愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集識者が選んだJリーグ30年のベストイレブン 前編後編「最強助っ人」「史上最高のG…
愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集
識者が選んだJリーグ30年のベストイレブン 前編
後編「最強助っ人」「史上最高のGK」「歴代随一の打開力」と評された選手たち>>
今年はJリーグ30周年。さまざまな選手の活躍が思い出されるなか、この30年のベストイレブンとなると、誰になるだろうか。ここではJリーグスタート時から現場で取材してきたベテラン記者・カメラマン5人に、それぞれの11人を選んでもらった。なお、外国籍選手の選出は11人中3名までとした。
◆ ◆ ◆
【ストイコビッチは30年で最も華のある外国人選手】
杉山茂樹(スポーツライター)

FW/エメルソン、ストイコビッチ
MF/藤田俊哉、遠藤保仁
MF/伊東輝悦、小笠原満男
DF/三都主アレサンドロ、田中マルクス闘莉王、中澤佑二、西大伍
GK/チョン・ソンリョン
GKはライバル関係にあった楢﨑正剛と川口能活のどちらかを選ぶ手もあったが、Jリーグのレベルアップを語る時、韓国人GKは外せない存在で、彼らに敬意を表し、その第1人者であるチョン・ソンリョンを推す。
サイドバック(SB)は、左が三都主アレサンドロで右が西大伍。A代表歴82回の三都主に対し、西は2回。知る人ぞ知る好選手だ。また三都主をオーソドックスなSBとすれば西は異端派で、三都主を槍的だとすれば西は中盤的だ。今日的なSBと言い換えることもできる西が、筆者には眩しく映る。
センターバックは中澤佑二と田中マルクス闘莉王。派手さと実力を兼ね備えた日本代表史にも名を刻む2人を選ぶことにするが、この欄で3人とされている外国人枠の制限がなければ、1995~99年に名古屋グランパスエイトでプレーしたトーレスと、1992〜95年にヴェルディ川崎でプレーしたペレイラを推したい。
他方、中盤を日本人で固めることに勇気はいらない。GK、DF、MF、FWと大きく4つに分けられるポジションのなかで実際、好選手と言われる日本人はMFに偏っていた。
1番手は遠藤保仁。欧州組には加わらなかったので出場試合数が多い。Jリーグを支えた最大の功労者と言える。攻撃的MFでは藤田俊哉が1番面白いプレーをした。中田英寿の陰に隠れ、代表チームで主役を張ることはなかったが、こちらもその分、Jリーグでは顔役として通っていた。
後ろめのMFは伊東輝悦と小笠原満男だ。安定感抜群で地味ながら味のあるプレーをした伊東。小笠原はJリーグで最も多くのタイトルに輝いた鹿島アントラーズの看板選手としての価値も加わる。
FWはドラガン・ストイコビッチを一番に挙げたい。過去30年、Jリーグに何人の外国人選手がやってきたか定かではないが、そのなかで最も華のある選手がストイコビッチであることは確かだ。
世界的に名の知れた選手がJリーグにやってくる場合、それまでほぼベテランに限られていたが、彼が名古屋に来た時は20代で、日本のファンはその最盛期のプレーを拝むことになった。
もう1人はエメルソン。特にゴールを量産した浦和レッズ時代の凄みのあるプレーはいまなお鮮烈に記憶される。次点は2018〜19年に柏レイソルでプレーしたオルンガ。世界的に無名の選手がJリーグを席巻する姿に、世界の広さを見せられた気がした。
【プレースキックやパスで魅せた中村俊輔ははずせない】
後藤健生(サッカージャーナリスト)

