皇后杯の決勝が行われ、日テレ・東京ヴェルディベレーザが2大会ぶりの優勝を果たした。INAC神戸レオネッサから4ゴールを…
皇后杯の決勝が行われ、日テレ・東京ヴェルディベレーザが2大会ぶりの優勝を果たした。INAC神戸レオネッサから4ゴールを奪って勝利したこの試合で見えてきた新たな潮流をサッカージャーナリスト・後藤健生がつづる。
■完全復活したベレーザ
先ほど述べたように、ベレーザは相手のウィングバックを警戒して左サイドバックは守備的に戦った。一方、右サイドではサイドバックの宮川麻都が攻撃に参加して“右肩上がり”の形になって、右サイドハーフの藤野あおばとの関係で攻め込む場面が多かった。
39分に植木にクロスを送ったのも、宮川だった。右サイドで藤野とパス交換をしてから、ワンフェイク入れてから上げたクロスに植木理子が合わせたのだ。ベレーザは、まさに狙っていた形で先手を打ったのだ。
I神戸にとって大きなダメージとなった後半開始早々(49分)の2ゴール目は、右CKからのボールを植木が胸でコントロールしてバウンドするボールを捉えたシュートだったが、この右CKも宮川からのパスを受けた藤野がドリブルを仕掛けた流れから生まれたものだった。
いずれにしても、皇后杯での豪快な勝ちっぷりを見ていると、「ベレーザ完全復活」と断じてよさそうだ。最近のベレーザに欠けていたアグレッシブさを取り戻したことは間違いない。
3月に再開されるWEリーグでは首位のI神戸、2位の浦和をベレーザが追走する展開となるだろう。ハイレベルの戦いが期待できる。
ベレーザというチームは伝統的にテクニックを重視し、パスで相手を完全に崩して得点することに“美学”を見出していた。かつて、日本で最初に選手とのプロ契約を行って、ブラジル的なテクニック重視のサッカーをしていた読売サッカークラブ(東京ヴェルディの前身)以来の伝統とも言える。
だが、最近のように日本の女子サッカー界でもフィジカルやスピードを生かすサッカーが台頭してきたことによって、これまで苦しんでいた。
しかし、皇后杯決勝ではアグレッシブさの部分でI神戸を上回ることができた。そうなれば、テクニックに優れたベレーザが優位に立てるはずだ。
■寂しい観客数
さて、これだけハイレベルの決勝戦だったのだが、当日の観客数はわずか1939人だった。日本の女子サッカーの現状を表した数字だとも言える。
観客が少なかった理由の一つは寒さにあったのかもしれない。
公式記録の気温は7.2度。試合中は日差しに恵まれたものの、天気予報によれば午後から雨か雪の予想もあり、試合開始前には実際に霰が降ってきた。試合が面白かったにせよ、寒さの中での観戦はやはり厳しい条件だ。
WEリーグは、ヨーロッパと同じく“秋春制”で開催されている。2022年10月に開幕したシーズンは、1月から3月までの中断期間を経て6月まで続く。まだ暑さの残る時期にはWEリーグカップも開催されるが、これはプレシーズン的な大会。リーグ戦は寒さの厳しい時期に激しいバトルが展開される。そして、12月から1月にかけて、皇后杯が開催される。
WEリーグ創設前は「なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)」が日本のトップリーグだったが、リーグ戦は春秋制で、施設の関係で夏場の猛暑の時期でも女子リーグは昼間の開催が多く、酷暑の中での試合が多かった。
そんな暑さの中だったことも、運動量が少なかった原因だったのかもしれない。そして、テクニック重視のサッカーが主流だった。しかし、WEリーグが秋春制で開催されるようになったことで寒さの中の試合が増え、その結果として走力を生かす試合が多くなってきたのかもしれない。
■秋春制のプラスとマイナス
もちろん、それは悪いことではない。ヨーロッパの強豪国と対峙していくためにも、運動量が多く、フィジカル的な要素の強い試合に慣れていくべきだからだ。
2023年の女子ワールドカップは南半球の冬の時期に行われる。とくに日本代表にとって2試合目となるコスタリカ戦は、ニュージーランド南島の南部にあるダニーデンが舞台となる。ダニーデンはスキーリゾートとしても有名な街で、かなりの寒さとなることが予想される。WEリーグや皇后杯で寒さの中の試合を経験していることは、日本にとってアドバンテージと言えるかもしれない。
しかし、観客動員という面では寒さの中の開催はマイナスに作用するのではないだろうか。その点に注目するなら、WEリーグも将来春秋制に再移行することを検討した方がいいかもしれない。
これだけのハイレベルの試合もあるのだ。少しでも多くの人に見てもらうべきなのは間違いない。