愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集山根陸(横浜F・マリノス)インタビュー前編昨シーズンはJリーグ11試合に出場した…

愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集

山根陸(横浜F・マリノス)
インタビュー前編



昨シーズンはJリーグ11試合に出場した山根陸(横浜F・マリノス)

 山根陸(横浜F・マリノス、19歳)は、横浜FMの生え抜き選手として将来が嘱望されるボランチだ。「これからに期待しています!」(水沼宏太)と、同クラブの先輩選手から真っ先に名前が出る。何かやってのける。少なくとも、新時代の予感があるルーキーだ。

 昨シーズンはトップに昇格してリーグ11試合に出場した。先発は4試合だったが、才能の片鱗も見せ、優勝を経験。2023年はU-20W杯も控えており、勝負のシーズンになるはずだ。

 ピッチでは、味方のアドバンテージを作るパス出しやポジショニングが際立つ。持ち場を守る責任感も強い。聡明で利発、バランス感覚に優れたMFと言えるだろう。

「試合当日の朝とか、緊張は結構します。でも、ウォーミングアップを始める前には、"やるだけだ"っていう感じになっていますね。足りないことはいくつもありますが、理想のイメージはあって、今は総合力を高めたいです」
 
 山根は確信を込めてそう言う。"真面目"という括りだけでは収まらない。芯の強さ、勝気さも滲ませる。自己韜晦(じことうかい)と言えばいいだろうか。そんなルーキーの肖像とは――。

――ユースからプロに昇格した昨シーズン1年の戦いを振り返ってどうですか?

「1試合に対する重みというか、負けていい試合はひとつもなくて、悪いパフォーマンスをすると、評価に直結するので、1秒たりとも気が抜けないのは、大きな違いだなと思います」

――自分の武器だと思うことは?

「僕自身、これっていう武器はあまりないと思っています。人によっては"これが特徴"と言ってもらったりするんですが......。でもその分、総合力を上げるというか、何でもできるようになりたいですね。今はバランスよくプレーの幅を広げつつ、欠点がないようにと意識しています。だから、バランスはひとつの特徴かもしれません」

――怖さを与えられるボランチになるには、プラスアルファも求められます。攻撃への関与はそのひとつかと。

「先日のキャンプ中、(水沼)宏太君ともそういう話になって、『ゴール前で怖さを出せるようになりたいよね』と言ってもらった。でも、そのためにはもっと運動量を上げないといけないと思っています。高い強度のなかで、ゴール前に飛び込んでいく数だったり、そのタイミングだったり、あとはゴール前でボールを持った時にどれだけクオリティを出せるか、その回数を積んでいかないと。すぐパッとできるものではないと思いますが、積み重ねていければと思っています」

【好きな選手はモドリッチ】

――現代では、ボランチも同世代のスペイン代表ガビ、ペドリなど、世界的にゴールに近い仕事が求められていますね。

「サッカーの一番の醍醐味はゴール前だと思うし、見ている人もそれが楽しいし、やっている自分たちもそれが楽しい。そこを極めていくのは、将来の自分のためにもすごく大事なことだと思っています。F・マリノスのサッカーをやるなかで、すごく攻撃的なチームなので、攻撃回数も自分次第で増えてくると思うし、ペナ(ペナルティエリア)に入っていくことは常に頭に入れておこうって思っています」

――スペインのリーガ・エスパニョーラでボランチにまず求められるのは、五分五分のボールを制する強さですが、山根選手も「球際が強い」という評価です。

「たまたまいいところを見てもらっただけです(笑)。練習でも、まだまだ入れ替わられちゃうシーンがあって。自分の先輩である渡辺皓太選手、(藤田)ジョエル君、喜田(拓也)選手は、みんな行き方がうまい。相手とがちゃがちゃってなる時、力づくで行くんじゃなくて、ちょっとした駆け引きをしているんです。突っ込んでくる相手に対し、待ったほうがいい時もあるし、待っちゃいけない時もあるし、そこの見極めがうまいな、と。いざ自分がやろうとすると、うまくいかないことが多いですね」

――話をしていると、プレーイメージは確立しているようですね。

「好きな選手は(ルカ・)モドリッチで、とにかく何でもできて、動けるし、ボックスに入っても、どの位置にいてもクオリティの高いプレーができる。そういう選手は、どのチームでも、どの監督でも重宝されるはずです。モドリッチを見ていると、こっちも面白いし、あれだけうまかったら楽しいんだろうなと、映像を見ながらでも思うし、目指したいなって思います」

――逆に昨シーズンを戦って、できなかった点は?

「できなかったというよりは、足りないな、と感じたところはあります。フィジカル的なところもそうですけど、守備の(ボールを)奪う力とか、あとは運動量ですね。攻撃のところのビルドアップに関わる運動量は慣れてきました。でも、守備のところで疲れてしまい、もう一歩が遅れて、"1秒早くそのポジションについていれば......"というのは何回かあったので。そこから展開されてしまったこともあったし、細かいところだと思うんですけど、それが大きな違いになってしまうので、そこは頭に入れてやっていかないと」

【キャンプではサイドバックも】

――新シーズンに向けて、キャンプではボランチだけではなく、他のポジションもテストされたそうですね。

「左サイドバックをやっています。この先を考えても、ボランチしかできないよりも、違うポジションもできたら、いろんな経験を積めるはず。いつもと違う視野でプレーすることが、ボランチに戻った時に手助けになるはずだし、プレーの幅を広げる意味では、すごくやりがいがあると感じます」

――ケヴィン・マスカット監督からはどんな言葉を?

「左サイドバックでは特に何も言われてないですが、ボランチの時は、『ボールを受けたら前へプレー』と求められています。周りとコネクトしてボールに関与し、プレスではチーム全体としてどう行くか、自分が行く時、行かない時の使い分けですね」

――サイドバックもひとつの選択肢なのでしょうか?

「僕自身は楽しいんですけど、まだ試合に出ていいレベルか、わからないです(笑)。ボランチよりも狭い視野でもプレーできるので、逆に"もっとここにいてほしいのに"と思うこともある。逆の立場になった時に、ここにいたほうがいいなという経験になっています」
(つづく)