FW/三浦知良、中山雅史、家長昭博
MF/中村俊輔
MF/名波浩、遠藤保仁
DF/長友佑都、井原正巳、松田直樹、酒井宏樹
GK/楢﨑正剛
選手の能力という面だけではなく、30年にわたってさまざまな意味でJリーグを盛り上げてくれた選手を選んだ。
カタールW杯の時に社会現象を引き起こすのに一役買った"ブラボー"長友佑都や、今でも一般社会では最も有名なサッカー選手である三浦カズなどがそうだ。たとえば、中田英寿は欧州に渡ってからが全盛期だった選手であって、「"J"を沸かせた選手」ではない。
だから、一つの基準は「全盛期をJリーグで過ごした選手」ということになる。長友や中村俊輔、酒井宏樹は海外で過ごした時間も長いが、若い時期あるいは晩年にJリーグでその力を発揮してくれている。
GKとしては日本代表でもポジション争いを繰り広げた楢﨑正剛と川口能活の争いになるが、楢﨑がJリーグでキャリアを全うしたことと、天皇杯を含めて国内タイトルを数多く獲っていることから楢﨑を選んだ。
井原正巳はJリーグ初期の守備の要。そして、松田直樹はその類まれな身体能力と人間性で今でも慕われている伝説的なDFと言える。
中盤は人材が豊富で、ここで選出した3人以外にも小笠原満男や小野伸二、中村憲剛、遠藤航などもぜひ選出したいところだが、実績を考えればジュビロ磐田の全盛期を支えた名波浩、長くJリーグでプレーを続けた(続けている)遠藤保仁、そしてプレースキックやアイディア溢れるパスで魅せた中村俊輔ははずせない。
最前線は通算得点記録1位の大久保嘉人や2位の興梠慎三、3位の佐藤寿人を差し置いてゴン中山を選んだ。強引に相手DFに襲い掛かっていく迫力あるドリブルでの仕掛けは中山にしかない魅力だろう。メディアへの露出もプラス材料だ。
三浦カズはゴールゲッターのイメージも強いがもともとは左のウィンガー。あの「またぎフェイント」を駆使したドリブルが最大の魅力だ。右SHも悩んだが、晩年になって圧倒的なボールキープ力を生かして川崎フロンターレで輝きを増している、家長昭博を選出した。
監督は、やはりオシムさんにやってもらいたいなぁ。
【ジーコの開幕戦ハットトリックは永遠不滅】
六川則夫(サッカーカメラマン)

FW/三笘薫、久保竜彦、エムボマ
MF/三浦知良、ジーコ、中田英寿
DF/長友佑都、ペレイラ、井原正巳、内田篤人
GK/川島永嗣
選んだ基準はインプレッション、過去30年のJリーグで強烈な印象を与えた選手を選んだ。
FWは迷うことなくこの3人で決まり。ゴール裏で見た久保竜彦や、パトリック・エムボマのシュートは鳥肌が立つほど破壊的だった。Jリーグで活躍した期間は短かったが、見たいと思うものを見せてくれる三笘薫のドリブルもはずせない。
MFはカズ、ジーコ、ヒデしか思い浮かばない。ジーコが開幕戦で見せたハットトリックは、それだけで永遠不滅。
DFは中央の2人にペレイラと井原正巳を選んだが、守備と共にフィードの正確さも評価した。ペレイラはDFながら写真映えした。
攻守にわたる存在感でSBのひな形を完成させたのは長友佑都、内田篤人の2人。海外でも成長した姿を見せ、日本人選手の海外移籍の流れを作った。
GKは最も悩んだが、そのポジションでの役割のみならず、GKという生き方を実践している川島永嗣で決まり。
ちなみに監督は六川則夫、コーチは今治の岡ちゃんにお願いしたい。
【久保竜彦は見る者を驚かせた】
国吉好弘(サッカージャーナリスト)

