アジアリーグ(同AL)のオールスター戦『アイスホッケー・ヒーローズ2』が1月14、15日に開催された。会場のダイドードリンコアイスアリーナ(東京・東伏見)には熱心なファンが集結。スター選手たちが魅せるプロの技やパフォーマンスを楽しんだ。 2…
アジアリーグ(同AL)のオールスター戦『アイスホッケー・ヒーローズ2』が1月14、15日に開催された。
会場のダイドードリンコアイスアリーナ(東京・東伏見)には熱心なファンが集結。スター選手たちが魅せるプロの技やパフォーマンスを楽しんだ。
2019年の第1回後、4年ぶりの開催となった。その間に横浜GRITSのリーグ新規参入はあったものの、コロナ禍で 海外からの招待参加を見送り、国内5チームのみによる「ALジャパンカップ」での代替開催を余儀なくされた。AL、日本アイスホッケー(以下IH)界の勢いは削がれ先行き不安定な時期、オールスター戦が復活した意味は大きい。
~クラブ間ミーティングの頻度を増やせるようになった(GRITS・臼井亮人氏)
イベント実働部隊として参加したのが、GRITS代表・臼井亮人氏。広告代理店を入れず会場設営、演目、選手の振り分けまで、裏方仕事の全てに関わった。
「やるしかない、という切羽詰まっている状況です。それでも何かをやって少しでも進まないとダメ。選手、関係者からも前向きな声がありました」
AL参加6チーム、HLアニャンアイスホッケークラブ(韓国)、レッドイーグルス北海道、H.C.栃木日光アイスバックス、ひがし北海道クレインズ、東北フリーブレイズ、GRITSから計40名が参加(ケガ人、マスコットを含む)。オールスター戦の他、氷上運動会やスキルコンテスト、IH界レジェンドの特別座談会等が2日間に渡って行われた。
「こういうイベントはどんな形でもやった方が絶対に良い。各クラブの経営は厳しいです。今まで通りにやっているだけでは、一定数の固定ファン以上のものの獲得は難しい。攻めないといけない」
「集客には苦戦しました。告知などの仕込みも不十分でした。反省点は多いですが、一歩は踏み出せました。プラスになることも多かった。例えば、従来は1ヶ月に1回だった各クラブ間でのミーティングが週1回になりました」
~アイスホッケー界は攻めないと堕ちていくだけ(クレインズ・河合龍一)
年明けの開催に関しては賛否両論もあったという。リーグ戦はここから熱を帯びてきて、プレーオフへ向けて熾烈な戦いが続くからだ。しかし選手自身が、ALとIH界の置かれた状況を一番わかっている。
39歳のベテラン河合龍一(クレインズ)は、各年代日本代表にも選ばれてきたレジェンド。ALならびに日本IH界発展のため、常に身体を張ってきた。
「IH界はこのままでは堕ちていくだけなので、攻めないといけない。そういう気持ちが足りな過ぎたと思います。イベント開催に動いてくれる人もいたので、選手としては一緒にやるだけだった。コアファンはもちろん、新規ファンまでIHの楽しさを伝えたいと思いました」
「どのような形であれ、何かを地道に継続すること。失敗しても良いので、そこから学んで改善して進んでいく。IHへの情熱は誰もが持っているはずなので、形にして実際に行動することです」
~改善すべき点を見つめて前進を続けたい(アイスバックス・福藤豊)
選手会が積極的な姿勢を見せてくれるのが心強い。今回も選手会発案企画として、ファンにリンクを解放しての写真撮影会を行った。普段は入れない氷上に立ったファンは、誰もが興奮しつつ満面の笑顔を見せていた。
選手会長を務める福藤豊(アイスバックス)は、世界最高峰リーグNHLでのプレー経験もあるスーパースター。IH 人気回復のためには地道なファンサービスが必要だと認識している。
「選手会としては、多くの企画をリーグの方に相談しています。様々な要因もあり、リーグとしての動きが制約されたり迷っている部分もあると思う。でも今回はオールスター戦を形にできたのが大きいです」
「集客に関しては改善の余地があると思います。でも少ないながらも、足を運んだくれたことに本当に感謝しています。それに応えて、AL全体が今後も前進することを約束します。こういうイベントを継続させるのが最も大事です」
~座して死を待つのではなく足掻くこと(アイスバックス・日置貴之氏)
第1回大会の立ち上げから尽力しているのが、アイスバックス取締役兼マネージメントディレクターの日置貴之氏。同イベントの継続性を重視、名前やロゴ作成にも熱い思いを込めている。
「IH界が下降線を辿る中、まずはAL全チームの選手、フロントが顔を合わせる場所を作りたかった。何をやるのか、はそこから考える。まずは発信側が1つになる事が大事です」
「タイトルに回数を入れているのも同じ理由。ゴールに向かって毎年1回ずつやっていけば、オールスターがマイルストーンになる。点ではなく継続させる、途切れさせないことが大事です」
日本IH界の歴史は企業、実業団が作ってきたといえる。そのため身内や内向きになる傾向が多少なりともあった。AL発足、プロ化を進めたことで、少しずつだが方向性も変わりつつある。プロスポーツという部分で興行を成り立たせると共に、社会性を高める必要があると語る。
「やり方次第で集客はできます。IHは地方都市での開催が主なので、見る人は限定的になりがちです。首都圏でのイベントを継続的に行い、初見も含め多くの人に触れてもらう。そしてエンタメ部分も充実させて、楽しんでもらうことです」
「競技だけ競うなら粛々とやれば良い。でもスポーツと芸術は、人間の喜怒哀楽を発露するために重要なものです。IHもその中の重要ファクターの1つ。だからこそ自分本位ではなく社会と接合していくことが重要です」
「IHを通じて社会に何ができるか?人間にとってどういう価値をもたらせられるのか?キレイごとにも聞こえますが、そういった大義を持つことが重要です。そこを突き詰めることで賛同者も増えるはずです」
今イベントは興行的には厳しかったものの、方向性は間違っていない。継続開催することでALの観客動員にも繋がると信じている。
「IH界の人たち、そして新しい人たちを一人でも多く巻き込みたい。そのために足掻くことの重要性を、選手や業界関係者のみんなが理解して欲しい。今のままでは『座して死を待つ』だけの状態だから、何かをやらないといけない」
~アイスホッケー・ヒーローズ3に向けて今から準備をする
「やって良かった」とイベントに関係した誰もが口にしていた。約2400人収容のスタンドには空席も目立ったが、確かな手応えを感じている。まずはダイドードリンコアリーナを満員にして継続開催することだ。
「ALは若い選手も増え、良い流れができつつある。この勢いのまま『アイスホッケー・ヒーローズ3』に向け今から準備します。地ならし、土台はできたので積んでいく作業を進めます。その先にはALそして日本IH界の明るい未来が続いていると信じています」(アイスバックス・日置氏)
「継続開催すればファン、関係者への浸透度と共に、イベント自体の価値も飛躍的に高まるはず。選手たちから『オールスターに選ばれたい』となって欲しいです(GRITS・臼井氏)
タイトルに付けられた数字が10を超える頃、同イベントがフルハウスで熱狂に包まれていることを願いたい。ALがNPB、Jリーグ、Bリーグ等に次ぐ国内を代表するプロスポーツになっているはずだ。
(取材/文・山岡則夫、取材/写真協力・アジアリーグアイスホッケー)