けさせていただいたように、自社コンテンツとして藤澤選手の想いをサポートしたいというところの方が大きいですね。

例えば、これがサーフィンで環境に対する想いのある方がいて、環境を守るようなイベントしたいということであれば、そこをサポートするようなこともできたらなと思っています。スケートボードはもちろんなんですけど、それ以外でも今後はもっと多角的にアスリートの想いをカタチにできるようなイベントをするという可能性はありますね。

スケートボード本来の楽しさ


常に笑顔を振りまくガールズスケーター達。

―今回の出場選手や開催場所、イベント内容はどうやって決めたのですか?

藤:私がこんなのがやりたい、ココでやりたい、こう考えているんですといったことをPODさんだったり、今回全面的に協力してくれたゆりゆり(村井祐里。長年ガールズスケートシーンを撮影し続けている映像作家)に相談して決めました。私はとにかくガールズのスケートセッションをやりたかったんです。大会や試合みたいなものは他にもあるので、皆で楽しくで滑ろうよ! っていう感じのものができたらいいなと思っていました。

その結果ベストトリックコンテストを行うことになったんですけど、すごく盛り上がったなと実感してます。「乗れ乗れー! 乗ったー!! ワー!!」と皆が沸くところも見れましたし、そういったスケボー本来の楽しさ、自由さを伝えるっていう私のコンセプトは具現化できたんじゃないかと思います。


ベストトリック終了後は皆で楽しくセッション。
ベストトリックで優勝した前田日菜の全越えキックフリップ

―イベント内容をベストトリックにしたのにはどんな理由があるのですか?

藤:他の大会、いわゆるオリンピック選手選考大会などになると、最初にランがあって、それが必ず点数に加算されるんです。だから仮にそこでミスしたら、もう優勝の可能性はほぼ潰えてしまいます。その後のベストトリックにしてもトライできる本数が決まっているので、とにかくプレッシャーがすごいんです。もちろんその先には名誉もあるんですけど、純粋に楽しむという観点で見ると、緊張の方が優ってしまうところも否定できないのではないかと思います。

でも今回のように制限時間内なら何度もトライできるベストトリックのルールにすると、気持ちの面でもリラックスしてできますし、成功する確率が低い、自分の持っている最高難度のトリックにもトライできます。何度失敗しても大丈夫なので、転び続けた末に制限時間ギリギリで成功したらオーディエンスもすごく盛り上がりますし、なおかつ優勝できたらエンターテインメント性もすごく高いと思うんです。

今回は制限時間終了後にも1人1トライずつ行うルールを付け加えたんですが、そこには「もっとエンターテインメント性をあげたい」という想いが詰まっているんです。そういったプロセスも含めて、私個人としてもベストトリックはすごく好きなんですよね。成功した瞬間みんなが喜びますし、そこにはスケートボードが本来持っているカルチャーの要素が詰まっているんじゃないかと思っています。


ベストトリック2位は上村葵。こちらはヒールフリップで全越え。

P:今回その藤澤選手の想いのところで共感したことがあるんですが、スケートボーダーって、意外と女性が少ないということを相談された時に、少ないとは思うけど、スケートボーダーって男女平等で、スケートボーダーであればみんなが友達みたいな文化があるんだということを聞いて、すごく素敵だなと思ったんです。私たちは企業のブランディングをする時にESGなどで女性の活躍推進を売り出すこともしているんですけど、そういったところなんかと関連づけて、スケートボードが持つ素晴らしい文化を、もっと一般企業さんにもアピールしていきたいと思いましたね。


3位の石丸葵はフロントサイド50-50グラインドからノーリーキックフリップアウトを披露。

藤:日本の社会だと、今も女性だからと差別とまではいかなくても、ちょっと不利な思いをすることって少なからずあると思うんです。でもスケボーの世界ではあまりなくて。もちろん男子と比べたらスキルは全然違いますけど、みんなが同じように接してくれますし、それがこの世界の良いところなんですと、PODさんに伝えたんですよね。


ベストトリックコンテストのトップ3の面々

初の主催イベントを終えて


初めてイベントを主催するとは思えないほど、MCもスムーズにこなしていた藤澤虹々可。

―今回はゼロからイベントの運営を一通り経験されたましたがいかがでしたか? 終わった率直な感想をお聞かせください。

藤:皆に楽しんでもらえたので、ひとまず安堵してます。準備から頑張って、みんなで協力してやってきましたし、参加者さんの楽しんでくれる姿を見れたので、よかったなという気持ちでいっぱいです。

P:私たちは藤澤選手がそう思ってくれたことが何よりで、彼女が達成感を感じてくれてたのであれば、それが1番です。私達は彼女をサポートするという思いで、POD Gamesをやらせていただいたので、もし藤澤選手がよければ、今後も継続していきたいと思っています。


コンテスト終了後はもちろん滑る。そうして後輩達に自らの背中を見せていた。

―なにか当日の印象的なエピソードはありますか?

藤:いろいろあったからひとつには絞れないですね。美優(伊藤)ちゃんが借りたのも含めてデッキを2枚も折っちゃったのは、いろんな意味で本当にヤバかったですし。(笑)

ただみんなが盛り上がってるところとか、ちびっ子たちが頑張ってる姿は最高でした。メインイベントが終わって皆で滑っていいよっていう時間に、ベストトリックコンテストで決まらなかった技を一人で黙々と練習してる女の子がいたんですけど、やっぱりスケボーってこうだよね、順位よりも自分超えができるかだよね! って思いましたし、凜ちゃん(青木)が最後の最後にバックサイドフィーブルグラインドの全流しを成功させた時は、最高に盛り上がりました。

本当に思い出はたくさんあります。すごく良いもの見せてくれたライダーには感謝しかありません。ただベストトリックコンテスト中は自分も滑りたくてウズウズしてしまったので、次は絶対出ようと思います!


しっかりとメイクしたものの、デッキを折ってしまい顔を覆う伊藤美優。
最後の最後できっちりメイクした青木凜のバックサイドフィーブルグラインド

より幅広い世代が楽しめるイベントに


イベントの最後には村井祐里の最新作『TSUMEATO』の試写会も行われた。

―では今回の反省点も踏まえて、次回以降どんなことをやっていきたいですか?

藤:私はとにかく皆が笑顔で終わってくれたことが一番だったんですけど、欲を言えばもっともっとたくさんのガールズスケーターが来てくれたら嬉しいなと思いました。もちろん今回も多くの方が来てくれたんですけど、もっと大人のガールズスケーターも来れるようなコンテンツを増やしていきたいですね。20歳、30歳、40歳オーバーの方っていっぱいいらっしゃると思うので、そういう方々も来たいって思えるような、大人から子供までみんなが楽しめるイベントを目指して、これからも頑張りたいなと思います。

―ありがとうございます。では最後にメッセージをお願いします。

藤:来てくれた皆さんには本当に感謝してます。次のイベントを早く開催してほしいという声があったのもすごく嬉しかったです。今回みたいなベストトリックコンテストももちろん盛り上がるんですけど、もっと競技競技していないというか、みんなが楽しめるコンテンツを作っていきたいと思っているので、次回もぜひ参加してください。どうもありがとうございました!


今回のイベント参加者達による集合写真

The post スケートボードを通じた社会貢献。”楽しさ”を伝えたい。 藤澤虹々可とPODコーポレーションが行った「POD Games」とは!? first appeared on FINEPLAY.