FW/久保竜彦、三浦知良
MF/三笘薫、家長昭博
MF/中村憲剛、中村俊輔、遠藤保仁
DF/今野泰幸、田中マルクス闘莉王、塩谷司
GK/楢﨑正剛
Jリーグ30年から選ぶベストイレブンということで、縛りはJ1優勝に貢献していること。中村俊輔はステージ優勝のみだが、2度MVPになっているので例外とした。Jリーグでタイトル獲得に繋がるプレーを見せ、活躍したことに加えて、見ていてワクワクさせられた選手、次の試合も見たいと思わされた選手を選んだ。
GKは20年以上にもわたって安定感抜群のプレー見せ、名古屋グランパスの初優勝に大きく貢献した楢﨑正剛。
DFでは楢﨑と共に名古屋を優勝に導き、浦和でもタイトルを獲得、圧倒的な存在感と攻撃力を発揮した田中マルクス闘莉王。キック、ヘッドとも強くて精度が高く、サンフレッチェ広島の3度の優勝に貢献した塩谷司。中盤でプレーすることも多かったが、守備のセンスはピカ一だった今野泰幸を選出して3バックに。
中盤には多くのよい選手がおり絞るのは難しかったが、いずれも技術が高く、パスセンスにあふれたMFを選んだ。J歴代最多出場記録を持ち、常に冷静沈着、ゲームをコントロールする遠藤保仁。運動量も多く攻守に気を配り、タイミング、コースとも完璧なスルーパスに何度も唸らされた中村憲剛。魔法の左足で多くのチャンスを生み出し、何度も鮮やかなゴールを決めた中村俊輔の3人を中央に。名波浩、小野伸二、ドラガン・ストイコビッチらも捨てがたかったが。
サイドには、右に抜群のキープ力とアイディアのあるプレーで川崎フロンターレの4度の優勝に貢献した家長昭博。左サイドも川崎から、在籍は2シーズン半ながら歴代でもトップクラスのドリブル突破を見せた三笘薫。彼が感じさせたワクワク感は最高だった。
ストライカーにはパトリック・エムボマ、エメルソンら多くの外国人や最多得点の大久保嘉人も考えたが、優勝に貢献していないので外し、予測不能のプレーと高い決定力で、見る者を驚かせた久保竜彦を選んだ。最後にJの象徴であるカズは第1回MVPや1996年得点王などの実績もさることながら、プロリーグを成功に導いた存在で外せない。
監督には日本代表を率いて、俊輔、遠藤、憲剛の共存を探っていた節のあるオシムに任せたい。
【試合全体を支配したラモス瑠偉は格別】
西部謙司(サッカーライター)

FW/三笘薫、大久保嘉人、三浦知良
MF/ラモス瑠偉、中村俊輔
MF/名波浩、遠藤保仁
DF/田中マルクス闘莉王、井原正巳、秋田豊
GK/川口能活
30年間のベストイレブンとなると選考はなかなか難しい。瞬間風速的にはオルンガ、アラウージョ、パトリック・エムボマ、フランサ、レオナルドなども凄かったけれども、長期間プレーしてJリーグの発展に貢献した選手を中心に選出することにした。
GKは横浜マリノスの初優勝に貢献した川口能活。すばらしいシュートストップを見せ、ゾーンに入った時は神がかっていた。全然力みがなくて、スッと反応できるところが天才的だった。同時代のライバルだった楢﨑正剛、初期のJでPKストッパーとして活躍したシジマールも印象的だった。
DFは3バックで、中央には1対1の強さと読みが抜群だった井原正巳。左右には空中戦に無類の強さを示した秋田豊と、田中マルクス闘莉王を置く。ヘディングと言えば中澤佑二も強力。広いスペースをカバーしたチアゴ・マルチンスもよかった。
MFは多士済々で選出が難しかったが、初期のJリーグで円熟したゲームメークと試合全体を支配するキャラクターの強さで、ラモス瑠偉は格別の選手だ。また長く活躍した中村俊輔と遠藤保仁は技術レベルの高さ、戦術眼の確かさで外すわけにはいかなかった。名波浩は全盛期のジュビロ磐田の中心選手として印象深い。技術レベルで言えば小野伸二、松井大輔、中村憲剛、小笠原満男などポジション的に最も人材が多い。
FWはJリーグブームを牽引した三浦知良、最多得点者の大久保嘉人は外せない。三笘薫のプレー年数は短いが、左サイドでの無双ぶりは格別だったので選出した。ジュニーニョやエメルソンのスピードは強烈だった。初期のラモン・ディアスのシュート技術も出色。FWもスター選手の宝庫だったが、全盛期が比較的短いケースが多い。ドラガン・ストイコビッチは選出されるべきかもしれないが、MFかFWか微妙なので外してしまった。